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記野式:サクッと!ゲーム業界講座 8月後半号

こんにちは。猛暑だったり、肌寒かったり、大雨が降ったり…そして新型コロナ感染の猛威は止まらず、なんとなく2021年もこのまま暗い感じで終わってしまうのではないかとちょっとおセンチ(死語?笑)になってしまう今日この頃ですが皆様いかがお過ごしですか?

7月のアメリカ市場データNPDの報告から参りますが、なんと今月はイギリス市場における7月度の市場データがゲットできました!

売上データはそれぞれ国ごとに癖があって、イギリスは週報でソフト売り上げはパッケージだけでデジタルを含まないのが定説だったのでアメリカのNPDと単純に並べられなかったのです。

さらにSensorTowerが7月の全世界のモバイルゲーム売上レポートを発表してくれたもんで!なんと今回の記事では2021年7月のアメリカとイギリスのゲーム市場、モバイルゲームの全世界市場のレポートが並ぶことになります。

その前に!まえがきの「セクハラに揺れるゲーム業界」を書いてみましたのでお読みいただければ嬉しいです。

今回の為替レートは1ドル=110円で計算しています。

<記野式まえがき:セクハラで揺れるゲーム業界>

昨年の夏にレポートしていますが、ゲーム業界ではさまざまなセクハラ問題が露呈されました。格闘ゲームの大会運営EVO、Ubiソフト、Insomniac、Riot Games、Twitchなどそれぞれの問題があって告発されています。

1.火種は消えていない

今年になってもゲーム業界のセクハラの火種は消されていないようです。

(1)Ubiソフト

昨年セクハラ問題が起きてからというものかなりの粛清をしたUbiソフトですが、今年7月に再燃しているセクハラ問題が急浮上しています。「セクハラを容認するしくみを組織としてつくり、それを維持している」として元従業員とフランスの労働組合から訴えられているのです。

この訴状のあて名には社長である Yves Guillemot(イブ・ギルモ)氏も含まれており、カリスマ経営者にまでおよぶこのセクハラ騒動の根の深さを感じます。

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昨年の騒動の中でYves Guillemot氏は社員全員に対してのメッセージを送り、今後Ubiソフトが企業文化を変えるため構造的に組織をシフトすると発表、新たに職場文化の責任者を任命、外部のコンサルティング会社を利用してさまざまな見直しを行うこと、職場のハラスメントや差別、その他当社の公正な行動規範を侵害する行為を行った者に対して懲戒処分を継続する、と約束していたのですが…。

今月の初めにパリ本社の役員Tommy Francois氏がセクハラや暴行などで従業員から多くの告発を受け退社していたことが報じられました。

また、Kotakuによると、8月18日付でUbiソフトのシンガポールスタジオでも女性2人が不適切な身体の接触や発言があったことや現地従業員と駐在員の間に信じられないくらいの給与格差があったことなどが取り沙汰されています。

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従業員や上司部下間のハラスメントは「個人の問題」としては済ませられない認識となっています。企業は社会的責任を負うからです。ダイバーシティ(多様性)が謳われてから久しいものの、組織においてこれをきちんと理解して周知徹底するのはすごく難しいことですよね。

(2)Activision

7月22日、Activision Blizzardはカリフォルニア州公正雇用住宅局(DFEH)から女性へのセクハラや差別行為を事由とした訴訟を提起されました。2年かけてその従業員800人以上を対象に行われた調査の結果、Activision Blizzardは「男性優位的な社風」がセクハラと女性への差別を蔓延させているとしています。

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訴状では『World of Warcraft』シリーズ、『Diablo』シリーズ、『Overwatch』などで知られるActivisionの子会社Blizzard Entertainmentでの「絶え間ないセクハラ文化」について告発しています。男子学生のたまり場のような職場環境で毎日のようにセクハラ的な言葉をかけられ、偉大なゲーマーを崇めたり、パーティーに参加したりすることを拒めば「排除され、部外者のように扱われていた」と元女性従業員が主張しているとのこと。

セクハラ行為の例として下記が挙げらえています。

ー 男性社員が泥酔した状態で女性社員のデスクまで這うようにやってきて
  セクハラ行為を行った
ー 男性社員たちが頻繁に泥酔状態で出社して女性社員に仕事を押し付け、
  自分たちは長時間ビデオゲームをプレイした
ー 自分たちのセックスの体験談や女性の身体について冗談を言い合っ
  たりレイプに関するジョークを大声で話していた
ー 社員旅行中に女性社員が上司に肉体関係を強要され、その後に自殺を
  図った
ー 女性社員はストックオプションの権利も制限されていた
ー 勤務時間や評価が男性の同僚より優れていたとしても昇給、昇進の機会
  が頻繁に見送られていた
ー 役員、人事部はセクハラ、差別についての対応をほとんどしなかった
ー 人事部に対してこのような事実を訴えると訴えた女性社員は左遷、降格
  させられた

