おかえり。やっと行けたよ。〜ONEW 【Lighthouse】に寄せて
あり得ないことなんてない
あの忌々しいコロナとかいうウィルスのせいで仕事が全て吹っ飛びひたすら家に閉じこもっていた時、あまりにも暇で暇でだいぶ前から親友に勧められていた韓国のドラマを観たのが始まりだった。
韓国ドラマなんてオバサンの観るもんじゃん。とか鼻で笑っていたわたしも実はもういい歳のオバサンになっていたことをすっかり忘れていた。
オバサンだものそりゃハマるわ。
いや、いまは若い子だってハマってるじゃん。
わたしがひねくれていただけだね。。
とあるドラマを見ていたときに主役ではないけれどちょっと気になる子がいた。
それほど好みではなかったけれど(ごごごめん)
なかなかよい味を出していて、役中よく泣くこの彼は誰だ?
クレジットには“ONEW(SHINee)“
調べてみた。
アイドルだった。
youtube見てみた。
5人で揃って踊って歌う姿に釘づけになった。
動画を漁りサブスクでアルバムを全てダウンロードしてライヴDVDを買い気がついたらファンクラブまで入っていた。
ここまで約1ヶ月。
韓国ドラマなんて、、
アイドルなんて、、、、
わたしが夢中になる訳なんかないじゃないの。
と思っていたのに。
人生それなりに生きているとあり得ないことなんてないのよ。
これからはもう断言するのはやめておこう。
それが出会い。
SHINeeという5人組のアイドルグループに夢中になって、とにかく情報を集めているうちにとても悲しい出来事も知ることになった。
自主的に見ようと思ったわけでもないけれど、辛い動画が流れてきて苦しくなった。
動画の中で、涙するメンバーを抱き寄せて耳元で話しかけていた彼は前髪で顔半分ほど隠れていたけれど無表情だった。
その後、出演するトーク番組などでその話題を振られると必ずと言っていいほど、スッと表情を無くし能面のようになる彼を見て思った。
あの顔、知ってる。
わたしも多分同じ顔をしていたことがある。
取り返しのつかないことってあるんだ
6年前。9月のはじめ、まだ夏の暑さが残る夕方。
大切な人が突然いなくなってしまった。
晴天の霹靂とはこういうことをいうんだ。。なんていうのは後から思ったことだけど。
予想もしていなかった事態に全てが凍りついた。
当時、親しく関わっていたから、関係者に連絡したりなどで気が紛れたのがほんの少しだけ救いだった。
お通夜はわたしの誕生日だった。
まさかこんなに突然いなくなるなんて思いもしなかった。
あの頃少しだけ、ちょっとした意見のすれ違いがあって、でも実際にすれ違っていたのは別の人だったのだけれど。なんとなくわたしが気まずくて勝手に少し距離を置いていたそんな時だった。
その日も実はその人がいる事務所に顔を出そうかなと思ったけど後でいいや。。と行かずに帰って来ていた。
なんだか面倒くさいし、しばらく距離とってほとぼり冷めてから話すればいいや。ちょっとだけ意地になって、そんなことを呑気に考えていたけど、話し合いをする機会が永遠になくなってしまった。
そのことに気がついて愕然とした。
だってわたし別にその人に怒っていたわけじゃなかったのに。
その人とのすれ違いがあった訳じゃないのに。
そんな言い訳すら永遠に届かない。
そんなことってあるんだ。
泣くことすらできなかった。
泣く資格なんてないと思い込んだ。
取り返しのつかないことって本当にあるんだ。
時間薬はあるのか
眠れなくなった。
それでも世界は変わらないし、日常は何事もなかったように過ぎてゆく。
自分の感情をどう表現していいのか分からず誰にも言えずに毎日をやり過ごすしかなかった。
もうなにも出来ない。
そう思ったけれど関連する仕事は途切れなくあるし、自分の感情でキャンセルするわけにもいかずひたすらこなすしかなかった。
