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記野式:サクッと!ゲーム業界講座  12月後半号

メリークリスマス!今号で2021年最後になります。今年もあっという間でした。年末にようやく新型コロナ感染が収まってきた感があり、ほっと一息つけました。オミクロン株の話もありますから引き続き気を引き締めて新年を迎えたいと思います。

さて、今号ではアメリカ市場データNPDの11月分をレポートします。ブラックフライデーを含んだアメリカの市場はどうだったのか!まえがきのあと早速レポートしますね。

まえがきではずっとこまごまレポートしてきたTencentについてまとめようと思っています。

今回の為替レートは1ドル=114円で計算しています。

<記野式まえがき:Tencentについて語る>

これまでTencent絡みのニュースをその都度レポートしてまいりましたが、そろそろTencentについてココで一回整理をしましょう。

Tencentは中国で1998年に創業された企業です。2004年に香港証券取引所で上場してからものすごい勢いで大きくなったインターネットサービス企業です。私がインターネットサービス企業と言うには理由があります。

同社は多岐にわたる業種のサービスを展開しており、「インターネット」という言葉で繋げるしかないからです。笑。このような複合業種をとりまとめる大きな企業を「コングロマリット」と呼びます。

コングロマリットであるTencentはいったいどのようなサービスを提供しているのでしょうか?

1.チャット、インスタントメッセンジャーサービス

QQ、WeChatなどがこれにあたります。

TencentのQQは中国で7億人が使っているというインスタントメッセンジャーアプリ。日本でいうとDiscordまたはSkype的なもので10代の若者が使うケースが多いようです。

QQは中国で若者が使うメッセンジャーアプリ

PCでも使えますから職場のPCにもインストールしてコミュニケーションを取るために活用しているようです。また、ゲームをしながら並行してコミュニケーションをとるために使用するようですよ。

メッセンジャーアプリWeChatは2011年から中国でサービスを開始しました。QQの上位メッセンジャーアプリのような扱いですが、大人、女性ユーザー率が高いとのこと、日本でいうとLineにあたりますね。

WeChatは世界的に使われているメッセンジャーアプリ

Lineが日本国内でのみ多用されているのに比べて、世界にちらばる中国人ユーザーが広めてくれたおかげで世界で12億人以上のアクティブユーザーがいると言われています。アメリカだけでも1,900万人が毎日WeChatを使っているとのことです。

また、このWeChatに付随したWeChat Payはリアル、オンラインを問わずユーザーが使用できる決済システムです。Alipayと同様中国ではフツーに使われている支払決済の方法です。日本のコンビニでも利用できるようになりましたね。

日本でいうPay Payや楽天Payなどと同じですが、その普及率たるやすさまじいものがあります。私が上海に出張に行った時もお店やサービスで「現金は使えないけどWeChat Payなら」と言われ途方に暮れたことがあります。笑。

2.映像、書籍、音楽

中国版Netflixともいえる動画配信プラットフォーム(腾讯视频(Tencent Video))を展開しています。海外でのブランドは「WeTV」。中国ドラマを中心にコンテンツが充実しており、会員は世界で1億300万人(2019年末時点)。日本でも今年からサービスを開始しています。

Tiktok対抗な感じのショート映像プラットフォーム「微视(WeShow)」もあります。ただし動画クリップの尺は2~8秒。

もちろんニュースサイトをはじめスポーツのライブストリーミングやeSportsのライブストリーミングもそれぞれ専門にサービスしています。

コミック、アニメの専門サイト「腾讯动漫」も運営しています。

音楽に関しては、Tencent MusicがQQMusic、KuGou、Kuwo、WeSingなどのブランドで音楽配信を行っています。これは2016年に行われたTencentによるChina Music(CMC)の買収によるものです。

夏にレポートしたように、これが中国国内の独占禁止法に触れるということで独占権放棄と罰金を中国当局からTencentに課せられています。

3.ゲーム

言わずと知れたTencentの巨大ゲーム部門です。PC、モバイル(コンソールも)に対して同社がゲームを提供することも多く、そのゲーム売上たるや世界一。なので私もレポートをするときには「世界一のゲーム会社」と呼んだりもします。

モバイル向けゲームにおいては世界で最もハイクオリティな開発会社のひとつであることは認めざるを得ません。『PlayerUnknown's Battlegrounds Mobile (PUBG Mobile)』や『Call of Duty:Mobile』など欧米で大ヒットしたPC/コンソールゲームを見事にモバイルゲーム化して収益化を高めていることはご存じの通りです。

『Pokémon Unite(ポケモンユナイト)』も開発はTencentが行っています。今年のGame AwardsにおけるBest Mobile Gameにもノミネートされていましたよね。名だたるゲーム会社も世界に通用するモバイルゲームを作ってもらうのにはTencentの力を借りているのです。

もちろん自前のIPも大ヒットしています。世界のモバイルゲームランキングでは必ず顔を出す『王者栄耀(Honor of Kings)』もTencentのコンテンツです。

Tencentは、実はオンライン上のプラットフォーマーでもあります。「WeGame」というゲームポータルですが、SteamやEpic Game Storeに匹敵するものになります。

登録ユーザーは3億人、DAUは3,300万人といわれる「WeGame」

この秋からMacでも提供されることになったWeGameですが、SteamがPerfect World(完美世界)と提供するSteam Chinaがこれを追い上げることができるのか?って話題もあります(今回は省略)。

このゲーム部門がここ数年世界中のゲーム業界関連企業を買収しており、「世界一」がますます大きくなる現状を見ているところです。

4.買収に次ぐ買収

ゲーム業界から見れば世界一のゲーム会社ではありますが、コングロマリット企業と考えれば日本の感覚でいうPayPay(ソフトバンク)であり、LINEであり、Facebookであり、Youtubeであり、Netflixであり、Apple Musicであり、ピッコマの集合体であるのです。Tencentがすごい!ってスケール感でがわかっていただけるでしょうか。

そんなTencentですが、海外企業の買収をここ数年加速させています。Tencentの主要な買収を見てみましょう。

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