ミニ小説 群青色の14センチの旗。
こんばんは。
キュウリです。
精神疾患で、中年女性です。
ここからは、フィクションのミニ小説です。
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ぼくは、まだ24歳で、妻とふたりで、飲食店の経営を始めた頃だった。今現在では、借金がぼちぼち返すことが出来てきて、経営も段々と黒字になってきた。でも、飲食店って千の目が無いと出来ない。千の目っていうのは、何かと言うと、千のことを見極める力というか、千の先にある苦労を読める力が無いと、経営者としては、力を持っていかなければならない。
音楽をかけるにしても、何にするか。料理のメニューや、野菜の仕入れ。乳製品の仕入れ。1キロ単位で購入できるパスタの麺。赤ワイン、白ワインの品揃え。考える事は山ほどある。
はじめてのお店のオープン当時からお客さんが来てくれて、10人来たら、3人くらいリピーターになってくれて、1人くらいのお客さんが、良いお客さんをまた連れてきてくれないと経営が成り立たない。
ある寒い日が続いて、ぼくら夫婦で経営してきたお店が、クリスマスイブになった。
ぼくら夫婦は、朝から外の窓を磨き、駐車場の掃除をして、看板をオープンの表裏に返して、いざクリスマスイブ。今年一年、頑張ってきたから、今日一日、張り切って仕事をしようかと言っていた。
昼前から、お客の人の入りはまずまずだった。
夜まで働いて、クタクタになって、やっとぼくは帳簿類を片付けて、家路に着いた。
ぼくは今、頑張ってお店でなんとかやっていけそうだ。と、踏んだ。
夜中に、ぼくの風呂上がりに妻が変なことを言う。
あなた、自分じゃ見えないだろうけど、ウチに帰ってから群青色の14センチの旗を掲げているわよ。と訳の分からないことを言う。
おかしいな。
旗なんて、ぼくは手に持って無いし、群青色の14センチの旗なんて知るもんか。と、ぼくは思った。
妻に、何か言い返そうとしたいけれど、ぼくは、群青色の14センチの旗になっていて、世の中の中で、ただの群青色の14センチの旗になっていた。
妻とお店もウチも、風呂も無くて、ぼくはただの群青色の14センチの旗になっていた。
おしまい。