また、訴状の中では、『World of Warcraft』の元シニアクリエイティブディレクターAlex Afrasiabi氏に関する問題が多く提起されており、Afrasiabi氏が「露骨なセクハラ行為を行うことが許されていて罰せられることはなかった」とDFEHが指摘してしています。

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最終的にAfrasiabi氏は2020年に解雇されています(後日これは彼の行動が原因の懲戒処分だったとActivision側も認めました)。

さて、訴状に対してActivision Blizzard側の反応として…

「多くの虚偽記載があり事実を歪曲している!むしろ2年に渡って調査したDFEHがActivisionを訴える前に苦情を解決するればいいじゃないか?とっくに多様性を大切にしているし、それに反するものには強硬な対応を取っており、機会均等を反映したフェアな報酬ポリシーを採用している!」

また、Blizzard Entertainment社長のJ.Allen Brack氏は「Blizzardは誰もが安心して働ける環境であるべきで、差別やハラスメントに直面することは絶対に容認できない 」と社員へメッセージを送っています。でも…余計なことを言ったんです。「元従業員、現従業員の発言には非常に困っている」…。

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7月28日、数千人の従業員たちはDFEHの訴状を支持する公開書簡に署名し、会社の変革を求めてストライキを起こしました。これにはオンライン勤務の従業員も参加しています。会社側に対して、現在および今後の従業員全員に対するセクハラ行為などの排除と、報酬および雇用に関する透明性を提示するよう求めたのです。また、会社の人事部門および幹部の見直しを行うための第三者機関も要求に付け加えています。

アメリカのモバイルキャリアであるT-MobileはActivision Blizzardが運営するeSportsリーグ「Call of Duty League」と「Overwatch League」のスポンサーから撤退しました。その他Activisionをサポートする企業がドン引きしているという話を聞きます。対外的なActivisionの印象は地に落ちてしまったのです。

Activision Blizzard社の株価は7月27日に6.09ドル(約6.7%)下落しました。ストライキを受けてさらに6%ダウンしました。これにより、Activisionは今度は株主から集団訴訟を起こされてしまいました。四半期報告書に同社の株価に影響を与える潜在的なリスク(今回のDFEHからの訴え)を記述していない、つまり「重大な虚偽」であると主張しています。同社の株式の市場価値が急激に低下した結果、株主は多大な損失および損害を被っていますからね。

8月になり、Blizzard Entertainment社長のBrack氏は辞意を表明しました。社長が辞めたからと言って何も解決していません。ついでに人事責任者のJesse Meschuk氏も退社しています。

2.日本のゲームメーカーは大丈夫なのか?

最近日本のゲームメーカーさんも社員に「パワハラ」研修をさせていると聞きます。「パワハラ」とは職場などの組織で、社会的地位の優位性を利用して他者に嫌がらせをしたり、苦痛を与えたりすることです。

でも、日本はホントに「セクハラ」研修をしてもらいたいと思っています。セクハラは「パワハラ」よりもわかりにくいんです。セクハラの定義として「本人が嫌がっている」ですが、なかなか「嫌だ!」と表現するのは難しいことなので、我慢している方も実はものすごく多いんですよ。

ココは日本は長い間放置されてきましたからね。カリフォルニア州の役所であるDFEHがわざわざ調査をして告発するところなど、日本ではありえない光景かもしれません。そして告発された企業は大きなダメージと共にその事象に対する改善を要求されるのです。

私としては…アメリカで日本人と交わると…やっぱり日本人は「セクハラ」なのかさえわかっていないのにうんざりすることがあります。上述の海外の例の通り、これは「企業文化」でありもはや個人の問題ではありません。

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比較論として「昔より良くなった」だけであって、意図がなくとも業務内容に関係なく異性を傷つけることは「知らなかった、気づかなかった」では済まされない問題です。

良くない企業文化はActivisionのように周りの企業をドン引きさせ、さらには企業価値まで傷つけます。その証拠に、UbiソフトやActivision、その他告発された企業は大きな痛手を受けてビジネスの再構築を迫られているのです。日本企業は特に「セクハラ」に甘いので、気をつけて頂きたいと本当に思う今日この頃です。

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