⑥札幌のお笑い市場の現状と課題【4.3 札幌お笑い界の知名度】
4.3 札幌お笑い界の知名度
では、大学生の中で「札幌で活動している芸人」の知名度はどの程度のものなのだろうか。まずは、そもそも“札幌にはローカルの芸人が存在している”という事実を認知しているのかについて調査した結果を述べていく(図13)。
図 13 札幌にローカルのお笑い芸人が存在することを知っていましたか?
図13を見ると、「はい(知っている)」と回答した者は37人(32%)と、3割程度に留まった。現時点では7割もの大学生が“札幌にはローカル芸人が存在しているという事実すら知らない”ことが明らかになった。
では、ここで「はい(知っている)」と答えた37人に対し、知っている芸人の名前を自由回答で答えてもらった(図14)。
図 14 知っている札幌芸人を教えて下さい
※回答が2票以上あったものを採用している。
※なお、コンビの片方のみなどの回答もコンビの得票に組み入れている。
※上記の注釈はこれ以降のアンケート結果についても同様である。
図14を見ると、回答の中でもっとも多かったのは10票入った「名前はわからない」であったことがわかる。一方で実名としてもっとも票数が多かったのは8票入った「オクラホマ」であり、次点は7票入った「タカアンドトシ」である。
一方、1票のみの回答の中には「しろっぷ」、「コロネケン」、「つちふまズ」、「モリマン」などの名前が並び、それ以外の回答としては「オレマカ」、「ゴールデンルーズ」、「スキンヘッドカメラ」、「スクランブル」、「どんきーず」、「ブレイカーズ」、「まごのて」、「鶴」、「ブギウギ専務」などの名前が挙がった。
上記に挙がった芸人は、札幌吉本や太田プロ札幌などの札幌ローカルのお笑い事務所に所属している者たちである。そこで次は、これらのような札幌ローカルのお笑い事務所の認知度について調査した結果を述べていく(図15)。
図 15 札幌にローカルのお笑い事務所が存在することを知っていましたか?
図15を見ると、「はい(知っている)」という回答が14人(12%)と、図13で明らかになった「札幌芸人を知っている」者の割合である32%よりも低いという結果になったことがわかる。
では、ここで「はい(知っている)」と答えた14人に対し、知っている事務所の名前を自由回答で答えてもらった(図16)。
図 16 知っている札幌ローカル事務所を教えてください
図16を見ると、図14の結果からも予測できるように、今回も「札幌吉本」が9票ともっとも多いという結果になった。なお、「太田プロ札幌」という回答は1つも見られなかった。札幌で養成所が開設されてから4年が経とうとしている現在でもまだ知名度は得られていないようだ。
次は札幌芸人をテレビ番組で目にしたことがある人はどれほどいるのかについて調査した(図17)。
図 17 テレビ番組で札幌芸人を目にしたことはありますか?
図17を見ると、テレビで見たことがある「はい」と回答した者は37人(32%)だったことがわかる。事務所の存在自体は知らないものの、多かれ少なかれテレビで札幌芸人を見た際に“この人は札幌の芸人なのだな”という認識はあるようだ。
では次は、上記のアンケートで「はい」と答えた37人に対して自由回答で具体名を尋ねた(図18)。
図 18 テレビ番組で目にしたことがある札幌芸人を教えてください
図18を見ると、「タカアンドトシ」が14票ともっとも多い回答となったことがわかる。次点は「オクラホマ」が7表と、図14とほぼ同様の結果となった。その他の回答には「アルちゃん先生」、「オジョー」、「ゴールデンルーズ」、「コロネケン」、「モリマン」などの札幌吉本芸人の名前があった。
次はライブやイベントなどの生の舞台でどれほど札幌芸人を目にしたことがあるかについて調査した結果を述べていく(図19)。
図 19 ライブやイベント等で「生で」札幌芸人を目にしたことはありますか?
