記憶を辿る40
『 LA 』
一丁前になれと諭され、どうすれば良いのか考える日々が続く。
絨毯営業をかけられる訳でもないし、お得意様商売。
ならば私の特徴を出していこうと考え、店で受けた注文は素直に「はいっ!はいっ!」と受け、超絶早く在庫を出すように心がけた。現場や作業場に届けて職人さんが居られたら
「何か足らない物ないですか? あの部品足りてます?」
と足りてるような物でも意識的に聞く。
今すぐ必要でなくても、定番的な部品の底はすぐに尽きてくる。
「ほんなら、持ってきといて」と職人さんも快く注文を下さり、どんどん取れるようになった。こうなってくると職人さんの来店時には、ただ在庫を出す作業が「真平いるか?」と名指しでお越しくださり、次に予定している現場の話を引き出すようなコミュニケーションが取れるようになってきた。
何か道筋が見えたように感じていた。
ときどき、若い子が「思っていた部署と違って面白くない」「やりたいと思っていることと、命じられた仕事に乖離があってなんだか辛い」「そもそも入った会社の商品に興味がない」と言うことを耳にする時がある。
そんなとき、ドラフト1位で入社した訳でも、大した実績があることもなかろうが…と微笑ましくなる。馬鹿にしているというのではなく、自分のなかで、自分自身を過剰評価していることが愛おしくなる感覚を覚えるのだ。
そんな子達には心を込めて「嫌とか言わんと目の前の事を全力でしよし」
「今の状況で先が作り出せないのなら、希望の場所に行っても何も生めへんで」
とお伝えできればな思う。
目の前の事を全力で向き合うことで、新しい自分に驚くかもしれないし、やりがいや改善点を見つけられるかもしれない。与えられる事に慣れてしまうと、自分だけしか持っていないポテンシャルを忘れてしまう。
いつの時代も”やりがい”という物は与えられる物ではなく、
自分で作り出すものだと思う。
初めてのロサンゼルスは正に「ユナイテッドステイツ!」
乾いた空気、どこまでも青い空、思い描いていたそれより遥かに大きく、地平線は歪んで見えた。陸橋の落書き、コンビニのお菓子、ショーウィンドウの鉄格子、その全てを自分の記憶の中に収めたかった。
ルート66から連想するアメリカの自由を肌で感じたかった。
全社員総出の社員旅行だったが、大きなバスで移動するのではなく、昼は個々で観光し、夜は全員で晩御飯というスタイル。なんせ憧れのロサンゼルスなのだ、行きたい所は山のようにある。好きな所に行ってくれるというオプショナルツアーに先輩と申し込んだ。
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