〔戯曲を稽古して通してみようの会②〕全員稽古場日記/顔合せ編
「ヘッダ・ガブラー」稽古場日記を全員で書いてみようという企画。
初回は先日行われた顔合せの全員稽古場日記です。
※掲載は原稿到着順です。
【大上久美子】
今日はフライドチキンが食べたい気分だったので、お稽古終わりに食べようと探した結果、スーパーで味付け濃いめの焼き手羽元を手に入れた。夜食べる予定で、ラッキーなことに少しヘルシーになった。
初めて訪れた稽古場は、昔通ったそろばん教室と同じ匂いがして懐かしかった。全員集合し、おそらく最初で最後の一冊まるまる本読みの前に、お稽古ルール確認と自己紹介をする。お稽古ルールは、主にハラスメント防止、もしもの相談先についての確認だった。このルール確認は事前に明確に予定に組み込まれていて、最初はセーフティーネットを敷きすぎていると思っていた。(念には念をなので、確認することは大事だとは思っている)しかしそのおかげで知らなかった相談先を知り、そもそもお稽古を始めるにはルール確認が必須だと理解した。この時間は新鮮で、確実に時間を確保するから意味があると分かった。
そして本読みが始まる。今回稽古予定の幕以外の部分も、今日専用で役を割り当てられていた。私の場合、この部分の台詞は短かったので重荷ではなかった。
稽古予定の部分は2グループに分かれ、2幕3幕をそれぞれ別に担当するので、自分の役を他のグループの違う台詞で聞けることが新鮮だった。本来自分の台詞の裏から推測する役柄を、直接提示してくれた気がしたからだ。
またこの作品はト書きが多く細かい。本来なら舞台でト書きを読むことは通常ないが、視覚情報として舞台美術があったとしても、聴覚情報としてト書きを読んで欲しいと思った。この両方によって、観客がこの細かいト書きにより目を向けるのではないかと思った。今日の本読みにより、このト書きの豊かさに驚かされた。
最後に雑談で、最近買って良かったものについて上野さんから質問があった。今日のアイスブレイクは、この最後の瞬間だったかもしれない。お互いのことをほぼ知らずに先に本読みをしたことで、役柄として相手を知ることができ、結果的に本読みの新鮮さを増したかもしれない。
無事初日が終わった。お稽古終わり、真っ先に食べたかったのは枝豆だった。帰りに冷凍枝豆買おう。
【横室彩紀】
稽古場の周りをぐるぐると2回迷いました。
この日はなんとなく暗い気持ちでした。
初めての場所はだいたいそうかもしれない。
着くと思ったよりもう皆さん来ていて、緊張感が漂っていました。
お土産のゆかりとこげめしの差し入れをもらいました。おせんべい。
日記ってあまり書いたことがなくて、変な文面になっている気がします。
ハラスメント対策について、劇団の文面や上野さんのお話がとてもいいなと思いました。
これは業務的なものではなく、人の価値観や気持ちの関係性で、自分に立ち返ることなんだと感じました。
そして読み合わせ。
指定の戯曲本をAmazonで買ってよく見たら入荷待ちになっていたので早く届きそうな楽天で買ってAmazonをキャンセルして、手に入れました。
今回参加するみんなで争奪戦を行なっているのかなと思いを馳せました。そしていま日本で急激に注文数が増え、誰かびっくりしてるだろうなとか。
手元に来るのが遅れてしまったので、せっかくだから事前に読まず皆さんの声で物語を聞くのを楽しみにしていました。(本を読むのが苦手だったというのも、、)
みんなそうだと思いますが、初見はいつも大事にしています。だから読むタイミングも悩みます。
おかげで漢字が読めなかったらどうしようという不安を稽古場に持っていきました。
そして長めの作品を読み終わり。
私は大学や研修所などでお芝居を学んだ経験がないので、古典戯曲や翻訳劇に触れる機会が少なく、そのおもしろさが分からないことがずっと悔しいと思っていました。こんなにも多くの演劇人が魅了されてきたのに。
だから勉強のために色んな公演を見に行ってもじわっとしか分からず。私にも色々と言いたいことがあるのです。
それで今回は、自分なりの海外戯曲のやり方、の破片を見つけられたらと思っています。
役という人間が話している言葉はいま私たち話しているのと何も変わらないはずだと私は信じています。その言葉に込められた思いや感情の絡まり、圧力は同じだと思っています。
体現してやる!
