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【KC】プレーオフのキーマン、2人のキューバ戦士🇨🇺

 2015年のワールドチャンピオンから早9年。7年連続の負け越し、3度の100敗という暗黒期を経て、カンザスシティ・ロイヤルズは再びプレーオフの舞台に舞い戻った。
 シーズン前にセス・ルーゴ(Seth Lugo)マイケル・ワカ(Michael Wacha)らを獲得するなど近年稀に見る積極的な補強を行って臨んだ2024年シーズン。開幕直後である4月5日からの7連勝を皮切りに上位をキープすると、トレードデッドラインではポール・デヨング(Paul DeJong)ルーカス・エルセグ(Lucas Erceg)を獲得するなどここでも積極的な買い手の姿勢を見せた。そしてプレーオフへのマジックを1として迎えた9月27日、ロイヤルズはブレーブスのマックス・フリード(Max Fried)の前に完封負けを喫するも、ツインズがオリオールズに負けたことでマジックが0に。ついにプレーオフ進出を確定させた。ここからまずはワイルドカードを勝ち上がり、更にリーグ優勝、ワールドシリーズ制覇を目指す上でキーマンになりうる2人のキューバ人選手を紹介しよう。


ダイソンの再来、ダイロン・ブランコ

 ロイヤルズといえば、例年脚を絡めた攻撃を得意とするチームである。2014,15年の2年連続リーグ優勝には、ジャロッド・ダイソン(Jarrod Dyson)テレンス・ゴア(Terrance Gore)といった脚のスペシャリストの貢献も大きかったが、今のロイヤルズにもダイソンのような脚のスペシャリストがいる。キューバ出身の31歳、ダイロン・ブランコ(Dairon Blanco)外野手だ。
 ブランコは今季ここまで少ない出場機会ながらチーム2位タイの31盗塁を記録しベンチに欠かせないメンバーとなっているが、ここまでの道のりは楽なものではなかった。2016年にキューバから亡命し、2018年にオークランド・アスレチックスと契約。2019年にロイヤルズへトレードされるも、なかなかマイナーを抜け出すことはできず。2022年には29歳にしてようやくメジャーへの昇格を果たすも、わずか3週間足らずでDFA。それでも腐らずマイナーで結果を残し続け、2023年はAAA49試合で脅威の47盗塁(?!)、打率も.347と好成績を残し、2度目のメジャー昇格を勝ち取った。するとこのチャンスをものにし、最終的には打率.258, 24盗塁とブレイク。走り屋としての地位を確率し、31歳を目前にして初めて開幕メジャーを手に入れた。そして今年の活躍は先述の通りである。
 ブランコの持ち味といえばもちろんその脚力だ。Baseball Savantによれば2023〜24年の2年間でスプリントスピードはMLB全体4位であり、その足の速さは言うまでもない。が、ブランコはただ足が速いだけでなく盗塁の技術にも非常に優れており、通算の盗塁成功率は.824と高い水準だ。彼のスピードは、彼のプレーを見ればすぐに分かる。

これは現地4月1日のBAL戦、最終回1点ビハインドで代走として出場したブランコがまさにその脚力で1点を奪い取った場面だ。これぞ脚のスペシャリストといった具合に軽々と二盗、さらには三盗を決め、犠牲フライで同点のホームイン。(その裏にサヨナラホームランを打たれて負けた話はさておき、)このような接戦ではブランコはキープレイヤーとなる。

そして時には、こんなディレイドスチールを決めることも。

 と、ここまでブランコの脚力について触れてきたが、彼が輝くのは塁上だけではない。

動画は、現地8月17日のCIN戦で2打席連続のホームランを放った場面であり、さらに次の日にも2試合連続のホームランを放っている。実はブランコはマイナーで2021〜2022年に2年連続で14HRを放っており、上記のようにメジャーのレベルでも稀にそのパワーを発揮するのだ。ただ、彼が打席で披露するのはパワーだけではなく…

彼はバントを仕掛けることも多く、内野安打をもぎ取ることもあればスクイズもお手のもの。ブランコは脚だけでなく、打席内でも見せ場を作ることができる選手なのだ。
 ここまでの説明から分かるように、ブランコは目立たないながらもロイヤルズとって欠かせない存在である。プレーオフでは秘密兵器、ダークホースとして活躍してくれること大いにを期待したい。


経験豊富なベテラン強打者、ユリ・グリエル

 さて、まだまだ知名度の低いブランコとは違い、こちらは御年40歳。説明もほとんど必要ないだろうが、彼の名前はユリ・グリエル(Yuli Gurriel)。アストロズでは2度のワールドチャンピオンに輝き、30HRや首位打者も経験した強打者だ。亡命前にはNPBのDeNAでもプレー経験がある。
 ただ、そんな輝かしいキャリアを送っていたグリエルも、今年は引退の危機に追い込まれていた。アストロズを退団しマーリンズに移籍した2023年は108試合に出場しながらわずか4HR, 打率.245と物足りない結果で、1年のみで退団。その後翌開幕日までに契約することは出来ず、開幕後の4月16日にブレーブスと契約を結ぶも、それはマイナー契約。徐々にキャリアの終わりが見え初めていたが、彼の不屈の闘志を持つ男(知らんけど)。簡単にキャリアを終わらせるわけにはいかず、AAA75試合で打率.292, 12HRと実力を見せつけて復活のときを待っていた。とはいえ、一塁専のグリエルにとって、ブレーブスの一塁に今季ここまで全試合に出場しているマット・オルソン(Matt Olson)がいることは大きな障害であり、一向に昇格されず。ただ、逆にそれが功を奏すことになる。正一塁手のビニー・パスクァンティーノ(Vinnie Pasquantino)が長期間離脱することになったロイヤルズは、トレードデッドラインは過ぎているものの、他球団に所属しているグリエルに目を付けた。実は、マイナー契約の選手はTDL後もトレードできるというルールがあり、それによりグリエルは金銭トレードでロイヤルズに移籍することができたのだ。こうして、2人目のキューバ戦士がロイヤルズにやってきた。
 ロイヤルズに来たグリエルは、すぐにメジャーでの出番を得た。

慣れ親しんだミニッツメイド・パークで迎えたロイヤルズとして最初の試合で移籍後初安打初打点を挙げると、そこからレギュラーとして定着。ここまでホームランこそ出ていないものも、打率.260, 出塁率はキャリアハイに次ぐ.361を残し、見事に復活を果たしてみせた。

多くのMLBファンが彼のことは知っていると思うのでブランコのように魅力を長々と説明はしないが、HOU時代にワールドチャンピオンを2度も経験しているグリエルは、まだプレーオフの戦いに慣れていないロイヤルズにとって貴重な存在。Pasquantinoが仮に戻ってきたとしてもぜひラインナップに残ってほしいものだ。


 ということで、ここまでプレーオフへ向けて鍵になりそうなロイヤルズのキューバ人選手を2人紹介した。やはりロイヤルズといえばボビー・ウィットJr.(Bobby Witt Jr.)サルバドール・ペレス(Salvador Pérez)ばかりに注目が集まりがちだが、逆にそれ以外の選手がどこまで活躍できるかもキーポイントになってくる。このままいけばワイルドカードではアストロズと対戦することになる。強力先発投手陣を擁していることは互いに同じなので、ぜひグリエルとブランコの活躍で攻略の糸口を見出してほしいところだ。久しぶりのプレーオフなので、ありかだいことにロイヤルズに注目していただいている他球団ファンの方もよくTLで見かけるが、よければ是非今日紹介したブランコとグリエルにも注目してみてほしい。

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