メトロ上場、バカの壁は鉄壁になったのか
こんばんナマステ🩵Kyoskéこと暑寒煮切(あっさむにるぎり)だよっ✨
昨日、東京メトロこと東京地下鉄株式会社が東京証券取引所プライムに上場、時価総額1兆円以上という好調な滑り出しを見せた。
戦前において東京の地下鉄は民営で、東武系の東京地下鉄道が現在の銀座線にあたる浅草―新橋間、東急系の東京高速鉄道が同じく現銀座線の渋谷―新橋間を建設、以後も競うように路線を計画したけれど、戦時下において他のヴェンチャーや東京市の計画路線も含めて、帝都高速度交通営団に統合された。
営団というのは戦時下に生まれた国が統制し、民間も出資する企業。
帝都高速度交通営団は政府が大半を出資、ついで東京市、大手私鉄がそれぞれ出資した。
戦後、GHQが他の営団を解散させたなか帝都高速度交通営団だけは公有性が認められたために残され、国鉄と東京都の保有となった。
以後、営団といえばイコール帝都高速度交通営団、営団地下鉄のことになるのだけど、国鉄が主導権を握る営団地下鉄の建設ペースだけでは路線整備が追い付かないため、東京都自らが路線整備に乗り出すことで、現在まで続く営団地下鉄と都営地下鉄が併存する体制になる。
複数の事業体が地下鉄を建設している都市としては他にパリやソウルがあるけれども、そちらでは運賃は一元化され、ユーザーがどの事業者の路線に乗っているかなんて気にしなくていいようになっている。
ところが東京の場合は営団地下鉄と都営地下鉄が別運賃を請求してくるため、ネットワーク効果は半減してしまった。
国鉄が分割民営化された際、営団の所有権は国鉄から国に移転され、2000年代前半の特殊法人整理の一環で、帝都高速度交通営団も民営化されることになり、東京地下鉄株式会社が誕生した。
民営化された以上はJR同様に株式上場を目指すことになる。
しかしこれに異を唱えたのが、特殊法人整理の急先鋒にいた猪瀬直樹氏で、東京都副知事、さらに都知事に就任し、東京メトロと都営地下鉄の経営統合が先だと訴えた。
両地下鉄を経営統合させて、ユーザーに快適なネットワークを提供するのが先で、2つの事業体が分断されたまま片方だけ上場するなんて許さない、と。
バカの壁と糾弾した九段下駅のメトロと都営のホームを隔てる壁をぶち壊して改札を共通化、浅草駅や日本橋駅でメトロ駅のシャッターが閉まっているせいで早朝の始発電車に乗り継げない状況を株主総会で糾弾して開けさせたりと、経営統合に向けた目先の改善を次々と実現していった。
猪瀬氏の動きには都民を中心に地下鉄ユーザーから期待もあった反面、別に経営統合しなくても運賃さえ一元化してくれたらそれでいいのに、という冷めた目もあった。
国は東日本大震災の復興資金調達の為、株式売却の意向を強く持ったけれど、一方でその株を東京都に買われて経営権を奪われることを強く警戒していた。
また、上場を目指すメトロは絶対に都営地下鉄との統合はしたくなかった。都営地下鉄は多額の累積欠損金や長期債務を抱えており、メトロの収益や内部留保があれば解消はできるものの、財務体質は一気に弱くなり、上場時の評価が爆下げになるからね。
んで、道路公団の時もそーだったんだけど猪瀬氏はそれを利権だなんだいってディスるわけね。
猪瀬氏から見れば経営統合を拒むための言い訳として、メトロは経営統合なくとも運賃一元化は可能という姿勢を打ち出し始める。
ユーザーからすればそれでいいわけで、猪瀬氏の空回り感も覚えつつ、事態は急変。猪瀬氏は金銭問題で突如失脚してしまう。
以後2代の都知事は経営統合にも運賃統合にも興味はなさそうで、むしろ都市の成長戦略として地下鉄新線の建設が地下鉄議論の中心になっていく。
当初メトロは地下鉄新線の運行主体になることすら拒否する姿勢を見せていたものの、都が上場を認めるのと引き換えに、有楽町線豊洲―住吉間、南北線白金高輪―品川間の運行と僅かばかりの建設費負担を引き受けることになった。
かくして国と都が半分ずつの株式を公開したわけだけれど、その一方でユーザーにとって長年の望みである運賃一元化は置いていかれることになった。
メトロの現社長は就任時、運賃一元化に意欲を見せていたんだけど、パンデミックでの減収を受けて棚上げを言い出している。
そんななかで上場してしまうと、今後は利益の最大化が株主の意向になるわけだから、減収になるような施策は通りにくくなる。
もう運賃一元化は不可能なことなんだろうか。
まず運賃一元化が何故減収になるのかということについて。
例えば、渋谷から東京メトロ半蔵門線に乗り青山一丁目で都営地下鉄大江戸線に乗り換えて、六本木へ向かう場合を考えてみる。
渋谷―青山一丁目間は2.7km、青山一丁目―六本木間は1.3km、合計すれば4.0kmとなる。
4km以内の運賃はメトロと都営が同額のため、運賃一元化が実現していればIC運賃で178円ということになる。(以下、原則IC運賃を用いる)
これに対してメトロと都営それぞれが178円ずつ徴収すれば倍の356円。
ところが実際にはこれが286円となっている。
これはメトロと都営の間で乗り継いだ場合に70円の割引が適用されるからで、メトロと都営が35円ずつ負担しているということになる。
この程度までなら負担できるともいえるし、これがなければ多少運賃を下げられるともいえる。
運賃を一元化するということは言い換えれば89円ずつを負担するということになる。
運賃一元化のメリットとしては乗客が増えることと、中間改札などのコストを削減できることがあるけれど、それを上回る減収が見込まれるということでもある。
ということはそれを乗り越えることができれば、運賃一元化は可能ということになる。
そのために一番単純なのは運賃の引き上げ。
しかしそれをやりすぎれば、それまでメトロのみ、都営のみを利用していたユーザーからの反発を買いかえって減収になる。
運賃引き上げはほどほどにして、それよりも非鉄道事業を充実させ稼ぎを増やすことに重点を置きたい。
使い道が決まっていない都のメトロ株売却益を使ってある程度減収分を補填することも考えられるけれど、それよりも大きな支援策になることをひとつ提案したい。
それは都営三田線をメトロに譲渡すること。
都営三田線は目黒―白金高輪間で線路を共有している南北線をはじめ、メトロの大半の路線と共通規格であり、逆に都営地下鉄の他の路線との互換性がない。
三田線をメトロに組み込むことで、志村の車両工場を綾瀬に統合するなどメトロの他路線とリソースを共通化できるし、非鉄道事業を展開していくうえで路線網の拡大は売り上げ増大に繋がる。
今後、メトロは残りの株を売却して完全民営化というプロセスに進むことになる。
そうなれば運賃一元化はさらに難しくなるから、それがタイムリミットということ。
新線開業後、話は一気に動き出すだろうから、それまでやね。
それじゃあバイバイナマステ🩵暑寒煮切でしたっ✨