9年来の推しが賞レースの決勝に行った
東京のライブシーンを席巻する勢いの若手ピン芸人Yes!アキト。この時代にお笑いファンを名乗るならばその名を知らない者はいないだろう。
数年前まで彼が札幌でローカルの芸人として活動していたことは知っている人も多いはず。
私はそんな彼を今から9年ほど前から知っている。
2013年の秋。当時中学3年生。小学生の頃から好きだったお笑いを家の中で見るのに飽きたらず、半ば冒険に出かけるような気持ちで地元のライブに足を運ぶようになってから数回目のこと。札幌都心にあった小さな雑居ビルの一室で行われていた小さなライブで初めて彼と顔を合わせた。
開場時間よりもバカほど早く着いてしまった私に対して、当時まだ芸名にYes!がついていなかったアキトさんが優しく声をかけてくれたのを覚えている。
ピン芸人といえばヒューマン中村さんを激推ししていた中学生時代。独特な雰囲気とセンスのある彼の芸には同じように惹かれる部分があったのかもしれない。
当時中学生の自分はなんとなく
「ピン芸人ってことはR-1?いつかあの決勝の舞台に立っちゃったりして」
などと思ったこともある。
当時は札幌でもR-1の予選があったり、東京に出向いて予選に参加する札幌芸人がいたりしていた。しかし、ずっと地元から出たこともなく、なかなかテレビの世界に触れることがなかった子どもの自分にははるか遠い世界のように感じていた。
「まあ、ここからあの決勝への道のりは長いもんなぁ〜」
「立っちゃうなんてことないか」
それが立っちゃうのである。
彼は今日、本当にあの決勝の舞台に立っちゃうのである。
しかも敗者復活戦を経て。
ストレートに決勝に行くほうが凄い?
いやいや、今回言いたいのはそういうことではない。
昨日行われた敗者復活戦は「視聴者投票」なのである。
今回の敗者復活戦は審査員ではなく、一般視聴者が一番面白いと思う芸人に投票するタイプのものである。視聴者投票はその性質上、どうしても知名度や人気投票のような傾向が出てしまうことがある。今したいのはその性質の是非を問うことではないが、ここが今回伝えたいポイントに繋がる。
今回の敗者復活戦はYouTubeにて無料でリアルタイム配信された。無料であるせいかコメント欄の質もなかなかのものだった。そんな中でネタ前もネタ後も期待と応援の声で溢れていたのがアキトさんだった。
それを見た私は率直に「ああ、彼は"国民的な芸人"になってしまったんだなぁ」と思った。
オールスター感謝祭に出演したり、ビートたけしと共演したり、SNSでファンアートを観測したり、名だたる芸人が名前を出したりするたびに彼の活躍ぶりをひしひしと感じてきたが、今の彼は不特定多数の視聴者からこんなにも応援されている。「彼ならR-1の決勝に行けるはず」と思われている。これほど凄いことはない。彼の面白さやセンスをこんなにもたくさんの人が信じている。
実際に彼はこの視聴者投票で決勝への返り咲きを果たした。
全国のお笑いファンや一般視聴者が彼を応援している。
R-1の決勝に、あのゴールデン帯の大きな番組に出たらその勢いはさらに加速するだろう。そのときに自分はどう思うのだろう。
もう彼の背中についているのは北海道にいる芸人仲間やファンや家族だけではない。彼のネタを面白いと思い、応援したいと思う人々は今や全国各地にいる。
彼の活躍を追っていると、たまに「もう自分のことは忘れていてくれないかな」という気持ちになることがある。その理由はたくさんあるが、当時中学生の身でライブに通っていたクソガキの自分が多少なりとも迷惑をかけてきたような気がしてなんだか黒歴史を思い出すような気分になるときがあるし、ありきたりだが彼自体がもうかなり上のステージに行ってしまったような気がしてならないからである。
でも今だけはこっそりと応援させてほしい。
9年前に妄想した夢の大舞台に本当に立つあなたを全国各地のファンたちに負けないように応援させていただきます。
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