で、言いたかったのは、
読み合わせてみて思ったより理解できておもしろくてよかった。
セリフの裏にある意味とか役の思惑は複雑で難しそうだったので間に合うかなとも思っていますが、、やる気出ました。
最後に上野さんが最近買ってよかったものを聞いていたのですが、私はたまごっちとか言ってしまって、自己紹介も含めて皆さんに不思議ちゃんだと思われていないか心配です。話し方とか、変だった、
仲良くしてください。よろしくお願いします。
よし、戯曲読も。
とりあえずあと2回は全体を読みたい。
ここまで読んでくれた人はいるのでしょうか、
長々と、ぶわっと書いてしまった。
読んでくれた人が道で100円とか拾いますように。
【羽根さや香】
退屈という時間を、持ちにくい現代。
YouTubeでは色んな人が色んなことを発信しているし、手軽に映画も漫画も見れちゃうし、今宵のワンナイトラブの相手だって、不倫相手だって、スマホでサクッと探せちゃう。
ヘッダは、どうしてそこから抜け出さないの?と、読んでまず、そう思った。けれども、この時代には、退屈を忘れるくらいに夢中になれるものの選択肢は、きっと今よりうんと少なくて。スキャンダルだらけの現代に生きる私には、この時代のスキャンダルの深刻さは簡単には想像できない。来年29歳になる私だが、この29歳って数字の重みでさえ、ヘッダが感じてるものとは全く別物なんだろうなぁ。
やばい。ヘッダとの共通点、今のところ全然ない。しかし、これはものすごく、ものすごく、やりがい。やりがいしかない。楽しみすぎる。
戯曲を初めて読んで、なんだこの失礼な女!?って思ったけれど、赤ちゃんの時からこんな人格ではなかったはずで。彼女はいったいどんな経験を重ねて、どんな想いを経て、この新婚生活にたどり着いたのだろうか。
短い期間ではあるが、たくさん想像して、たくさん試して、いろんな景色が見れるといいな。みなさま、どうぞよろしくお願いいたします。
【桂川明日哥】
顔合わせ
稽古から帰ってきて一番思ったことは、人の目や人からの評価を気にしてしまったこと、それに対する悔しさだった。もうこれは私の癖みたいなもので、「下手だと思われてないだろうか」とか「つまんない人間だって思われてるだろうな」という考えがすぐに浮かんでしまう。いつも顔合わせの時はそういう考えが浮かんでしまうのですごくエネルギーを消費してしまう。
だけどこれは本番があるわけではない稽古会なので、自分の修行のための場だと考え、自分の成長のために時間を使いたい。なのでそのことで頭がいっぱいになって時間を使うのは大変もったいない。自分が勝手に設定している他人の目線(しかも妄想に近かったりする)を取っ払って取り組む、という訓練もしていきたいと思った。
本読みで一通り全編通してみて、物語の構造としては意外とシンプルだと思った。目的をしっかりさせて相手をどうしたいのかをはっきりさせれば乗っていけそうだと感じた。
2幕のエルブステード夫人のセリフに「ああ!」とか「まあ神様!」とか、私が思う海外戯曲らしさが詰まっていて、普段は言わない言葉なのでその距離感が掴めていない。演技のテンションを上げればそのセリフ自体は言えるが、今の段階では上滑りしてる言葉になってしまう。それに自然と出てくるようにセリフを言いたい。本読みは座ったままで動かないので立ち稽古が始まれば解消されるかもしれない。それから名前を呼ぶだけのセリフが多くて、それも戸惑った。何を言いたくて(したくて)「ヘッダ!」とか「レェーヴボルグ!」と言っているのかをかなり明確にしないと、私の中ではまた上滑りした言葉になってしまう。そう考えると、自分の中で海外戯曲の難しいと感じている部分が詰まっているシーンで、これは練習のしがいがあるなと感じている。
2幕は起承転結の承の部分。物語が展開していく前段段階でこれから起こることを予期させるような煽り方をして終わりたい。それから、これは私の好みだけど、エルブステード夫人を人間として愛らしいと思わせるような芝居がしたい。平凡な人だけど、心根は綺麗な人だと思った。私も同じ平凡さを持っているので共感できるところはたくさんある。ヘッダからするとその平凡さが妬ましく感じる部分でもあるのかもしれない。
とにかく、今は試したいと思うことがいくつか浮かんできたので稽古場に持っていくための作業をする。
最後に、参加する人たちはみんな初めましての人ばかりで、それぞれの経歴も違えば考え方も違う人たちばかりだった。今までのコミュニティではないところへ飛び込んでいく面白さを感じた。魅力的な俳優が集まったと思う。
【上野友之】
とにかく暑い。
前回からご参加の小川さん、太田くんに手伝って貰って机などセッティング(ありがとう)。
稽古場をオープンし、参加者の皆さんが徐々に集まる。
小川さん太田くん以外は、お互いに初めまして同士の人ばかりらしく、緊張感以前に、雑談も始まらず各自開始を待つ感じ。
差し入れに近所で買った煎餅と、太田くんが名古屋土産に持ってきてくれたゆかりとをそれぞれ配る。示し合わせたわけでもなく何故か煎餅被り。
