世界最大級の #LGBT パレード、PRIDE in Londonに行ってきた。
アメリカ最高裁が「同性婚禁止は違憲」と歴史的判断を下した翌日の、6月27日。世界最大級のLGBT+パレードである、PRIDE in Londonに行ってきた。行ってよかった。良いものを見た。3時間をかけても結局、最後まで見ることはできなかったが、パレードを歩く人々や沿道で声援を送る観衆の表情を見ているだけでも、十分に胸に迫るものがあった。
彼らはただ、自分らしくある事への理解を求めているだけだったし、
彼らはただ、大切な誰かを愛しているだけだった。
写真を整理しながら、少しレポートしてみたい。
・全米で同性婚“合法化”へ 米連邦最高裁が判断 - NHKニュース
・「同性婚は合憲」アメリカ、全ての州で合法に ホワイトハウスもレインボーに染まる - ハフィントン・ポスト
・アメリカ最高裁が同性婚を認める その命令文が美しいと話題に - Fashionsnap.com
《記事のあらすじ》
1."Supported by MAYOR OF LONDON"―― 大手企業はもちろん軍隊や消防隊までもが登場する、圧倒的な「あらゆるところからサポートされている」感。とにかく素晴らしかったし、心の底から、うらやましい。
2."God Loves EVERYONE"―― クリスチャンやムスリムが、レインボーパレードを歩く。その姿を見て、ちょっと泣きそうになる。
3."I'm here, I'm QUEER"―― 可視化される様々な「マイノリティ」達と、彼らをサポートする支援団体たち。日本に比べてずっと環境が整っているように見えるロンドンでも、やはり支援団体が必要なんだ。
4."Love is a Human Right"―― キスをする同性カップルと、それを祝福する観衆。みんな幸せそうに笑っている。そうだ、幸せで、何が悪い。誰かを愛する幸せを、自分が自分らしくあることの幸せを、一緒に祝おう。
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1."Supported by MAYOR OF LONDON" ――驚きの『ロンドン市、全面協力』
今回、パレードの規模自体にももちろん驚いたが、一番の驚きは『街をあげてのバックアップ体勢』だった。駅を歩いていれば必ずというほどパレードの広告を見かけたし、街に出ればスターバックスのような「支援企業」の広告を見つけることもできたし、現地の有力なフリーペーパー「TimeOut」誌を手に取れば、巻頭でパレード開催を知ることができた。
どこがサポートしているんだ!?と協賛リストを見てみれば、そこには大手企業の名前が並び、その筆頭には、バークレイ銀行と共に『Mayor of London』の文字が見つかった。・・・まさかの自治体、全面協力。同じ首都でも、東京で同じことができるだろうか?歌舞伎町のある新宿区でも、同性パートナー条例を持つ渋谷区でも、正直、想像できない。今は、まだ。
パレードはOxford Streetを歩き、Piccadilly Circus、Trafalgar Squareを通って、White Hall(世界遺産ウェストミンスター寺院やビッグ・ベンの手前、観覧車ロンドン・アイの向かいのあたり)まで進む。ロンドンの都心も都心、観光地としても"ど真ン中"の中心地が4時間以上も道路封鎖され、パレードの為に提供された。それでいて、周囲にそれを不満に思うような空気は無い。沿道のみんなが、笑顔をパレードに向けていた。
パレードを歩く面々も、個性的だ。LGBT+当事者の老若男女や、その支援団体。SOHOエリア(ロンドン都心の歓楽街)のゲイバーの面々。街中でも見慣れた有名企業。フットボールや自転車レースなどのスポーツチーム。学校名を掲げて参加した、中学生と思しき生徒たち。警官隊もパレード内を歩いていたが、その様子は警備目的には見えず、参加者として歩いているようだった。さらには陸空海の軍隊や消防隊まで、あらゆる方面から駆けつけた、LGBT+支援の意思。圧巻だった。
2."God Loves EVERYONE" ――クリスチャン&ムスリム in プライド
