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【日本ダービー】注目の予想印を大公開!【2024】

◎コスモキュランダ

弥生賞は直近でタスティエーラやドウデュースといったダービー馬を輩出しており、同コースの皐月賞よりむしろダービーに繋がるレースという感覚を持っている競馬ファンは多いだろう。しかしレコードを叩き出した今年の弥生賞は例年のスローペースとは違うタフなレース。これがどう出るか?ということで歴代の弥生賞レコードホルダーを見てみよう。

弥生賞(中山・芝2000m)の歴代レースレコード

1984 シンボリルドルフ (2:01.7)
 ↓
(1991 イブキマイカグラ (2:01.07) タイ)
 ↓
1993 ウイニングチケット (2:00.1)
 ↓
2016 マカヒキ (1.59.9)

なんと不出走だったイブキマイカグラを除き全員がダービーを勝利している面々だ。このほかにも1998年、東京開催ではあったがサクラチヨノオーが2:01.1という高速タイムで勝利しており、こちらもダービー馬。つまり弥生賞でレコードを出したコスモキュランダはもはや当確である。

ここまで幾度の負けを経験しながら勝利との距離を詰めてきた蹄跡は先輩ダービー馬ワンアンドオンリーとも重なる。ちょうど10年前の勝ち馬だ。ダービージョッキー加藤和宏、その息子である志津八師が調教師として親子制覇を成し遂げる。

◎ダノンエアズロック

堀宣行調教師といえば外国人騎手大好き、というのは競馬ファンの共通認識だろう。しかしそれは十分ではない。堀師はただ好きだからとか強そうだからで外国人騎手を起用しているのではなく、確かな「相騎手眼」に基づいて起用しているのだ。例えば今年の初頭に4人の外国人騎手が来日したが、堀師は他の3人には目もくれず、自身が身元請負人となったR.キング騎手に乗鞍を集中させる。そしてキング騎手はその期待に応え、4人の中で唯一の重賞制覇、それも2勝と抜群の存在感を発揮した。それが単に馬質での問題ではなく彼女の実力の証左であることは、東京新聞杯におけるサクラトゥジュールの人気が物語っている。

そしてこれはダービーにおいても同様である。今や外国人ジョッキーの代表格ともいえるダミアン・レーンは初来日の頃から堀師が積極的に馬を回し続け、いわば育ててきた存在。それが昨年のテン乗りダービー制覇へと結実したのだ。今年のダービーにおけるパートナーは実績十分の「マジックマン」J.モレイラ。2頭出しの堀厩舎がモレイラに回した方、それがダノンエアズロック。勝算は十二分だ。

◎アーバンシック

5戦連続となる横山武史騎手とのコンビで参戦。武史騎手といえばエフフォーリアやソールオリエンスとの惜敗だが、それらの馬になくてアーバンシックにはあるものがある。ここに至るまでの敗戦経験だ。かつての福永祐一騎手は、ワグネリアンとの皐月賞において「ダノンプレミアムがいないなら大外ブン回しても勝てる」との考えで至極大味な競馬を実践したという。結果は7着の凡走。しかしこの経験があったからこそ、ダービーではかつてないほど綿密なプランを立て、鞍上20年越し悲願を成し遂げることができたのだ。

皐月賞で後方組最先着の末脚は間違いなく東京向き。2人3脚、競馬を教え教わりここまでやって来た若武者が、ついにハナ差の悪夢を乗り越える。

◎レガレイラ

G1のルメール」。これ以上の理由は不要だろう。落馬事故で大きなブランクがあったルメールだが、復帰2週目のVMではG1初出走のフィアスプライドで2着。そして先週は平場6勝の上に前走桜花賞13着のチェルヴィニアと樫のタイトルを華麗に奪取し、完全復活を印象付けた。

ましてパートナーはG1で対牡馬実績のあるレガレイラである。皐月賞では直線で前を横切られるなどして着外に敗れたが、ホープフルSではシンエンペラーの激突を意に介さず突き放すなど闘志は折り紙付き。そんな馬と最強ジョッキーが再びタッグを組むとき、府中のターフでは何が起こる?答えは支配イクイノックスだ。

