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きょうだい備忘録(さつきちゃんと私)
私が小学4年生の時に、弟が1年生として学校に入学してきた。
いよいよ公の場に、弟が野放しにされる時が来たのだ。
私は心配と緊張と不安と、弟が同じ学校に来る事に対して、正直に嫌だなと思っていた。
案の定
入学後すぐに弟は不安から、ところ構わず、人を噛み続けた。
授業に戻ることはなく、休み時間も、ぐるぐる校内を走り回り、出会った人がいれば噛み付くという毎日。
どうしようもなく暴れ回って、先生も止められない時は、校内放送で、私を名指して呼び出した。
「ごめんね。お姉ちゃんの言うことやったら聞くかなと思って」
この責任放棄した先生の言葉と表情は、一生忘れないであろう。
校内放送で数回呼ばれたため、私は全校生徒の前で晒し者になった。
ある日、休み時間に1人で居る弟を見かけた。かわいそうに思った私は、少し遊んであげた。
すると、弟が休み時間が終わっても、ずっと私についてきた。
「1年生の教室に帰り!」
と、何度言っても、無言で4年生の教室までついてきてしまった。
結局、4年生の教室前で押し問答していると、
担任の先生が、
「お姉ちゃんと一緒が良いんやね?いいよ。いいよ。お姉ちゃんと一緒に授業受けよう。隣に椅子を用意するからね」
と言った。
えっ⁉️嘘やろ?やめてー!
珍しい出来事に、隣のクラスの子達も、ニヤニヤしながら見に来た。
先生は、私良い事した。みたいな、したり顔。
私は学校では、すごく大人しい子で、うちの学校は小学校にもかかわらず、生徒内にカースト制度が出来上がっていた。
(むちゃくちゃ田舎だったため、いわゆる古くから、そこの土地に住んでいる家庭の子がカースト上位。私の様な新参者の家庭の子や、大人しく発言があまり無い子がカースト下位。といった具合)
家では父からの虐待があり、学校ではカースト下位の私は、思考がすっかりネガティブで、ひねくれた感じになっていた。
もしかしたら、隣のクラスの子達は、馬鹿にする様なニヤニヤした顔ではなく、ただ興味本位で見に来ただけかもしれない。
もしかしたら、先生は、私良い事した。みたいには思ってなくて、純粋に一緒に居て良いよ。って思って配慮してくれたのかもしれない。
だけど当時の私には、周りの人達に対して、そんな風に思ったり、感謝する気持ちもなく、恥ずかしくて、耐えられない時間だった。
そんな時、ジブリの『となりのトトロ』の一場面を思い出していた。
めいちゃんが、どうしてもお姉ちゃんが良いと言って聞かず、預け先のお婆ちゃんが、さつきちゃんの学校に連れてきたシーン。
結局、めいちゃんは、さつきちゃんと一緒に授業を受ける事になった。
めいちゃんが大きな声で喋ったり、面白い絵を描いているのを、後ろの男の子達が笑う場面。
私が体験したシーンと全く同じで、びっくりした。
あの時の、さつきちゃんは、どんな気持ちだったんだろう。
私の様に、ひねくれてはいないだろうなぁ。
嫌だなぁ。というのは、もしかしたら、思ってなかったかもしれない。
でも1つだけ一緒だなぁと思ったのは、妹(私は弟)が、可哀想だな。と感じていること。
寂しいね。と思っていること。
さつきちゃんと同じ様に、私も家族のご飯を作っていたし、自分がしっかりしなきゃ。とは思っていた。
だから、そんな、さつきちゃんがトトロに出会えた事は、純粋に嬉しかった。
今、トトロを観たら、感じ方が変わってるかもしれないなぁ。
また観てみよう。