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汐留駅で流血して、ポケットティッシュを恵んでもらった話

今から4年前、会社員当時に東京出張へ行ったときの話です。

4月某日、私は汐留駅近くの会場でセミナーを受けることになりました。
その日は娘(大学生)の誕生日前日。偶然にも娘がちょうど東京で予定がある日だったので、一緒にお祝いしようということになりました。

銀座のイタリアンのお店を予約して、娘とは現地で待ち合せることに。
滅多にないシチュエーションで、とても楽しみでした。

当日、会議が予想以上に押して終了。私は急いでお店に向かいました。

予想以上に慌てていたのでしょうか。9センチヒールを履いていたのがそもそも間違いだったのですが、汐留駅の階段を降りていたとき、階段を踏み外して気づいたら転がっていました。

「い、痛ったぁ…」

コケてしまった…東京で…恥ずかしい…
と、ふと足を見ると、信じられないことに右足のスネがパックリ割れて(肉が見えてた)出血していました。

『ぎゃ、ぎゃああ~~~~~』←心の声

スネってこんなに簡単に割れるものだったんですね。
パンストは破れ、服は汚れ、バッグとヒールの片方は届かない場所に飛んでってました。立とうとしても足が動かない。
状況を飲み込むのに数十秒かかりました。

時間は18時過ぎで、ちょうど退勤ラッシュの時間帯。

大都会東京のビジネスマンがあわただしく行き交うなか、私はなすすべもなく、足から流血する薄汚れたオバサンと化していました。

どうしよう… と泣きそうになっていたら「大丈夫ですか?」と女性が声をかけてくれました。その後4人の方が集まって、救護の方を呼びに行ったり、励ましたりしてくれました。
どれだけありがたかったことか…。

そんなとき、通りすがりの方が「急いでいてお手伝いできないのですが、良かったら使ってください」とポケットティッシュを差し出してくれました。

「あ、ありがとうございます!」とお礼を言って受け取り、私が座っているそばにポケットティッシュを置いたら、その後からその場を通る人が次々とポケットティッシュを恵んでくれる流れが生まれました。

お賽銭のようにやさしく置いてくださる方、
目線も合わせずICOCAのようにさりげなく置く方、
投げ輪のように私をめがけて投げてくださる方、色々いらっしゃいました。

ポケットティッシュがどんどん積み上げられていく…
(不謹慎ですが『ちょっとオモロイな…』と笑えてきました)

でもあまりに血が出るので、ポケットティッシュもあっという間に底をつきました。

そうすると2、3人の方がハンカチを持って広げ、私を囲み、まるで今からお産でも始まるかのように私を隠してくれました。
今から何が起こるんだと、逆に通行人の関心を集めてしまう結果になっていました。

日本の中心で働くビジネスマンの皆さん、お目汚ししてすみません。
ペコペコ頭を下げながら足を押さえるしかできませんでした。

そうだ、、、娘に電話しないと…(←やっとここで気付く)
携帯で娘に電話をかけました。

娘「もしもし?今お店着いたよ!」
私「お、お母さん…ケガで血が出た…お店には行けない…」
娘「はぁ?え、どういうこと?」
私「ごめん…いま汐留駅にいる…階段からコケて…ごっごめん(嗚咽)」

気が動転しているときの語彙力ってすごい。

娘「えっ、え????分かった、とりあえずお店はキャンセルして今から汐留駅に向かうから!」

娘もしっかり育ってくれたな…頼もしい。そんなことを思いながら、娘の誕生日を台無しにした自分が情けなくてまた泣けてきました。

階段で足から血を流しながら泣くおばさん。見るほうも地獄です。

そんなこんなで救急車が到着し、娘とも合流。
救護してくださった皆さんに血だらけの手で手を振りながら、めでたく搬送されました。
そして11針縫って処置終了。骨が折れてなかっただけ助かった。

娘に連れられ、ひょこひょこホテルへチェックインすると、もう21時をまわっていました。

でもどうしても気が済まなくて、「マジで行くの?」という娘を連れ出し、露店でペタンコ靴を買って、足に包帯ぐる巻きの状態で居酒屋で反省会&誕生日祝いをしました。

娘「もう二度とハイヒール履いたらアカン!禁止や!!」
私「でも、服装によっては仕事で履かなあかん時もあるから…」
娘「ペタンコのやつあるやろ!それでいいやん!」
私「う、うん分かった…」

こうしてお気に入りのハイヒールを東京に捨て、バブル期から続いた私のハイヒール人生は幕を閉じました。

汐留駅で救護してくださった方々、本当にありがとうございました。
東京は冷たい街なんかじゃない。優しい方がたくさんいる。

あの日以来、トラウマで駅の階段を降りるときは必ず手すりをつかんでいます。


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きょん|ロックな50代ライフ「自分らしく自由に生きる」
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