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Uくん、またはオナン・スペルマーメイドのこと
Uくんが亡くなった。
Uとはドラァグ・クイーン、オナン・スペルマードの本名。(Uくんは本名を公表していないみたいなので、ここではUくんと呼ぶことにします)
30年近く前に出会って、何回か作品撮りをした。
その頃、まだ私はスタジオを辞めたばかりの駆け出しのカメラマンで、作品を少しでも増やしたいと色々な人に声をかけて、モデルを探している時期だった。
そんな私にとって毎回、衣装もメイクも自前で、驚くようなアイデアでカメラの前に立ってくれた。日芸のスタジオで、時には実家で撮影して、本当に楽しかった。でも、そんなUくんの溢れるようなクリエイティビティに私の方が追いつかなかった。
「昔のカラーフィルムが出来たばかりのハリウッド女優みたいな写真が撮りたいの。肌もマットな質感で、色も絵の具みたいな発色で、ああいうの撮れるかな?」
撮れなくて、ごめんね。
「オナンって呼んで」
オナンどころか、スペルマーメイドと名乗った時は、ちょっと声に出すのが恥ずかしいと思ったけど、Uくん、オナンは瞬く間に界隈で有名になり、名だたるカメラマンの被写体になった。
双子のお兄さんがいて、おばあちゃんも両親もUくんの活動を応援してくれていること、おばあちゃんは衣装の制作も手伝ってくれてること、家族の愛を受けた陰と陽で言えば圧倒的な「陽」のオーラをまとったドラァグ・クイーンだった。
Uくんにまつわる思い出は他にも、ずんどこべろんちょという、これまた声に出すのもハードル高すぎな2丁目のバーに遊びに行ったり、ゲイパレードに参加したり、出演するデパートメントHに行ったら、ご高齢のクイーンと奴隷のカップルがいて、リアル「老体に鞭うつ」または、打たれる現場を目撃したり、Uくんのショーを観た後、なぜか、その時付き合っていた彼氏と大喧嘩して、当時はギリ凶器になりそうなほど重かった携帯をクラブの床に叩きつけたこと…
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おっと、後半は私の黒歴史になってしまい、恥ずかしくて駆け出しそうだ。尾崎豊じゃないけど、盗んだバイクで駆け出したいよ。
と、そんな感じで早、20年ほどが過ぎ、UくんをSNSで見つけた時は、その変わってなさに驚いたし、嬉しくなった。
Uくんが出演する舞台「プリシラ」も観に行った。舞台に立つ、生のUくんも昔と変わらず抜群のスタイルの良さで、これは人知れず努力をしている人でなければ出来ないことだと感じたり。Uくん、私は太ったよ。
見習って腹筋・背筋と筋トレ再開するよ。
またいつかオーバー・ザ・レインボーで会ったら「眉毛の描き方か変!」とか言って笑ってね。
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