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牛と少年~自然体~

割引あり

早春の朝、サトシは目覚めると、何かが違うことに気がついた。

窓から差し込む朝日は昨日と変わらないはずなのに、世界が全く新しく見えた。

牛のことを考えようとすると、不思議なことに、その姿が霧のように薄れていく。

牧場に向かう道すがら、サトシは立ち止まった。
いつもなら牛の世話を急ぐはずなのに、その必要性が感じられない。

牛がそこにいることは分かっている。

しかし、それはもはや意識する必要のないことのように思えた。

まるで自分の呼吸のように、当たり前すぎて意識する必要のないものになっていた。

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