どうにかして眠ろうと、穏やかに眠れそうな好きなミュージシャンたちの曲を選んで2時間弱のプレイリストを作って聴きながら横になったけれど、そのプレイリストが3周しても眠くならなかった。
それでも無我夢中で日常をこなし仕事をこなして1ヶ月、2ヶ月が過ぎ年が明けていつしかプレイリストが終わる前に眠れるようになっていった。
時間薬ってあるんだ。
1日24時間ずっとそのひとのことを考えている訳では無いけれど常に片すみには存在はあって、ふとした時にどうしようもない感情が込み上げてくる。
ひとりの時に気がつくと涙がこぼれていてびっくりしたりして。
共通の友人たちと集まるとどうしたって話題に上がる。思い出話で盛り上がり泣いたり笑ったりしてる。
どうしても一緒に話ができなくて、でも空気読めないやつみたいになりたくないし、だから、曖昧な笑顔を貼り付けたまま表情を無くした。
あの青年の顔ときっと同じだった。
それから5年がたって、ひとりでいて突然涙が出てきて困るようなこともだいぶ減ってはきたけれどまだ名前さえ呼べないでいた。
当時のような辛さや苦しさはだいぶ減ってはいたけれど、取り返しのつかない後悔の感情は相変わらずどうしたらいいのか分からずになんとなく向き合うことを避けて過ごしていた。
時間薬ってあるのかな。
彼のあの表情が忘れられずに勝手に自分の気持ちを重ねていた。
Lighthouse
そんな彼が夏になる頃に日本語のソロアルバムを出した。
5曲目に入っていたそれを聴いて
ああ。そうか。
と、少しほっとして少し焦った。
君におかえり
僕におかえり
運転しながら流れてきたことばに
気がついたら声を上げて泣いていた。
ようやく泣けた
6年かかったけれど
なにかがほんの少しだけ動く気がした。
お墓参りに行ってみよう。
唐突にそう思った。
彼がこの歌を歌えたんだからわたしもなにかやってみよう。
お墓の場所も知ろうとしてなかったから、共通の友人に連絡を取り教えて貰った。
花を供え線香と煙草に火をつけ手を合わせた。
遅くなってごめんね。
なんかいろいろごめんね。
やっと来られたよ。
意識したわけじゃなかったけれども、その日はその人の月命日だった。
できすぎた話でなんだか嘘みたいだけど。
こんなこともあるんだね。
Life Goes On
初めて参加した彼のソロコンサートツアー。
初日、泣いて泣いて声にならずようやく絞り出した
「ただいま」
と
最終日、見事に歌い上げたあとのMCで見せたとても綺麗な涙。
わたしは彼ではないから、なにを感じなにに泣いたのかは知るよしもない。
ただこうして少しずつ彼が背負ってしまっているものを手放せていけたらいいなと思って聴いていた。
あれから3ヶ月。
だからといってわたしの中で何かが劇的に変わったわけじゃない。
相変わらず、その人を話題にするのはやんわりと避けてしまうし突然思い出してやっぱりもう2度と会えない現実に愕然としてしまうんだけど。
会いたいな。
恋しいな。
寂しいな。
そう思う気持ちはそのまま受け止めることにした。
彷徨いながら泣きながら
還る場所はひとつ
彼はそう歌った。
わたしの還る場所はどこなんだろう。
なにをしたって、しなくたって毎日は続いてゆく。
無理になにかを変えようとしなくたって、生きていたら否が応でも少しずつなにかが変わってゆく。
それでいいんだよ。
それがいい。
わたしはこれからも生きてゆくし。
そういえば
ツアー最終日のMCでオニュさん
「生きてくれてありがとう」
って言ったの。
「来てくれてありがとう」って聞き間違えたかなと確信が持てないでいたけれど、発売になったDVDで確認したらやっぱりハッキリと言ってた。
「生きてくれてありがとう」
おかえり
ただいま
ありがとう。
生きてゆこうね。
ありがとう。
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