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【居留守電】高齢者宅での電話を契機とした消費者被害・特殊詐欺被害防止のための最強の秘策

毎年5月は消費者月間です。そして、電話が起点となっている消費者被害の防止・特殊詐欺被害防止のために必要不可欠なサービスが、たまたまですがこの5月から始まっていますので、この機会に合わせて消費者の皆様にお知らせします。

NTT東日本・NTT西日本では、令和5年5月から、70歳以上の契約者、または70歳以上の方と同居している契約者の固定電話回線における「ナンバー・ディスプレイ」および「ナンバー・リクエスト」サービスの設定工事費及び月額利用料を無償化しました

ナンバー・ディスプレイとは、固定電話にかかってきた電話の発信者番号が電話機に表示される機能です(※電話機が当該機能に対応している必要があります)。また、ナンバー・リクエストとは、発信者番号を「非通知」でかけてきた電話に対して、発信者番号通知でかけるようメッセージを流す(非通知のままでは電話はつながらない)機能です。

実はこのナンバー・ディスプレイの無償化、総務省主催の「電気通信消費者支援連絡会」という会議において、当センターから令和4年度の近畿電気通信消費者支援連絡会にて提案・要望していた事項です。

令和4年度上半期近畿電気通信消費者支援連絡会の報告書(総務省)より抜粋

そもそも、携帯電話の場合は、発信者番号が表示されるのが最初から当たり前であり、そのことで特に別料金は取られませんよね。にもかかわらず、固定電話の場合は、以前から、発信者番号を表示するサービス(ナンバー・ディスプレイ)を利用する場合は、当然のように月440円(家庭用の場合。税込)を払わなければならなかったのです。

本来なら、全利用者に対して同様に無償化してほしいものですが、ひとまず高齢者だけでも無償となったのは一歩前進です。該当されるご家庭は、ぜひお手続きをお願いします。(※利用者側から申し出がなければ、自動での無償化適用はありません。また、遡っての適用もないようです。)

そして、この「ナンバー・ディスプレイ」を利用することを前提で組み合わせていただきたい消費者被害防止の秘策が

「居留守電」(いるすでん)


です。「居留守電」とは、在宅中でも、電話機を常に留守番電話モードにしておき、電話がかかってきても受話器を取らず、留守電に応答させる、という方策です。

相手と直接しゃべらなければ目的達成の難しい電話勧誘(テレアポ)では、多くの場合、相手が留守電だと何も告げずに電話を切ります。
特殊詐欺の端緒となる「アポ電」でも、声が録音されることを嫌うため、ほぼ間違いなく向こう側から電話を切ります。

本当に連絡が必要な相手はメッセージを残すはずなので、それを聞いて、必要に応じて折り返しかければいいということになります。
また、メッセージの録音中でも、相手が誰であるかがわかった場合は、そこで受話器を上げて直接の通話を始めれば問題ありません。

しかし、在宅中なのに、かかってきた電話に出ないことは失礼ではないか、という心配が常に付きまとうことが、居留守電の課題でした。
友人等の大切な相手に留守電応答メッセージを聞かせるのがどうしても心情的に耐えられないのであれば、ナンバー・ディスプレイの利用と、それに対応した電話機を用意したうえで、予め友人等の電話番号と名前を登録しておけば、着信時点でその名前が表示され、誰からかかってきた電話かがわかりますので、そうした着信には安心してすぐ出ればいいのです。

一方、登録のない番号であれば、数字のみが表示されるので、誰か知らない相手からの着信であり、それに対しては「居留守電」をすればよいのです。
ところが、これまではナンバー・ディスプレイが有料、ということがネックとなっていました。そこが今回、ようやく解消されたわけです。

ご高齢者のみで生活しており、電話機の番号登録設定等が難しくてできないというご家庭の場合は、ご家族やご友人の皆様、どうかサポートしてあげてくださいますようお願いします。当該ご家庭で普段から電話でのやり取りの可能性のある方の電話番号を片っ端から登録しておいてください。

さて、この「居留守電」を嚆矢として、こうした消費者被害防止の秘策をシリーズ化して、消費生活相談員から消費者の皆様に随時情報提供していきたいと思います。これらを総称して

「アリババ作戦」


と命名したいと思います。なぜここで「アリババ」なのでしょうか。
突然ですが、ペルシャの昔話「アリババと40人の盗賊」はご存じですか。
「開け、ごま」の合言葉は聞いたことがあるかもしれません。盗賊が秘密の洞窟に財宝を隠していて、その扉を開けるための呪文ですね。

この物語の中で、盗賊の一味は、どうにかしてアリババの家を特定してアリババに襲いかかろうとしますが、アリババの兄・カシムの家に仕えていた聡明な召使い「モルジアナ」の活躍によって、ことごとく撃退に成功します。

そうです、私たち消費生活相談員が「モルジアナ」となって、消費者であるアリババを盗賊(悪質事業者、特殊詐欺犯罪者)から守りたいのです。
「居留守電」のような秘策を授けることも、この際

「モルジアナの智慧」


と命名してシリーズ化できればいいなと思います。
ちなみに、先の「アリババと40人の盗賊」、お話の最後は盗賊の頭領が客人を装ってアリババの家を訪問し、アリババを殺すつもりでしたが、モルジアナはその正体を見破り、余興として客人に踊りを披露するといい、短剣を持って踊りながら、隙を見てその頭領を刺し殺したそうです。