妹が選んだ治療について
妹は18年間、乳がん治療を行いましたが、その治療は全て同じ病院で受けました。途中、病院名は変わりましたが、独立行政法人、地域医療機能推進機構。昔でいうところの公立病院です。
この病院では長く同じ先生にお世話になっていて、約15年間同じ主治医でした。その後2人目の担当医が1年間、3人目の担当医で2年弱お世話になったと聞いています。
妹が長く闘病生活に挑めたのは、一人目の先生のおかげです。
女性医師で本当に親身になって対応してくださり、長期に渡り妹を励ましながら支えてきて下さいました。
最初の抗がん剤の後、体調不良を起こした際には「今すぐ救急車で高速に乗って来て!」と言ってくださり、命拾いしたこともあります。(白血球が激減し、感染症を起こしていました)
再発した時には一緒に泣いてくださいました。
そして主治医が変わるときにも「見捨てるわけじゃないよ、大丈夫だから」と、常勤退職されることになったときも、一緒にまた泣いてくださったそうです。
主治医が変わった後は、勤務先を離れた先生に迷惑をかけてはいけないと、担当医師以外と会うことを控えた妹に対して先生は、月に数回出勤されてる日と妹の診察日が重なったときには、診察後の会計処理の待ち合いまで、わざわざ降りてきてくださり、声を掛けに来てくださったと聞いています。
そんな素晴らしい医師との出会いがあったからこそ、医師との二人三脚が成立し、妹は長く治療に向き合えたんだと思います。
妹が受けたのは、一般的に「標準治療」と言われるがんの治療です。
腫瘍を摘出した(実際にはリンパ節郭清も行いました)手術後に、抗がん剤、放射線、ホルモン剤での再発防止治療を全て行いました。
20代からの発症とし、フルメニューで、そしてホルモン剤投与は、一般的な期間より長く行いました。
手術は31歳のときに行いましたが、それからの人生が180度変わってしまうこととなりました。
治療においては脱毛、発熱、ホルモンバランスの不調、偏頭痛、更年期障害、骨粗鬆症、胃腸炎。
がん治療にはがんへの直接的治療だけでなく、副作用に対しての治療も必要になってきます。
それまで病院にはほぼ行ったことのないような健康な妹でした。それが月に何回も病院に通わなければならない生活となりました。
また、子宮体がん予備軍であることもわかり、乳がん治療には色々障害を生じたと聞いています。
それでも将来の結婚や出産を考え、子宮を温存したいと、月経を止める注射(休眠状態にさせる)は10年以上打っていました。
がんになっていなければ、好きな人と恋愛して結婚し、出産して家族を持ち、そして自分の家庭を築いて仲良く暮らしていたと思います。それが叶わなかったのは、本当に本当に辛かったはず…。
子どもが大好きで、私の息子たちを自分の子のように可愛がってくれました。友人の子どもたちも大好きで、子どもちゃんと遊びたいからと、よく友人宅にも泊まりで遊びに行っていました。
多くの人が望むだろう、そんな【普通の幸せ】を望む人生は、妹の選択肢の中から徐々にフェードアウトしていったのだと思います。
やがて再発した際には、40歳を目前として決定的に家族を持つことを諦めざるを得なくなりました。
本当に辛い選択を、何度も何度も強いられてきた人生だったと思われます。
しかし、良い主治医との出会いがあったからこそ、数々の大変な治療にも挑むことが出来ました。その時その時にあった選択肢の中から最良の方法を一緒に選んできました。
再発後は新しい薬や検査なども提案していただき、それを試していくという選択肢もあったからこそ妹は【頑張ろう、やってみよう、まだ次もある!】と、前向きに生きていこうと、新たな可能性を見出すことが出来たんだと思います。
コロナ禍もあり、一時は消極的治療しかできない時期もありました。本来は早くにポート設置を行い、点滴治療を開始する予定でしたが、コロナ禍で入院や手術が出来なくなりました。
しかし、そんなときにもその時に出来る最善の治療を提案してくださり、他のがんに使用する飲み薬の抗がん剤を使うことになり、このお陰で何とか1年近く手術を先送りにすることが出来て、コロナ禍全容の不透明な時期もなんとか乗り切ってこれていたように思います。
有名人や芸能人の方で、時にがんの標準治療を選択されない方の話を耳にすることがあります。
もちろん、妹が選んだ標準治療という選択が全ての方に合うとは思いませんし、望まない方もおられると思います。
しかし、最善最新の臨床や結果を、全国で同じように取り組む医師らと情報共有し、より良い今後の方向性を提示してくださる治療は、未来に希望が持て、生きる望みを先に先にと繋げることが出来ました。
もちろん、中には思わしくない結果になったときもありましたが、その前にはきちんとリスクや可能性や確率、長所短所も説明してくださり、自分で選んでいくという選択肢を常に用意してくださる真摯な治療方針には、納得して取り組むことが出来たように思います。
標準治療以外の先進治療や民間療法には、中には功を奏する方もおられるようですが、実際はその治療数や結果を公的機関が取りまとめて精査や分析していることはほぼなく、私設団体内のみだけで共有されているだけの情報でしかありません。
標準治療が終了となった後の緩和ケア期に入れば、民間療法などを取り入れてみるのも、ひとつの選択かとは思いますが、やはり再発防止においての治療や、再発後の延命治療の段階においては、標準治療に勝るものはないような気がしています。
健康保険適用外の最先端技術を駆使した先進医療に取り組むには、莫大な費用と時間と周囲の家族などの協力がなければ、なかなか簡単に取り組むことはできません。
周囲を巻き込んだ治療を行っても、周りのみんなが平穏無事に暮らせるか?どうかも含めて、QOL向上をめざしていくのが、本当の治療ではないのか?と考えています。家族を含めた最善のQOL向上と維持があってこその治療がベストだと思っています。そのためには、やはり標準治療が一番のベストではないかと思うのです。
しかし、先にも書いたように、信頼できる医師と取り組まなければ、標準治療は功を奏することは出来ないと考えます。
もし自分ががんに罹患したときには、信頼できる医師を見つけることを治療の最優先事項とし、そして共に標準治療に取り組める環境を希望したいと考えています。
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