君たちはどう生きるか わからなかった人に向けて
「君たちはどう生きるか」の感想です。具体的なストーリーのネタバレには配慮していますが、プロモーションが無い映画のためどんな感想でもある程度ネタバレになってしまう可能性があります。ご注意ください。
それは振り落とされたような、置いていかれたような感覚だった。タイトルから説教的なメッセージ性があるのかと身構えていたが、もっと私的で取り留めのない世界観で、見終えた当初の感想は「よくわからない」だった。一緒に見に行った連れは「難しかったけど、訴えかけられている気がして涙が出てきた」と本人なりに何かを感じていて正直焦った。「わからない」と言ってしまう事に、自分の未熟さを公表するかのような恥ずかしさがあり、悔しくて、絶望に近い気持ちになった。
私はなぜ理解出来ないのだろうか、などとモヤモヤしながら思考をめぐらすうちに、急に、あの時のセリフや展開はもしかしたらこういう気持ちや意味があったのではないか、と自分なりの解釈が浮かんできた。物語の核心に近づいた訳ではなく、疑問ははいくつも残されているが、何となく自分の中に印象づけられたシーンを足がかりに少しづつその意図を読み解いて、発見していく。そんな不思議な心地良さだ。人によってはこの足がかりは、共感できる心情であるかもしれないし、違和感であるかもしれないし、フェチズム、もしくは嫌悪であるかもしれない。それ以上にたくさんの要素が詰め込まれている。だから「わからなかった」人も「面白かった」人も皆含めて、100人いれば100通りの感想があると思う。今思うと「わからない」という感想もまた純粋で正直な気持ちだ。その気持ちを否定せずに受け入れて、どうしてわからないのか、自分なりに考えることで新たな発見があるかもしれない。「わからない」と素直に発信出来る人もまた素晴らしいのだ。
そもそも「わかりやすいジブリ作品」なんてものは以前から存在していなかったのかもしれない。私たちは普段作品を見る時、その評判や広告による前情報などによる何らかの潜入感がある。それが「評判が良かったから面白かった」や、広告を見て勝手に「面白くなさそう」といった他力本願な感想を産み、何となく分かった気になってしまっているのかもしれない。今回、分からないという壁にぶち当たったが、結果的にはプロモーションの力や誰かの言葉を借りず、自分で作品に向き合うという貴重な経験ができて本当に良かったと思う。
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