図19を見ると、「はい」と回答したのは20人(17%)であることがわかる。そもそも図7のアンケートで「ライブには行かない」と答えた者の割合が77%だったため、必然的にライブなどで札幌芸人を見たことがある者の数自体が少ないと考えられる。
こちらもこれまでと同様に「はい」と答えた20人に対して自由回答で具体名を尋ねた(図20)。
図 20 ライブやイベント等で「生で」目にしたことがある札幌芸人を教えてください
図20を見ると、「わからない」が6票ともっとも多い回答であることがわかる。次点は4票入った「タカアンドトシ」であり、図14、図18とほぼ同様の結果となった。
その他の回答としては、「オクラホマ」、「オレマカ」、「しろっぷ」、「スキンヘッドカメラ」「スクランブル」、「すずらん」、「ブレイカーズ」、「まごのて」、「鶴」などの芸人の名前が挙がった。
ここまで、若者である大学生が「お笑い」というコンテンツ、ならびに地元のお笑い文化に対してどの程度の知識・興味を持っているのかについてアンケート調査をした結果を述べてきた。
結果として、全体的に「お笑い」というコンテンツそのものに対して好意的に捉えている者が多く、賞レースなどの芸人の大会についても関心を抱いていることがわかった。
賞レースというものはお笑いファンにとっては“年に1度、熱中しながら番組を視聴するもの”であるが、一般的な視聴者であれば興味を持たずに見ていない、そもそも開催自体を知らないという場合もあるだろう。今回も“大衆向けに放送されているバラエティ番組”などは視聴しているが、こういった賞レースに関しては興味を持っていないという可能性も大いに考えられた。しかし、図6のアンケートによって、『M-1グランプリ』を8割もの学生が視聴していることなどが判明した。これによって、「学生は筆者の想定よりもお笑いというコンテンツに対して一歩踏み込んで楽しんでいる者が多い」、または「賞レースそのものが一般的な視聴者に“大衆的なエンタメ”として受け入れられてきている」と考えられる結果となった。
一方で「お笑いライブ」ならびに「地元・札幌のお笑い」は「あまり興味を持たれていない」、または「圧倒的に知名度がない」という結果になった。
特に図13から図20まで、「札幌芸人」の知識について尋ねる質問事項が複数あったが、ここでは「タカアンドトシ」という答えが多く見られた。「タカアンドトシ」は元札幌吉本所属であったものの現在は東京で活動しており、今回の質問内で対象としていた「札幌で活動している芸人」には当てはまらないのである。それでもここまで得票を伸ばしたことの背景には、2020年現在も道内でローカルの冠番組を持ち続けていることなどが影響している可能性が考えられる。彼らが上京した2002年から18年が経つ今でも「北海道の芸人=タカアンドトシ」という構図は根強く続いているのであろう。そして同時に、その他の札幌芸人の知名度が圧倒的に低いとも言えるだろう。
その中で、図14の「知っている札幌芸人」の回答で票数を集めた「オクラホマ」は『イチオシ』(HTB)でコメンテーターを務めており、日常の中で定期的に目にする機会が多く、大学生からの知名度も伸びたと予想される。一方、1票のみの回答の中には「しろっぷ」、「コロネケン」、「つちふまズ」、「モリマン」などの名前が並んだが、これらは全員札幌吉本の芸人である(ただし、しろっぷは2020年3月31日をもって札幌吉本を退社している(45))。これはライブやテレビなど、他事務所と比べた場合に比較的露出が多いことがこの結果に繋がったと考えられる。
なお、当アンケートの目的の内のひとつでもある「どのようなアプローチを行えば札幌という地でお笑い文化を活性化させることができるのか」についてはさらに他の事象も組み入れて考察する必要があるため、あわせて後の7章に記すこととする。
(45) Twitter「しろっぷ じゅんぺい(@syrupjunpei)」、2020年4月2日、https://twitter.com/syrupjunpei/status/1245575836679278593?s=20(2020年12月3日閲覧)。
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