ラーマの休日〜祭祀国家へ突き進むインド
こんばんなまらステ🧡Kyoskéこと厚沢部煮切(あっさぶにるぎり)だべさっ✨
今日はインドが死んだ日だと思う。
とりあえず『ラーマーヤーナ』という叙事詩があることは世界史の授業なんかで習うと思うけど、
聖典のないヒンドゥー教においては『マハーバーラタ』と並んでとっても重要なお話。
このへんの感覚は神道における『古事記』『日本書紀』『風土記』なんかに似てるっちゃ似てる。
『ラーマーヤーナ』の主人公ラーマが生まれたのがウッタルプラーデシュ州北西部のアヨーディヤーで、
州都ラクナウとルンビニーやクシナガラといった仏跡巡礼の拠点となるため日本人には割と知られたゴーラクプルを結ぶ線のちょうど真ん中にある。また、ヴァラナシから見ると北西にあたる。
したがって日本人がもっと訪れてもいい立地なのに、日本人はこの街の重要性を知らないからぜーんぜん訪れない。
釈迦の話によく出てくるコーサラ国ってあるけど、アヨーディヤーはコーサラ国初期の首都で、ラーマはコーサラ国の王子なのよ。
だから仏跡関係とアヨーディヤーは近しい位置関係にある。
なお、コーサラ国がその後遷都したのが祇園精舎のあるシュラヴァスティー。
釈迦が逗留したシュラヴァスティーは仏教徒、ラーマが生まれ政(まつり)を行なったアヨーディヤーはヒンドゥー教徒の聖地とはっきり分かれてるんだけども。
ところがそんなアヨーディヤーのラーマを祀る寺院があった場所にムガール帝国がモスクを建てちゃうのよ。
アヨーディヤーに限らずヒンドゥー教の寺院を壊してはモスクを建てるということをムガール帝国は結構やってきた。
日本人はムガール帝国っていうと、タージマハールやフマーユーン廟にヒンドゥー教の建築を混ぜたイメージの方が強いのかもしれない。
これはイスラームとヒンドゥー教の止揚を目指したスーフィズムという思想や、その思想に共鳴してヒンドゥー教を保護した第3代アクバル帝の治世が大きい。
スーフィズムってそもそもはイスラームが政治と密接なのはおかしい、ムスリムなら信仰に生きるべきだって主張した人達で常にイスラーム社会の端っこにいた人達なんだけど、
彼らがインド亜大陸にやってくると、何故かヒンドゥー教との止揚って話になるんだよね。
だけど、ムガール帝国の闇というか、タリバーン同然のことをやってたのも事実なわけよ。
とくに第6代アウラングゼーブ帝が徹底的なイスラームしか勝たん、という思想でヒンドゥー教を弾圧し続けた。
とりあえずアヨーディヤーに関しては初代バーブル帝の臣下によってラーマ寺院を壊してバーブリーマスジド、つまりバーブルのモスクを建ててしまった。
これに対する怨嗟はそのときからずーっと続いていたけれど、イギリスはこれを押さえ続けてきた。
インドが独立するとバーブリーモスクを破壊して、ラーマ寺院を再建すべきだという声が高まってくる。
この話なんかに似てない❓
イェルサレムの嘆きの壁と岩のドームの話を思い出した人、結構いると思う。
モディ首相がイスラエルと関係を強化して、ガザ戦争におけるイスラエルの攻撃を表立って支持しているのは、自分達の境遇と重ねている部分があるんじゃないかな。
ま、インドは同族かつ石油を仕入れているイランと親密なので、イランと犬猿の仲であるイスラエルに近づきすぎはしないはずだけどね。
米露の間をうまく立ち回っていることからもわかるようにモディ首相は外交に関してはある程度冷静。
そして1992年、ヒンドゥー教原理主義者達がアヨーディヤーのバーブリーモスクを破壊する事件が起き、このときの衝突で2,000人の命が失われた。
この破壊を主導したひとりが他ならぬナレンドラ=モディさんなわけだけれど。
ヒンドゥー教徒の想いを足蹴にして、バーブリーモスクを建てたこと自体は断罪されるべきだと思うけれど、かといってそのモスクを破壊するとかどーなの❓って。
んで、最高裁でバーブリーモスクの跡地にはラーマ寺院を建てるべき、という判決が2019年に下る。
パンデミックの最中、ラーマ寺院はどんどん造られて、いよいよ今日が落成という話になった。
ここまでの話だけでもなんだかなぁ、という気がするんだけど、こっからがヤバい。
18日に突然落成式の22日を祝日にすると言い出して、政府機関や銀行は半休というかたちになった。
ちょっと待ってくれよ。
ラーマ寺院の落成って民間の話じゃないの❓
なんでそれが国の祝日になるのよ。
ヒンドゥー教が国教だというならそれは仕方ないけど、インドはそーじゃない。
マハトマ=ガーンディーが掲げた諸宗教の人々が平和に共存できる国、社会だったはずでしょ❓
ということで8割の国民が信仰するヒンドゥー教だけでなく、イスラーム、キリスト教、スィク教、ジャイナ教、仏教の祭日も祝日になっている。
ジャイナ教徒や仏教徒なんて総人口の1%もいないのにだよ。
マザーテレサを国葬にした国でもある。
その視点からすれば神道由来の祝日ばかりである日本が気持ち悪いし、首相が必ず伊勢神宮に初詣に行く時点で日本は神道国家だと思う。
ガーンディーや長らく政権与党だったコングレス(国民会議)の他宗教に配慮したやり方に不満を持つヒンドゥー教徒も多く、事実ガーンディーはヒンドゥー原理主義者に暗殺された。
そんな声が小さくなることはなく、ヒンドゥー原理主義者を率いたモディ首相は2014年以降長期政権を続けており、今年5月の総選挙でも勝利は確実だろう。
10年のモディ政権のなかで、目に見えるところでは牛に対する「生類憐れみの令」で野良牛が増えたりとかさ、ムスリムによる高度自治が認められていたジャンムー&カシュミール州は連邦直轄領に降格させられたり、ろくでもないことが色々起きている。
でもヒンドゥー教の新しい寺ができるから、国民みんな祝え、とかさ。ちょっとイッちゃってないか❓
しかもモスクをぶっ壊した跡地にできる寺だぜ。ムスリム達はどー思うのか。
戦前の日本ですら明治神宮落成の日を祝日にはしなかったのに。
総選挙に勝利したら、ヒンディー語の国号であるバーラートをすべての言語に押し付けるつもりなんだろう。
そー考えたら世俗国家インドは、今日で死んだのかもね。
間もなく迎える共和国記念日、これはインドとしての最後のものになるかもしれない。
共和国記念日が無難に終わるのか、国号その他ヤバい演説するのか、見ものだね。
それじゃあバイバイなまらステ🧡厚沢部煮切でしたっ✨