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管理会計を批判する人たちへの処方箋
皆様、こんにちは。キョンくんです。
本日は管理会計を批判する人に、管理会計の良さを伝えたいと思います。
きっかけとしては、2024年2月15日に管理会計を批判するポストがX上で散見されたからです。気持ちはわかるのですが、管理会計を否定・批判するポストは定期的に現れてくるので、ここいらで一言、ビシッと言ってやろうかと思いました。
当方、新卒で事業企画に配属され、海外駐在も含めて管理会計に10年以上携わってきています。原価低減・原価企画・予算策定・予実管理の業務をメインで行ってきたため、大概のことは分かるつもりです。その僕が管理会計に絡む批判を順次回答していこうと思います。まずは想定される批判を出したうえで、最後に管理会計の意義を含めて、まとめて回答しようと思います。外野で批判する人たちに届けば良いなと思って書きました。では行きます!
予算策定時における管理会計批判
批判1.ガイドの押し付け合いばっかりしている
これは管理会計経験者は身につまされるのではと思います。ガイドというのは利益目標を指していますが、経営陣としては年間の目標値をある程度示してきます。その目標というのは大概ストレッチされた目標になっています。言い換えれば、無理だろそれ…ってレベルだったりするわけです。その結果、事業部間での利益目標に関する押し付け合いが行われます。言い換えますと、社内政治です。
目標に到達しないなら、目標を下げれば良い、という発想ですね。
批判2.厳しいガイドを海外拠点・製造部に割り振る
これも良くありますね。目標設定が本社日本ではどうにもならないから、稼ぎ頭の拠点に多く配分したり、海外がギブアップした分を本社工場にまとめて突っ込む、というようなこと。
こういった事が起きるので、事業部ではかならず「ポケット」を用意します。これは何かというと「隠し財産」です。つまり、いくつか利益を積みますネタを準備しておき、それを本社に隠しておくということです。どこかで追加目標が来ることを見越し、管理会計部隊に恩を売るため、準備しておくのです。事業企画が気づかない案件をどれだけ貯めておけるかは拠点や製造部の腕の見せ所になってきます。反対の方法論として、投資計画の額を多めに積んでおくというのも類型です。
つまるところ、化かしあいが行われているということです。
批判3.配賦で喧嘩する
こちらもよく聞きますし、実際に関わっていました(被害者側です笑)。製造間接費をどの製品にどれだけ賦課するかというのは考え方次第となります。これは時代時代で有るべきが変わってくるのですが、いったん設定すると変更するのは非常に労力が必要となる仕事です。変化させるということは、言い換えれば、誰かが得をし、誰かが損をするためです。
しかもこの配賦、なかなか分析が難しいです。なぜならどんぶりで負担することになるので、なぜ増えたり減ったりしたのかが見えづらいことがあります。なので、配賦を負担する身としては、なるべく配賦額は小さくあって欲しいとなり、他部署や他事業部へ負担させようと交渉するインセンティブとなります。
結果、一銭にもならないことで喧嘩しなければならず、消耗します。
事業企画時における管理会計批判
続きまして、新製品開発や商品企画時点での行動から発する、管理会計批判です。
批判4.意図しないレベルで有るべきを設定してくる
これは経営陣から来ることも有るし、事業企画の自主目標の場合もあるのですが、有るべき目標利益はたいてい、非常に高いところにあります。本当に届くのかよってレベルです。カイゼン案件を積んでも積んでも届かないのでは、という思いに苛まれ、定期的な報告は憂鬱になります。まだ足りてないのかと上司や事業部長に詰められることも有るでしょう。
ゴールの見えないカイゼンが続くことになります。
批判5.いつまでも数字あそびをしている
これは予算策定時にも言えます。例えば「10%原価低減すれば目標達成するので、審議まで時間がないからこれで行きます。あとは量産までに案を考えましょう」といって、事業部正式報告に利益が載ること、などです。
具体的な方策がないまま経営陣の了解が出てしまうので、量産開始まで地獄を見ることになります。事業部内で設計から「企画が出した数字だろ、お前たちでなんとかしろ!」って言われたりする可能性爆上がりです。
見えない目標を作り、皆で消耗してしまうことがあります。
管理会計という分野そのものへの批判
ちょっと趣向を変えたものですが、内心こう思っている人もいるんじゃないかな、という内容です。1個だけあげます。
批判6.専門性何もないし、社内政治ばかりしている
制度会計と違い、管理会計は法律に縛られた何か、というものはありません。結果、会社によって千差万別な、色々な業務が存在します。この社内独自の形式に沿って、会社内で皆を引っ張っていくことが求められます。制度会計のように統一した分析や見解が無いのが管理会計の特徴でも有るため、分析力はたしかに必要ですが、それよりも交渉力が大きく物を言います。
平たく言えば、社内政治力の有無が管理会計をやるうえでの必要条件です。会計って付いてるくせに、何も知らんなと思われてしまいます。
管理会計の意義