全員揃った所で顔合わせ開始。
まずは上野から、会の概要や稽古のルールなど説明。
そこから一人ずつ自己紹介して貰う。
海外戯曲は初めてという人も多い。
今回のハラスメント対策委員会について、太田くん、小川さんから説明して貰い、
団体としてのハラスメント対策も補足。
第三者機関というか、外部の相談窓口としてアートノトも紹介。
休憩して、本読み開始。
今回は人数の関係上、二幕と三幕をやることになったのだが、
最初の本読みでは作品の流れを理解する為に、一幕から四幕、全部通して読んで貰った。
そこそこ長い。
若い方が多くキャリアもバラバラだったので、どれくらい出来るか未知数だったのだが、正直思った以上に皆さんお上手で、稽古が俄然楽しみになった。
終わって、感想を一人ずつ話して貰う。
「自分がやる役じゃない役を読む時の方が自由だった」という人がいて、これは本読み段階でも俳優あるあるなんだなと。
最後に、いつも聴いている「最近買って良かったもの」も一つずつ発表して貰う。
物ではなく体験(旅行とかフェスとか)、それも経験済ではなく未来の予定、という人も多かった。
今日はここで終了。お疲れ様でした。
片付けして外に出ると、モワッという熱気。
引き続き宜しくお願いいたします。
【小川結子】
初日
この日は午前から稽古前まで遊んでいて、すれ違う元気な子どもたちに足を踏まれそうになりながら夏休みの人混みを戦っていた。
そして稽古開始前に今回の戯曲『ヘッダ・ガブラー』をパーっと通し読みした。改めて気づく伏線があって楽しかった。
今回参加した目的や自分自身の課題を洗い出し、何に挑戦したいかを考えた。キャラクターづくり、身体、やり取りにそれぞれ目標を設置した。
稽古回数は多くないけれど、この期間とこの戯曲を使って、演劇に取り組む力(?)を育てられたら良いなと思う。
顔合わせ&全編読み合わせが始まった。今日は初めましての方がほとんどでかなりそわそわした。
終わってみると
うわーーー芝居上手くなりたいーーーーー
ってことしかほぼ頭になかった。
意識したのはとにかくエネルギーが小さくならないようにということだった。ただ、ほぼ球を投げつける雑なパワーになってしまったので、相手をどう動かすのか、そしてちゃんと重みのある球でキャッチボールができるように準備していきたい。
せっかくヘッダガブラーという錚々たる俳優が演じてきた役をやれるのだから、役づくりも楽しみたい。今あるイメージに具体性を持たせてその中に太い筋を通せるか、できるだけ頑張ってみます。
芝居上手くなりたいなあ。
おしまい。
【下村りさ子】
顔合わせの時間まで少し時間があったので、駅近くのドトールでコーヒーを飲もうとしたら何故か営業していませんでした。
上手く引き返すことが出来ずに隣の日高屋に入ってしまい、、、半炒飯と半ラーメンと餃子のセットを食べてしまいまして、結局稽古場に着いたのはギリギリの時間でした。
ヘッダー・ガブラは観たことも読んだこともなく今回が初めてでした。
台本を読んでみると、これってどういうこと?ということが他の場面を読んでもあまり出てこない!埋めなきゃいけない穴が大きく、難しいなと感じました。
実際に読み合わせをしてみると、1人の時にはピンと来なかったけど、相手と読むと分かることがあったり。逆に、あれ?この役って何がしたいの?となったりしました。
悩みながら読んでしまってどっちつかずの読み方だったなと反省、、
これから1ヶ月後に物凄く変わりそうでワクワクです。個人的には失敗をしに行くぐらいの勢いで果敢に挑んでいこうと思います。
【佐々木ひまり】
ヘンリック・イプセンの作品はあまり触れる機会がなくて、今回のヘッダ・ガブラーも稽古会に参加して初めて読みました
普段から演劇を多くやっているわけではないので、小説は見慣れていても戯曲を読むのは随分とかかってしまいました。。
読んでる間に、ヘッダの魅力ってどこなんだろう。って思って結構考えてて。
作中の男を虜にするヘッダは、やっぱり簡単には振り向かない高嶺の花的な良さなのかなとか、
本人のミステリアスさや共有している秘密がある所とか、、、
どちらにしろ私の中のヘッダは結構サバサバ女子?だったんです。自分が第一、そのほかは知らん。みたいな。
でも読み合わせで2人の方がヘッダを読んでいたのですが、どちらもちょっと私の解釈とは違っていて、でもそれが良くて、これが醍醐味だよなぁと思ってニヤニヤしちゃいました
自分の役の話になるんですが、私はエルヴステード夫人をやらせてもらって年齢や性別的にも感情移入しやすくて助かったーって安心したのを覚えてます。
でも今回女性が多くて、男性役をやられる女性の役者の方を見てるととてもかっこよくてそれはそれで羨ましいですね
ただ、1つ気になることがあって、エルヴステード夫人をやると聞いて無駄に可愛がっちゃってる節もあるのですが、
ヘッダの悩みはちょっと贅沢すぎやしませんかねぇ??
