冬の軽井沢で感じたひとり旅の良いところ
半年ぶりにひとり旅をした。昨年の11月から2月にかけて繁忙期が続き、くたびれ果てた自分へのご褒美として行ってきた。
行ったのは人生初の軽井沢。夏の避暑地というイメージが強く、常に人がいる観光地だと思っていたが、この時期の軽井沢は雪の街で観光客が少なく閑散としている。駅前や旧銀座通りは営業している店が少ない。寂しさと物足りなさを感じる街並みだった。
しかし、人が少ないからこそ街をすみずみまで見ようと努めた。どんな状況でも必ず魅力はあるし、来たからには絶対に良い旅と思える収穫が欲しかったからだ。やけになっているとも言えるが、状況に応じて視点を変えようとする姿勢は我ながらあっぱれと思った。
例えば、旧銀座通りで見かけた人は数えられるくらい。ほとんどの店舗は閉まっていた。寂しいのは間違いないが、だからこそ建物一つひとつを注意深く見てみた。
よく見ると建物はどれも違う。もし人がたくさんいたら「旧銀座通り」と一括りにして、街並みが作る雰囲気を味わうだけだっただろう。しかし、人がいないからこそ建物を注意深く見られて違いがわかった。実はどの建物も個性豊かでこだわりを感じるデザイン。高さがほとんど同じだから全体的にまとまって見えた。
旅行という非日常に身を置くと自分を俯瞰できるのも良い。どんな場所にいても基本的に生活リズムや思考は変わらない。当たり前だと思うだろうが、いつもと違う場所にいるからこそ自分の振る舞いや考え方がはっきりとわかる。ひとり旅は自分しかいないから自分のことだけに集中できる。自分探しにひとり旅を選ぶ理由が改めてわかった。
意外な魅力を見つけられるのも旅の醍醐味だ。今回初めて軽井沢を代表するベーカリーSAWMURAへ行った。本当は行くつもりはなかった。新宿のニューマンにあるし、私はそこまでパンが好きではない。何よりも、定番の観光スポットに行くのは個人的に好まない。いかにもおのぼりさんという感じだし、観光地の定番はピンキリで期待を裏切られることがあるからだ。
しかし、人に勧められたのと、閑散期でほとんど店が開いていないのが重なったので行くことにした。
行った感想は、素直に良かった。定番の安定感を感じた。
別荘地と感じさせるしゃれた設えは、来る人の心をつかむ。レストランは天井が高く、2階もオープンで開放的。全体を見渡しながら昇っていくスケルトン階段は、まるで天国に行くような気持ちになるだろう。
軽井沢といえばモーニング、SAWAMURAといえばモーニング。これもベタすぎるがモーニングプレートを食べた。ラグジュアリーホテルのモーニングのように見た目も華やか、味も良くボリュームもある。開放的な空間で定番を食べる時間は想像以上にリッチな気分になって、ご機嫌になった。定番も悪くないと思いながら厚切りトーストを頬張った。パンにそこまで関心がないとはいえ、やはり老舗のトーストはうまい。
ひとり旅の話し相手は自分のみ。だから自分の内面にいつも以上に接する。声には出さなくても自分としっかりコミュニケーションをとれる。滞在先の魅力を何のしがらみもなく存分に感じることが魅力と思っていたが、自分と対話する時間を持てることがひとり旅の最たる魅力だと感じた。