10年前の悪夢「関越道ツアーバス事故」を振り返る④新高速乗合バスは安全になったのか
こんばんナマステ💙Kyoskéこと暑寒煮切(あっさむにるぎり)だよっ⭐️
2日間気分転換もしたし、また #関越道ツアーバス事故 の話に戻るとするよ❗️
2012年4月29日に起きたこの事故の10周年ということで連日振り返りをしているんだけど、正直話が重い。
ただ、今日からは多少光が見えてくる予定でいる🌅
亡くなった7人のためになるのは忘れることではなく、語り継ぐことしかない。
あんな事故はもう2度と起きちゃいけないんだ。
だから重い話だけど、今日も書いていくよ‼️
4月末にこの事故が起きて、 #高速ツアーバス そのものに大きな批判が寄せられた。
それまで高速ツアーバスなんて知りもしなかった人達は安さを取り上げてあれこれ言っていたけれど、
本当にまずいのは無尽蔵の増発と他社委託、それも二重委託、多重委託も横行してコントロールが効きにくいことだったというのは前回書いた。
関越道事故のあと、どのような動きがあったのかを追っていくと、国交省はすぐに動いて6月には「今夏の多客期の安全確保のための緊急対策」をまとめた。
この緊急対策については、そもそもこんな事故が起きる前にやれよっていうことを除けばかなり評価している。
この緊急対策は大きく分けて4点ある。
(イ)緊急重点監査
この監査で高速ツアーバスを取り扱う #貸切バス 会社298社のうち8割強の250社で法令違反が見つかったっていうからヤバい。
そのうえで「高速ツアーバス運行事業者リスト」も作られて、これ以外の貸切バスは高速ツアーバスに使っちゃいけないことになった。
実際にはその年の夏の繁忙期にそれ以外の貸切バスが運行されて問題にはなったけれど、ルールを定めておけば問題も炙り出しやすくなる。
(ロ)安全確保のための基準等の強化
①乗務員の運転時間等の基準・指針等の見直し
これは大きな肝。ドライバーがワンマンで運行できる距離が670kmから原則400kmに縮まった。これは高速乗合バスに合わせてのもの。
つまり東京からだと名古屋や仙台は大丈夫だけど、関西や北東北、金沢は無理になる。
実際、これによって関東ー関西をワンマンでやってたある高速ツアーバスの会社は別会社にこの路線を移管した。今でもそのバス走ってるけどね。
②運送に関する文書の作成・保存の義務付け
責任所在の明確化。重要。
③旅行業者の禁止行為に旅行の安全に係る事項を追加
ツアーである以上、旅行会社も安全に対する責任持てよ、と。
(ハ)安全等に関する適切な情報の提供・把握
①「高速バス表示ガイドライン」及び「輸送の安全を確保するための貸切バス選定ガイドライン」の策定・活用の周知
こういうのを予約サイトからバスの車内までいろんなところに明示しとけってやつ。
ちなみにこれは高速乗合バスも含む #高速バス 全体ね。
②旅行業者による「安全運行協議会」の設置の推進
高速ツアーバスを企画する旅行会社が、実際使っている貸切バスの会社を集めての協議会が催された。
③旅行業者による利用者への安全情報提供の義務付け
ツアー募集時に出発地、到着地、その距離、ドライバー何名、などをきちんと明示しておけ、というもの。
先述のガイドラインを逸脱するもの(例えば東京ー大阪便にドライバー1名)といったものは載せられなくなるから大きな効果がある。
④利用者等から国への通報窓口のネット上の設定
もう終わっちゃってるけど、これ。
なんかガイドラインと違うな、とか、このバスヤバいなぁ、って思ったら国交省に通報しよう、っていうもの。
⑤行政処分事業者に係る詳細情報の公表
これは貸切バスだけでなく、乗合バス、タクシー、ハイヤー、トラックに至るまで。
(ニ)関係者の連携・フォローアップ
地域ごとに「地方高速ツアーバス安全対策会議」を結成させ、①地方運輸局(主宰者)、②都道府県の旅行業担当課、③高速ツアーバスを企画実施する旅行業者、④高速ツアーバスを運行する貸切バス事業者、⑤その他地方運輸局長が適当と認める者が出席して、①高速ツアーバス及び新たな高速乗合バスの安全対策の周知徹底と確実な実施の確保、②高速ツアーバスから新たな高速乗合バスへの円滑な移行のための支援、を話し合えってことになった。
