あのとき俺には「笑顔に涙」が聴こえたんだ。葛西純vsエル・デスペラード観戦記
9月12日に行われた「タカタイチデスペマニア」での葛西純vsエル・デスペラードがいろいろ凄かったのでこの試合を中心に当日の感想文を書きました。
セミファイナルが終了し、リング上はメインイベントの準備に入っていた。スポンサー名がプリントされたスカイブルーのマットがはがされようとしている。
反則OKの"ノーDQマッチ"なので凶器の破片や血がついちゃまずいのだなと何の気なしに見ていた。そりゃそうだ。デスマッチでも使用できるもので試合は行われるのだろう。
マットが徐々にはがされ、下に新品のマットが隠されていたことに気づく。黒地に白でアパレルブランド「ROLLING CRADLE」のロゴが中央に大きくデザインされている。これは!驚きとロリクレコールの中、メインイベントの葛西純VSエル・デスペラードは始まった。
ビッグマッチ用だろうか、静かな前奏の後に鳴り響くCOCOBAT「DEVIL」からの大「カ・サ・イ」コール。マスク越しからではあるが歓声あり…待ち望んでいた光景が眼前に広がる。
現時点で歓声OKの興行は観客動員を50%以下にしなくてはならなない。その点で経営者としては苦しい選択を迫られるわけだが、それを認めたTAKAみちのく&タイチの英断に大大大感謝したい。マジでぶっ飛んだ。ありがとう!
カサイコール、デスペコールが交錯する中試合は始まったが、振り返れば試合の内容をほとんど覚えていない。私は声援というこの大一番に欠かせなかった熱狂と同化していたのだ。なので瞬間の記憶しかない。
・クラシカルなレスリングを止め、デスペが何かを叫んで椅子を手にしたあの瞬間。
・葛西のおよそ満身創痍の人間の動きとは思えない、リバースタイガードライバーを放ったあの瞬間。
・ロリクレマットに両者の血がべっとり着いたとき、花山薫「男立ち」のエピソードを思い出した瞬間
・サイプレス上野氏の後姿を見て、プロレス少年のまま解説をしているんだろうなと思った瞬間。
・リングサイド最前列に座る名物おじさんが葛西の動きに一喜一憂していたあの瞬間。
ひょっとしたらどちらが勝ったかも覚えていないのかもしれない。それでも良かった。葛西純とエル・デスペラードの血なまぐさい「男の23分30秒」よ、どうか覚めないで。気づけば隣の席の友人は泣いていた。
2009年プロレス大賞年間ベストバウト(葛西純VS伊東竜二)を獲ったあの試合から幾年月。葛西純はもう一度その栄光を掴むかもしれない。それくらいの熱量が会場を包んでいた。
あの時…リング上で葛西と伊東はお互いに笑いあっていた。今回も涙こそあれ、最後にドライフラワーを中指を立てて受け取った葛西、そしてデスペも笑っていた。彼らが求める「超刺激」の行きつく先は笑顔なのだろうか。
会場の外に出たら雨が降っていたので早足で駅に向かう。雑踏の中はプロレスの話とビール飲みたいという声で溢れていた。
私の脳内では松浦亜弥「笑顔に涙~thank you! dear my friends~」が再生されていた
"また会えるから きっと会えるから
また笑顔して きっと会えるから
ね みんな言葉じゃ交わさない 約束なんだよ!”
またいつか、ふたりの再会を期待したい。プロレスって最高だ。