なんだか上手くいかないのレベルがヘッダとエルヴステード夫人の間で違いすぎて、うちの子可哀想!!って気持ちになっちゃって。。
でも、色々なものが手に届く範囲にあるが故の、美学を押し通せないむず痒さ的な感じなのかなぁとも思ったり。
そういうのも含めてラストシーンがあまりにもあっさりしてて驚きました。
まだまだ浅い読みしかできてないですが、これから稽古を通していろんな方の考えや解釈をみれるのが楽しみです。
私自身もいろいろ試せればいいなと思います。が、まずはセリフを入れるのが先ですね。。
これから約1ヶ月間よろしくお願いします!
【立浪歩佳】
「ヘッダ・カブラー」戯曲を稽古して通してみようの会 稽古場日記 顔合わせ編
X(旧Twitter)でたまたま募集を見かけ参加したこちらの稽古会。
イプセンは読むのも観るのも演じるのも初めて。いずれは読まなきゃなあと思っていたもののなんとなく後回しになっていた作家だったので、今回通す機会を頂けたのはとても嬉しい。大事に演じていきたい。
顔合わせは、激人見知り人間なので全員はじめましての状況にそわそわしてたけど、とっても楽しかった。
一人で黙々と取り組んでいる時よりも、沢山の発見があって、やはり誰かと声に出して読んでみるって大事なことだなあと再確認。
この気づきを立ち稽古をしていくなかでも大切にしていきたい。
また、個人的に良かったなと思ったのは、アーツカウンシル東京が運営する「アートノト」というサポートセンターを知れたこと。今回はハラスメント対策の一環として案内してくださったのだが、それ以外にも色んなサポートをしてくれる窓口っぽいので気軽に活用していきたいなと思った。
あと五回で2幕通すのかと思うとひえ〜という感じだが、立ち稽古に入ってどうなるのか今からとても楽しみ。私が入るグループは男性含め登場全員女性が演じるというオールフィメールのグループなのでそれも楽しみ。とにかく楽しみ。頑張ります。
【吉田光】
今回の稽古会にあたって、事前に「ヘッダ・ガブラー」を読んでから臨んだ。こう書くと凄いやる気があるような感じがするが実際は違う。
海外戯曲はそれなりに読んできている方ではある。大抵の海外戯曲は一回目の読解で「うーん、わからん!」となったり、一回目に抱いた印象が2回目以降で180度変わったりするのは、いつものことだと知っていた。今回の「ヘッダ・ガブラー」も一回目読んだら「わからん!」となったが、「何か面白いものがありそう」という予感はひしひしと感じていた。
稽古会の1回目はみんなで読み合わせをする予定だったので、「みんなで読み合わせをすれば多分、面白さが分かってくるだろう」という軽い気持ちで臨んだ。その結果、面白さが分かってきた。主人公のヘッダが退屈さの愚痴をまき散らすただの嫌な女というわけではないというのを確信したり、ブラック判事が普段から女遊びをしており、虎視眈々とヘッダを屈服させるために目を光らせている下種野郎と分かったりと、色々な見方が変わった。変わったというより、1回目の読解では低かった解像度が、読み合わせにより上がったというのが正しいか。
いざ自身がこの戯曲に演者として臨む時になると、果たしてどうなるか楽しみである。
【太田旭紀】
【戯曲を稽古して通してみようの会】
第二弾はイプセンの『ヘッダ・ガブラー』です。
前回のハロルド・ピンター『背信』をやった時に、海外戯曲の奥の深さというか、現代の日本人の文脈では分からない海外の文脈と、逆に通ずる文脈が入り混じってて、普段使わない脳みそをフル回転させた記憶があります。
どうしても海外戯曲というものに抵抗感があって食わず嫌いだったのですが、こういう機会に触れられたことでその食わず嫌いがむしろもっと食いたいという気持ちに変化したのは自分にとって大きな収穫でした。
そして今回はイプセンの『ヘッダ・ガブラー』です。『背信』とは時代も背景も全然違った戯曲を稽古会で体験できるのは本当に楽しみです。
作中に出てくる役も、作品を描いたイプセンも、当時の時代背景も全部ひっくるめてとことん追求出来たらと思います。
頑張ります!
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