ホッピングショック(ZACKY)
小2か小3の頃だったと思う。
当時ホッピングにはまっていて、
毎日飽きもせずぴょんぴょん飛び跳ねていた。
バランスをとりながら無心で跳ねる。
跳ねている間はすごく集中していて、
一切の雑音が聞こえなくなるのが好きだった。
一生ホッピングしててもいいかな。
そんな事を思ったかどうかはわからないが、
その日僕は、一つの挑戦を企てる。
普段遊んでいた店の前の道から、ホッピングに乗ったまま家の中に入るという決断。僕なら出来る。
自信があった、自負もあった。
ハンドルを握る手には自然と力が入る。
まずは道で助走をつけ、そして室内へ。
家の一階はお店だったので、入り口は引き戸になっている。
引き戸は開け放たれていて、移動には何の問題もないはずだった。
いける!!!
と思ったその刹那、視界が大きく揺らいだ。
引き戸のレール溝に、ホッピングの先がぴたりと挟まった。
瞬間、ホッピングはその名に反して二度とホップする事は無く、
90度に倒れた。
顎を地面に打ち付け、目に火花が飛ぶ。
噛み合わせた前歯が欠けた。
切れた顎からは大量の赤い血が流れ出た。
割れたような鳴き声が店内に響き渡る。
あいにく店には両親が不在にしていて、
店番をしていた店員さんが急いで母親を呼んでくれた。
地面に打ち付けられた顎はパックリと割れ、地面には赤い水たまりが出来ていた。赤い水たまりの中に、欠けた白い歯が落ちている。
顎には大量のガーゼがあてがわれ、タクシーで駆け付けた母親に連れられ、
そのままタクシーで病院へ向かう。
顎に心臓が出来たように鼓動を感じる。
静寂の車内に僕の鼓動だけが響く。
ピーピーピー
静寂を切り裂く電子音に、母が少し動いた。
”たまごっちだ!!”
その音はたまごっちが進化を告げる音だった。
当時大ブームだったたまごっち。
何度も進化に失敗して、そのたびに悔しい想いをしていた。
顎の痛みも忘れてたまごっちを確認する。
やった!!!やったぞ!!!
これまで一度も成功していなかった進化に初めて成功していた。
そこには夢にまでみたおやじっちが躍っている。
僕の心も踊りだし、もう顎とか、病院とかどうでも良くなった。
進化が嬉しくて、浮かれてしまった。
最高の瞬間!!!至福の時間を満喫していると、
母親が冷たく「後にしなさい!」と僕を叱りつけた。
しゅんとして、たまごっちをしまった。
たまごっちをしまった後のことは何も覚えていない。
※この文章は、インタビューを元に加筆修正を加えたものになります。
【ZACKY豆知識】
やっほー!ザッキー豆知識の時間だよ!
ザッキーの家では、けがにまつわるお話が他にも。
ザッキーにはお兄さんがいるのだけど、その兄が地域の体育館で遊んでいた時の事。
体育館の天井から吊るされたネットのカーテンみたいなのがあって、
床でそれがたわんでいるところを踏み、すっ転び、おでこを9針縫ったという出来事があったんだって!
家庭内で共有されていたその出来事になぞらえ、顎から血を流すザッキーに母が最初にかけた言葉は、「おまえは顎か、、、」だったそうだよ。