さて、ここまで色んな批判を書いてきました。ここまで読んでこのNoteを閉じると、ただただ管理会計が嫌いになって終わってしまうので、最後に「それでも管理会計はイケてる」ということを書いて終わりたいと思います。
青写真を描き、その未来をチームと作り上げるサポーター
これが管理会計に従事する人間が仕事で得られる最大の魅力です。上記は抽象的に書きましたが、金を稼ぐ役割=管理会計なのです。巷では経理が金を稼ぐとか言う言葉もありますが、実業ちゃんとわかっていますか?と聞きたくなります。製造や設計が稼いでいるんでしょという質問も来るでしょうが、売れる製品を冷徹に判断する声を上げられるのは、唯一管理会計を司る部署だけです。
強力な発言力と責任を管理会計部隊は持っています。
責任を持つからこそ、青写真を描く資格が得られる
成り行きで作り、ちょろちょろって出てきたカイゼン案だけ組み込んだ赤字の事業企画を出したら、どうなるか想像できますか?まあ、上位職制からは怒られますよね。そしてそれに終わりません。設計製造からの信頼は地に落ちます。
なんとしても黒字化の絵を覚悟して描かなければなりません。場合によっては、考えに考え抜いた結果、実にならないと判断したら止める決断もしなければなりません。僕は考えに考え抜いて、心をズタズタにしながらも数十億の投資を止める判断をすべきと報告を上げたことがあります。こういったことがプライム企業所属の30才前後でもできるんです。
あなたが責任感を持っていれば、設計製造等の技術者の方々は信じて背中を預けてくれるはずです。傍目には厳しい目標設定を掲げても、ついてきてもらえます。そうすれば、彼らに真剣に考えてもらうこともできます。その結果を信じて本気で上位ともぶつかる。金を握るからこそできることだし、辛いけど意味のある仕事をしたと思えます。
会社によっては経理が管理会計の仕事をしていることも有るでしょうが、具体的な施策を一緒にチームで考えられるのは事業部企画の特権です。ぜひ、事業部に入って管理会計の仕事を楽しんでほしいと思いますし、その良さを知ってもらえればと思います。
管理会計の面白さや意義を、今回示させていただきました。
最後に、各批判への回答を簡単に載せて終わりにしたいと思います。
批判1への回答
傍目には意味ないことしているように見えるかもしれませんが、これは前さばき(根回し)の一種です。金を稼いでいるからこそ、どのあたりのガイドが現実解なのか、管理会計部隊は理解しています。この繰り返しによって、経営陣の目を事業部に向けさせることができ、利益レベルについてのすり合わせを全社で行うことができます。経営陣も事業部の状況は分かっていないので、この予算策定によって、会社が同じ方向を向けるようになるのです。
批判2への回答
上記に書いた通り、有るべきを設定し責任を取れるのが管理会計部隊の特権です。ポケットも隠し財産も理解しながら、なぜこのレベルを目指す必要があるのか、事業部で一枚岩になるように会話していくのが、管理会計部隊の目指すところになってきます。管理会計部隊がいなければ、統一した議論はとてもできません。
批判3への回答
ただの利益の付替えだろ、という批判は理解します。しかし有るべき分析を行うために配賦の検証は常に行われるべきです。交渉に時間がかかる、ということに対しての疲れもひっじょ〜に同意しますが、数年前設定の配賦をそのまま使うほうが不自然なはずです。変化を起こすことで批判されることを恐れる必要はないし、批判する人間は変化を恐れているだけなのです。
批判4への回答
意図しないレベルで有るべきを設定してくる、というのは適切な物言いではないと考えます。会社が存続するため、責任の一端を担っているので、投資対効果で判断をしなければならないのです。上でも書きましたが、赤字の事業計画を誰が承認するのか、という話です。もしストップしたいのであれば検討に検討を重ねて止めることを決断したのかどうか。耳に痛い言葉を言えるのは、管理会計部隊だけです。
厳しい言い方ですが「やせ我慢ができるのは管理会計部隊の特権」です。
批判5への回答
これは批判4への回答で答えていると思うので、割愛します。
批判6への回答
管理会計部隊で得られる能力の一つがここに詰まっています。社内政治力やコミュ力がめちゃくちゃ鍛えられます。マネジメント力も上がります。なぜなら設計vs製造のような、利益相反が起きがちな部署の仲立ちをしながら、ゴール目指して一緒に走るようサポートしていく仕事だからです。
世間では管理会計よりも制度会計(経理)の方が専門性も有って素晴らしいという風潮もありますが、管理会計も全く負けていません。青写真を描く力はめちゃくちゃ重宝されます。過去を分析する制度会計は確かにどこの会社でも活きるのでしょうが、未来を洞察する力は管理会計だからこそ鍛えられるでしょう。
社内政治ばかりしている。結構なことじゃないですか。
ガンガン誇っていきましょう!
私の場合
私は現在、制度会計畑で働いています。経理に来たからこそ、管理会計の面白さや意義を再発見できたと思っています。近い将来、また管理会計部隊に戻りたいとも思っています。
あのヒリヒリは忘れられませんので笑。
以上です。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
良ければ、Xもフォローいただければと思います。