ロシア語とはどのような言語なのか
ロシア語の言語学的位置
ロシア語は、スラヴ諸語のうち、東スラヴ語群に属しています。東スラヴ語群にはロシア語以外に、ウクライナ語とベラルーシ語といった言語が含まれています。これらの言語は、相互にとても似ている特徴を有しています。ここで、これらの3つの言語を比べてみることにしましょう。
◎日中の挨拶表現:
ロシア語:Добрый день!(Dobryj djen’) ドーブるィー ヅェーニ
ウクライナ語:Добры день!(Dobry den’) ドーブるィ デーニ
ベラルーシ語:Добры дзень!(Dobry dzen’) ドーブるィ ヅェーニ
◎私の名前は〜です:
ロシア語:Меня зовут 〇〇.(Mjenja zovut 〇〇) ミニャー ザヴート
ウクライナ語:Мене звати 〇〇.(Mene zvati 〇〇) メネー ズヴァーティ
ベラルーシ語:Мяне завуць 〇〇.(Mjanje zavuc' 〇〇) ミャネー ザヴーチ
このように、東スラヴ諸語は、互いに文法や語彙が似通っています。しかしながら、ウクライナ語とベラルーシ語は、その話されている地域がポーランド・リトアニア王国に支配されていたことから、ポーランド語系の語彙が流入しているのです。
ロシア語が使用されている地域
ロシア語はロシア連邦以外に、旧ソ連を構成していた国々でも広く使用されています。ロシア以外で、現在でもロシア語が公用語とされているのは、ベラルーシ、カザフスタンとキルギスのみです。
その他の旧ソ連を構成していた国々では、ロシア語が広く通用する国々があります。その代表がウズベキスタンやタジキスタン、トルクメニスタンといった中央アジアの国々です。しかし、近年ではこれらの国々の間でのロシア語離れが進行していると言われます。ロシア語離れが進んでいると言われますが、依然として中央アジア地域で通用する外国語はロシア語と断言しても良いでしょう。
キリル文字について
ロシア語はキリル文字を用いて表記しています。キリル文字は、特に正教会(ギリシアとルーマニア除く)を信仰している国々における言語の表記として用いられています。そのほか、旧ソ連内で使用されている言語、例えばウズベク語やカザフ語などでも使用されています。その他にも、旧ソ連ではありませんがモンゴル語でも使用されています。
ただし、旧ソ連の崩壊以降、旧ソ連を構成していた国々ではキリル文字を廃止してラテン文字(ローマ字)への移行措置が取られている国があります。例えば、ウズベキスタンやカザフスタンでは、キリル文字を廃止してラテン文字への移行措置が撮られています。
ロシア語の文法的特徴
ロシア語の文法的特徴について。ロシア語は、習得が大変難しい言語であると認知されているようです。それは、以下のようなロシア語の特性が影響しているからでしょう。それは(1)7つの格変化、(2)多様な動詞形態、(3)不完了体・完了体の区別…、などなど、でしょうか。ここではこれらについて簡単に解説していこうかと思います。
(1)6つの格変化
ロシア語では形容詞や名詞が、文中での役割によって語尾が6種類に変化します。Магазин(magazin)「店」を例にとります。
主格:магазин(magazin)
属格:магазина(magazina)
与格:магазину(magazinu)
対格=主格
具格:магазином(magazinom)
所格:магазине(magazinje)
ここで、それぞれの格の用法を見ていきましょう。主格は、文の主語になります。属格(生格)は「〜の」という所有の意味を表します。与格は、「助ける」や「与える」といった動詞の目的語になるほか、特定の前置詞と結びついて方向を表します。対格は、他動詞の目的語となります。具格(造格)は道具や手段を表すときに使われるほか、受動文の動作主を表します。所格(前置格)は場所を表すときに用いられます。この格は単独で用いられることはなく、必ず前置詞と共に用いられます。
(2)多様な動詞形態
ロシア語の動詞には人称変化(単数・複数)の他、過去形や分詞が存在しています。過去形は主語の文法性(話者の性別)によって区別しています。分詞には能動形と受動形が存在しており、それぞれに現在形と過去形が存在しています。では、читать(chtat')「読む」を例にとって見てみましょう。
分詞(副分詞と受動分詞過去短語尾除く)は、文中で形容詞の働きをします。形容詞も格変化するので、最終的には一つの動詞がものすごく変化するのです。初級レベルであれば分詞を真面目に学習する必要はありませんが、中・上級になると、文章の中で分詞を目にすることが多くなります。ですので、書けなくとも読んで認識でいる程度には身につけたいものです。
(3)不完了体と完了体の区別
ロシア語には英語やドイツ語に見られるような完了形は存在しません。しかし、ロシア語を含むスラヴ系言語には体という動詞範疇が存在しています。多くの動詞が不完了体動詞と完了体動詞のペアを持っています(運動動詞などは除く)。ここでは不完了体と完了体の用法を見ていきましょう(便宜的なものですが)。
完了体:完了体は一回限りの動作を描写する際に用いられます。英語にある「現在完了」のニュアンスを帯びている時があります。
不完了体:不完了体は、動作が完了したかどうかを問わず、その動作があったのか、なかったのかを描写するときに用いられます。動作の反復や過程なども表すことができます。
完了体と不完了体の使い分けは、ロシア語学習者に一生ついてまわる難問・課題と言っても良いでしょう。完了体と不完了体は、上記の解説程度では到底、その全容はわからないのです。動詞の体についてのみ、焦点を当てた教科書もあるほど、この分野は非常に難しいのです。
まとめ
以上、ロシア語の言語学的位置から、キリル文字、文法的特徴について解説してきました。Noteのような媒体では、とてもロシア語の全容に迫ったものはかけません。この記事を読んで、ロシア語やスラヴ系言語に興味を持った方は、ぜひ参考書・文法書を入手して、更なる情報を得ていただきたいと思います。