「仮定」と「検証」と「実証」について

ビジネスはスピードが一番大事だと考えている。とにかく仕事を前に前に、進ませることが最も大事だと思う。正確性や品質をなおざりにしてもいいという訳ではない。「スピード」を最も意識しながら正確性や品質も横目で担保していくことが大事だ。

バスケでも前にディフェンスが立ちふさがっているのにゆっくり構えて、しゃがみ始めて、下からエネルギーを持ってき、丁寧にシュートを打てば、ほとんどブロックされるだろう。パスがきたと思ったらそのタイミングでしゃがみ、パスを受け取ったと同時にもう飛んでしまう。後は、フォロースルーだけ丁寧にしながら、ゴールとの距離を測り、力を調整する。それと同じ要領で、業務が発生した時点で、他の仕事がつまっていても、一旦それに5~10分ほど時間をかける。そこから分からないこと、確かめないといけないこと、検証しないといけないことを列挙し、どんどん人にチャットで聞き、情報を集めていく。その時点で0に踏みとどまることはない。最低でも1か2まで進めることができる。仕事が早い人はそれをしていることに自分もある時から気付き、真似し始めた。

しかし、その価値観とは全く真逆で仕事をしている人が、悲観にも多くいらっしゃる。「クオリティ」や「正確性」を大事にしている人は、「スピードは二の次だ」と言ってくるだろう。彼らの気持ちもわかる。たくさんの人の時間を奪っているのは事実だし、自分でもし頑張って調べたら、わかることかもしれない。そういう行為を見て、指摘してくる人もいるだろう。しかし、それでは組織のスピードは全体的に遅くなってしまう。日本の企業の生産性が低いと言われ始めて、随分と経つ。私が考えるに、一個人の生産性は、「作業を完了させるまでにかかった時間」である。AIやchatGPTがなぜこんなに持て囃されているのかというと、一瞬で答えを出すからだ。朝出勤して、パソコンを起動したら、すでに必要な報告資料がもし出力されていたとすれば、その作業を完了させるまでにかかった時間は、”0秒”である。最終的に目指すべきゴールはそこにあると私は考えている。常に”0秒”を目指そう。

このような考え方、価値観を大事にするならば、「クオリティ」や「正確性」をすべての作業に求めるのはナンセンスである。「スピードを維持しながら、品質と正確性を最低限出力させるためにはどうしたらいいか?」ということを、ここ最近よく考えているのだが、自分なりに答えを出してみた。

まず、発生した仕事において「ここは外せない!」という核心部分を1個か2個先に選択してしまうことだ。核心部分で、「仮定」→「検証」→「実証」を行ってから。きちんと提出・納品・報告をしよう。そこを適当にやってしまうと必ずやり直しを食らってしまうからだ。

そしてここからが本題だが、顧客(上司)が求める核心部分は「仮定」→「検証」→「実証」を経て完了させていいが、それ以外のその他は「仮定」に留めておくということだ。小さい細かい作業や情報の正確性はほぼすべて「仮定」止まりでいい。端っこの構成要素に「検証」→「実証」は要らない。そこに膨大な時間を費やしているから、OECD加盟国27ヶ国のうち生産性が一番低い、と言われてしまうんだと思う。

例えば、ある工場で金属版をプレスして金型を生産している機械があるして、そこの不良率が10%だとしよう。そして上司からあの不良率を改善してくれと頼まれる。すぐに工場に向かい、現場の人にもヒアリングしながら機械も見て、考え始める。そして、十中八九、金属板をプレスする直前の位置調整機能に問題があるなと推察したら、機械メーカーや現場の担当者にヒアリングしながら、数値設定の変更を行い、(その間は生産できないが)、「検証」と「実証」を行う。そして、運良く改善が見られたとしたら、そこで調査は終える!上司への資料作成にとりかかる。その流れで、他に考えられる原因を調査してしまうとドツボにはまる。そもそも材料、材質が・・・とか、プレス機の老朽化による圧力調整が・・・とか、定期メンテナンスの方法が・・・とか、定期メンテで塗るオイルが・・・とか、自分の直感として排除した複数の原因までも事細かに調べていくと膨大な時間を使ってしまう。それらはただの「仮定」ステータスにしたまま、「そこまで直接的に影響を与える要因とは考えませんでしたが、一応現状こうなっています」ぐらいでいい。その程度の情報で報告書にまとめることで、完了までの時間が圧倒的に変わってくる。不良率を改善できたのだから、いいではないか。もっともっと改善してくれとは頼まれていない。

もし、ほぼすべての作業や調査において、「仮定」→「検証」→「実証」を行っていたら日が暮れてしまう。「ここは本筋ではないなぁ」と自分が感じるところは、一旦すべて「仮定」のステータスにしたままで、置いておく。もちろん、調べたら調べるだけ正確な情報がわかるし、より正しい情報にたどり着ける。そのぐらい誰でも分かっている。でもそこはあえてやらない。切り捨てる勇気を持とう。優先順位2以下はすべて無視する。日本人の悪い癖だが調べ始めてはいけない。

このことを会社では大きな声で言えないが、すごく大事なことなのでブログに綴り、アウトプットしてみた。もちろん部下にはこっそり教えているけど・・・。

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