◎ゴンバデカーブース

前走NHKマイルカップでは4着。着順だけ見れば物足りないが、2歳時に極端な競馬しか経験していなかった本馬にとって多頭数の競馬を経験できたのは大きな収穫。何より長い長い頓挫を経た若駒がぶっつけの初G1、それもあの豪華メンバーであわや複勝圏と考えれば大したものである。ひと叩きして迎えるダービーでは、かつて世代のトップホースだったシュトラウス・ボンドガールを一蹴した素質を存分に発揮できることだろう。

鞍上の松山は昨年、前走まで騎乗した同じく堀厩舎のタスティエーラを前に悔しい3着。今年も愛する外国人騎手モレイラとダービーに臨む先生に、「ありがとう」と「くそったれ」を同時にやってのけようじゃないか。

◎シンエンペラー

ここまで大崩れせず如何なるコースでも好走してきたシンエンペラー。しかし、一番強かったといえるのはやはり好位から上がり33.8秒の切れ味で快勝した東京1800mの新馬戦だろう。そもそも欧州血統といえば重厚とかスタミナみたいなイメージが強いが、もはや府中の代名詞ともいえるトニービン産駒軍団をはじめ、VMレコードホルダーのノームコア・先のオークス馬チェルヴィニアなどといったハービンジャー産駒がいたりと、実は直線の長い東京でのスピード勝負に強い。

状態もここ数戦より上向き年内最高とは矢作師の談。世界的良血馬がその真価を発揮するのは、世界的なジャパンカップと同じ舞台だ。

◎ダノンデサイル

皐月賞は無念の出走取消。しかし京成杯で負かしたアーバンシックがここで4着に食い込んだことから、世代屈指の能力を持っていることは間違いない。気難しいエピファネイア産駒ではあるが、鞍上は馬を楽に走らせることにかけて右に出る者のいない横山典弘騎手。同馬を知り尽くしたベテランなら、ダノンの冠に初のクラシックを届けることも夢じゃない。

◎シュガークン

現在発売中の雑誌「Number」1096号ではダービーに向けた特集記事が多数掲載されているが、そこにいくつかの興味深い話があった。発売中の雑誌なので詳細は買って確認してほしいのだが、ひとつは名手・河内洋の回顧録である。その中で河内は自身が騎乗した三冠牝馬メジロラモーヌと2001年にクラシックを席巻したアグネスタキオンに共通する特徴として、「入れ込みが激しいがレースでは力みがない」と語っていた。そしてもう一つは、武豊がダービーへの想いを語ったインタビューである。これは河内の記事とは全く関係ないものであり、そこで何が語られたかなど武豊は知る由もないだろう。しかし、このインタビューの中で語られたシュガークンの気質は、示し合わせたかのようにラモーヌ・タキオンのそれと合致しているのだ。

武豊は今回他にもG1連対実績のあるエコロヴァルツというお手馬がダービーに駒を進めているが、キャリア的に先約とは考え難いシュガークンを優先した。即ち、ダービー6勝の武豊が名馬の素質を感じ取って「選んだ」馬と言えるのではないか。鬼門ステップレースからダービー馬が生まれる歴史の転換点はもうすぐそこだ。

◎シックスペンス

スプリングSでは圧巻の3馬身勝ち。着差の派手さもさることながら、このレースにおける勝ち馬の走りは皐月賞馬・ジャスティンミラノの共同通信杯におけるそれに酷似している。前半1000m63秒近いスローでも完璧に折り合い、最後は33秒3と抜群の切れ味。終いの2F10.9-10.8という数字まで一緒。しかも急カーブから迎える直線が短く、最後には急坂が待ち構える魔境・中山でこの数字を出したのだから大したものである。マークが激しいG1実績勢を尻目に、皐月賞の激闘をスルーして英気を養ったこちらが冠を頂く可能性も決して低くはない。「牝馬の国枝」が、今度は幸運の銀貨で勝利の女神を馴致してみせる。

