太宰と推し

先日、図書館に行った際に、ふと太宰治の小説集を見つけた。人間失格と女生徒程度しか読んだことがなかったので、一度借りてみることにした。

なぜこのような前置きをするかといえば、推しが青森県出身ということが頭によぎったからである。(加えて推しは太宰のパロディネタを出している。)


推しは以前、noteにも書いていたように、出身地である青森の空気感や雰囲気を自分を構成する要素として挙げている。(そのためbioにも書いているがスルーされることが多いらしい)


推しのネタを楽しむためにも、青森がどういうところかというイメージを持っておいた方が良いと個人的には感じる。(元ネタを知っておくことによる面白さ的なものがあると思うからだ)しかし、私自身、青森へは一度旅行で訪れた程度であり、具体的なイメージが湧かないため、太宰の小説から青森っぽさを汲み取ろうと思い立ったのである。

いくつか読み進めた中で「津軽」が印象に残った。
話の内容としては、太宰自身が青森の昔なじみの所に出向いた際の出来事を描いた、手記のようなものだった。


惹かれた点として、話の後半Sさんが太宰をもてなすシーンが非常に良かった。酔っぱらったSさんが懸命に太宰をもてなそうとするものの、空回ってしまうところから、Sさんの垢ぬけなくも、憎めない愛らしさが笑いを誘って、ほっこりした気持ちになった。

他にも、太宰が酔っぱらって、ほかの作家をけなしてしまうところ、認めてほしいという本音が漏れるところなんかも、憎み切れない人間っぽさがでているなぁと感じた。

加えて作中には、青森の風景描写が出てくる。青々と茂った木々に、少しひんやりとした気温、さびれた商店街。登場人物の描写と相まって、哀愁っぽさも感じられてとてもいい小説だった。

ここでふと思い出したのが、推しのnoteの記事だった。

オシャレっぽいTwitter運用と高学歴なことから、一見冷たい印象を感じる推しだが、その実、推しはとても人間っぽいのである。当然、推しのネタに出てくる人間も、(欠陥はあれども)憎み切れないような、人間臭い登場人物が多いのだ。

(推しが住んでいたのは、津軽で描かれる場所とは同じ青森でも少し違うところだと思うが、)こういう空気をたくさん吸って生きてきて、人間らしい人たちに囲まれて過ごしてきたのかなあと思うと、なんだか柔らかい気持ちになった。

推しは、今、九月という存在と知識を切り離そうと試みているようだけど、私は推しの知識(文化)を下敷きに作られたようなネタが好きだ。推しから文化がどんどん広がって、新しいものに出会う瞬間が好きだし、それによって推しの輪郭がちょっと鮮明になるのがうれしい。どんどんこういうネタを量産してほしいなと思う。


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