パレードの中には、クリスチャンやムスリムの団体もいた。
キリスト教やイスラム教では、宗派によっての違いこそあれど、同性愛への抵抗が強いという話を聞いているし、現にそれを理由に反対する人々もよく見かけてきた。だから、「神」の名の元に「愛」を認めパレードを歩く人々の姿に、感動せずにはいられなかった。
もしかすると、同性愛嫌悪のクリスチャンは「そんな奴らはクリスチャンとは認めない!」とか、言うのかもしれない。しかし、神の愛は否定されるべきではないし、"God Loves Everyone"のEveryoneには当然、性的マイノリティも含まれる。
3."I'm Here, I'm QUEER" 可視化される、様々なマイノリティたち。
性的マイノリティの話題では、同性愛の話題になり、いわゆるゲイやレズビアンに注目が行きがちだ。そんな中、トランス(身体的性別と性自認の間に違和感を持つ)やア・セクシュアル(無性愛者:他者への恋愛感情や性的欲求を感じない)の人々もパレードを歩き、存在を主張していた。また、他のグループでは、ゴスやパンクの服装に身を包み、「サブカルチャー内や、メインストリームLGBTカルチャーの外にいる性的マイノリティにも気がついて欲しい」と呼びかけた。
そしてパレードを眺めていて気がついたのは、LGBT+への支援団体の多さだ。日本の半分程度の人口しか持たないイギリスで、しかもロンドンだけで、これほど多くの支援団体がいるのかと驚かされた。数も多ければ、その内容も豊富だ。同性愛への支援団体、トランスの支援団体、アセクへの支援、いじめ防止の団体・・・。
イギリスでは同性婚も認められていて、結婚番組に同性カップルが(普通に。変に特別扱いされているわけでもなく、本当に普通に。)登場するなど、LGBT+への理解や受入れ環境が整っている。だから渡英した頃には一瞬、「LGBT+もロンドンでなら、あまり悩まずに暮らせるのかな?」などと思ってしまったが、もちろん、そんなわけはなかった。支援団体の数は、受け入れ環境が整っているという事を意味する反面、「それだけの支援が必要な状況がある」という事も語っている。支援と理解が、必要なのだ。イギリスでも、まだまだ。
※右下の画像は、UKIP(英国の極右政党)の支持者たち。「UKIP支持者にもゲイはいる」という看板を手に、柵を超え、パレードへ飛び込み参加。パレード主催側がUKIPの参加を断った事が背景にあるが、その詳細は『右翼はLGBTパレードに参加してはいけないのか(Yahoo!ニュース)』参照。
4."LOVE is a Human Right" 誰が「愛すること」を制限できる?
パレードを眺めていると、何組かの同性カップルが、熱烈なキスを披露してくれた。あるカップルは40-50代ほどの男性達だったが、キスを終えたその表情を見て、ひとつ、しみじみと思うことがあった。『ああ、彼らは相手のことが、本当に好きなんだなあ。』そこには、自分のよく知る感情が、溢れて見えた。
彼らはただ、人を愛しているだけだった。どう探しても、そこに罪なんて無かった。キスを終えた彼らはお互いを見て、心から嬉しそうに、ほんのちょっとだけ照れたように笑っていた。そしてそんな彼らに、観衆は拍手喝采で応えた。
3時間ほど、パレードを眺めていただろうか。しかしそれでも、パレードの列は途切れることを知らず、ついに終わりを見ることはできなかった。印象に残ったものは沿道の人々の笑顔。そしてそれ以上に、歩く人々の笑顔が、焼き付いて残った。恋愛感情を持たないア・セクシュアルの人々も、路上で胸を張っているように思えた。
彼らはただ、彼ららしく生きているだけであり、
大切な誰かを、愛しているだけだった。
そしてそれが幸福であることを、私達は知っていた。
彼らが求めていることは「彼ららしく在ること」への理解だったし、
そのために誰かをおとしめるようなこともなかった。
彼らの幸福を拒む理由は、誰にも無かった。
『他人の幸せを喜べないような、狭量な人間にはなりたくない。』
それが、パレードを沿道から眺めた私達の、ちょっとしたプライドだった。
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