◎ジャスティンミラノ

私がジャスティンミラノを初めて知ったのは共同通信杯の時である。2歳王者ジャンタルマンタルをはじめ実績馬が数多く出走していたが、超が付くほどのスローペースでその全員が向こう正面で苦しげに首を上げる。世代で一二を争う実力を持つジャンタルマンタルは辛うじて末脚を伸ばすことができたが、前にいた1頭を捉えることができなかった。ジャスティンミラノである。ジャスティンミラノはゆっくりとスタートしながらも鞍上の戸崎が思い描いた通りに位置を取り、道中も完璧に折り合って、2歳王者を突き放してみせた。

ペースが遅すぎてよくわからないが、まあ勝った馬はよく折り合ってて完成度が高いんじゃないか、くらいが私の第一印象だった。しかしレース後の友道師の言葉に、私は胸の高まりを覚えた。

調教の動きも(ダービー馬の)マカヒキ、ワグネリアン、ドウデュースと現時点では遜色ないです。

この言葉は、私にジャスティンミラノがダービーを勝つ光景をイメージさせた。すなわち、戸崎圭太がダービーを勝った光景である。

…戸崎が……ダービーを………!?!?!?

戸崎圭太という男は、競馬場で、ネット上で、いつも「なにやってんだ戸崎ィ!」とか罵声を投げ掛けられている。重賞で冴えない騎乗をして人気馬を飛ばすからだ。

しかし信じがたいことに、それ以外の悪い話を聞いたことが全くない。騎乗が危険で後先を顧みない?態度が悪い?スキャンダルを起こしている?すべて無縁だ。戸崎は制裁点ゼロでリーディングを獲得したクリーンな騎乗スタイルの持ち主である。乗った馬に悪影響を残さず、アーモンドアイやタイトルホルダーなどと言った名馬の誕生に一役買っている。性格は謙虚で、馬や周囲の人々への感謝を欠かさない。地域の子供たちのために剣道場を立ち上げたり、困っている外国人騎手を精一杯の英語で助けようとするなど、ターフの外でも活動的な人格者としても知られている。しかし、時折人気馬を飛ばす。競馬ファンが声を荒げる理由は本当にそれだけである。

いつも真面目に頑張っているのに、ちょっと抜けているところがあって、それがしばしば叱責の対象となる。戸崎圭太は、きっと私たちの誰もに似ている。その姿が共感の文脈で語られているのは見たことがないが、考えてみれば多くの人にとって共感できるもののはずだ(リーディング多数回経験者に自分を重ねるのも烏滸がましい話だが)。

そんな戸崎がダービーを勝つことができたら、きっと俺だって私だってと、誰かにとって今より前を向いて生きられる月曜日が来ると思う。そういう光景を私はイメージした。

ジャスティンミラノはその後皐月賞をレコード勝ちし、ダービーの最有力候補と考えられている。皐月賞の勝ち時計が速いと上がり勝負のダービーに繋がらないという話もあるが、件のクッソ遅い共同通信杯で完璧に折り合ってラスト10秒台の加速ラップを刻んだミラノには関係のない話だろう。

そして今年の戸崎は、ジャスティンミラノに限らず「乗れている」。大胆な騎乗で2着に突っ込んだ大阪杯。10番人気を3着にねじ込んだNHKマイル。1番人気のオークスでも2着に敗れたが、いかにも「魔界」化しそうな馬群を難なくすり抜けて見せた。人馬ともに最高に仕上がっていると言っていいだろう。

競馬ファンからは実績の割に軽んじられていても、その頑張りは周囲に認められている。もしも神様とかお天道様みたいなものが空の上にいるのだとしたら、彼らも間違いなく認めているはず。ダービーが最も運のいい者が勝つレースというのなら、普段の行いで徳を高く積み重ねている戸崎は常に最有力候補の一角だ。そして同じく空の上にいる誰かも温かく見守っていて、背中を押してくれることは間違いない。

気張れよ戸崎ィ!!!!




なお「何やってんだ戸崎ィ!」は私も言ったことあります。ごめんなさい。






買い目

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