⑤の代表的なケースはこの人。高速バスの世界ではめちゃ有名。
以上の方策、緊急対策とした割にはかなり完成されてるんだよね。実のところ、今の高速バスの安全規制とほとんど変わっていない。
これ以外に車両についても椅子の背面を衝撃吸収構造にすることが7月から義務化されて、こちらはその後自動ブレーキや車線逸脱防止装置の搭載も義務化されて技術的なことでは規制は進化している。
ハード面はそうなんだけど、ソフト面はほぼ10年前の夏で固まった。
そして、高速ツアーバスと高速乗合バスは #新高速乗合バス として統合されることが既に決まってはいたのだけど、その時期が2014年度末(実質的には2015年春ということ)から2013年7月31日と大幅に前倒しになった。
新高速乗合バスというのは俗称であって、国交省も括弧付きで呼んでいる。
https://www.mlit.go.jp/common/000219455.pdf
高速ツアーバス事業者を高速乗合バスに編入することが第一点、次に高速ツアーバスの利点だった変動価格と他社貸切バスへの運行委託を認めるようにしたのが第二点。
緊急対策が実行されてから新高速乗合バスへの移行まで約1年。
安全対策の話はもうどこかへ行ってしまい、高速ツアーバスから新高速乗合バスへ移行するにあたってバス停をどーするのか、という議論ばかりになってしまった。
道にバス停を置くだけならまだしも、上に挙げた「専門家」が待合室の設置をごり押ししたことでますます拍車がかかった。
新高速乗合バス移行の直前には「 #移行組 」と呼ばれた高速ツアーバスと「 #既存組 」と呼ばれた高速乗合バスが立て続けに事故を起こし、改めて新高速乗合バスへの不安が搔き立てられた。
前年7月の緊急対策以上の安全規制なんてもう何にもなかった、強いて言えば委託運行の数を規制することで #ハーヴェストホールディングス が無茶なコミットで安全対策をおざなりにしたようなことは起こさせないようにさせたことは大きかった。安さばかり煽るメディアと違い国交省は本質をわかっている。
ただ、前述したように高速ツアーバスを運行できる貸切バスはリストによってもう限定されていたのだから、 #陸援隊 のようなリスト外の会社を召喚することはほぼ不可能。実態としてはほとんど変わっていない。
新高速乗合バスが緊急対策以降より安全になったなんてことはないんだよね。
だから新高速乗合バスへの移行時に矢鱈「安全」が叫ばれたのには違和感を持った。
こうやって個々の事業者が安全運行を掲げるのは至極当然なんだけど、(2012年7月31日旧高速ツアーバス最大手WILLER EXPRESSの「高速路線バス開業式」)
制度として安全になったというわけじゃない。
その少し後にとある勉強会で「せっかく改革されたのにまた安売りが始まって不安」と某「既存組」の紙パンフを見せた人がいて、人々への誤解は何にも解けてないんだなと溜息をついた。
その人にここまで書いてきたことをひと通り説明したけど、全然聞く耳持ってくれなかったな。
新高速乗合バスになってからも事故は起きている。
事故をゼロにすることは困難だけど、確率はもっともっと減らさなきゃいけない。
そのためにはハード面においては自動ブレーキや車線逸脱防止装置の義務化という進化はあったし、その先はAIの仕事になってくるんだろうと思う。車両だけでなく道路にもね。
一方でソフト面、つまり規制についても10年を機にもう一度ゼロベースで見直してほしいと思う。
ヒヤリハット、インシデントのケーススタディはそれなりに蓄積されてきたはずで、特にEUなど諸外国の比較も求められる。例えば、ドライバーの休憩時間義務は日本よりEUの方が長い。
新高速乗合バスの安全規制(実質は前年の緊急対策時の安全規制)が不磨の大典化していることには正直不安を持っている。
直近の年末年始や春休み、GWは久々に高速バスが盛況だった。恐らくこの夏もそうなるし、その先はインバウンドが本格的に再始動する。
その時に何かあって後悔しても遅いんだから、来年の新高速乗合バス10周年に向けて今一度安全規制を見直してほしい。
この重いシリーズは明日で最終回、最後はユーザー側に何ができるのかを考えていきたい。
それじゃあバイバイナマステ💙暑寒煮切でしたっ✨