聖ヴァレンティヌス転生 〜生き返ったら俺の命日に皆がイチャイチャしてた件〜
わしの名はヴァレンティヌス。ローマ皇帝クラウディス二世に迫害されながらも熱心に宣教活動を行い、絞首刑にされちゃった宣教師である。
実は、わしが存在したかどうかは定かではない。自分で言うのも変じゃが、どうも複数の人間の逸話を集めて作り上げられた偶像らしい。君たちの言う聖徳太子並にあやふやな人間なのじゃ。
そんなわしは今肉体を持ってここに立っている…なんでぇ?
存在しないんじゃないのか?え、結局居たの?
わけわかんない!
しかもめっちゃ神々しい服(古代ギリシャの服、キトン)
着てるんじゃけど、
これってギリシャ神話とかに出てくる神様の服じゃん!
一応キリスト教徒やらせてもらってるんじゃけどなぁ。
あとここは何処じゃよ!目の前にいるお前らは誰じゃよ!
なんでわしは日本語で喋ってるんじゃよ!
「せ、成功したね。」
「ああ、信じられん。それにしても饒舌だな。
ヴァレンティヌスは。」
「所詮は我々陰キャのイメージする神がベースになっております故、アニメに出てくるおちゃめな神のようになってしまうのは致し方ないことかとwwwデュフ」
何を言ってるんだ彼らは…
わしは彼らによって生み出されたのか?
まあ、生みの親ならわしにこの世界が何なのか教えてくれるじゃろう。
「あの〜ここはどこでしょうか?」
「あ、えっと、その、ぼ、僕達は」
「自分で作ったモノに人見知りするとはさすが松崎氏www
テラワロスwww」
「う、うるさい!お前が教えて差し上げろ!」
「お初にお目にかかりますヴァレンティヌス様www
拙者、神永俊介と申しますwwwデュフ」
「あ、どうも。名前だけ聞いたら主人公みたいでかっこいいですのう。」
「ぐはっwww人のコンプレックスをwww」
「お二方は、どちらで?」
「ぼ、ぼぼぼーぼぼ、僕は松崎健太です。」
「俺は漆黒の騎士だ…本当の名などとうに忘れた…」
「き、気にしないでください。彼は佐藤太郎。不治の病に侵されてるんです。もう30になるのに…」
「それはお気の毒に…つまりここに居るのはみんな、社会に馴染めないし馴染んでいる人を見ると嫉妬に狂ってネガキャンを始めるクソ陰キャたちということじゃろうか?」
「ねえ、なんか性格キツくない?」
「佐藤氏がツンデレ要素を入れようなんて言ったからですぞ!男のツンデレなんて求めてないでござるwww」
「…黙れ。」
「で、ここは何処なんじゃ?」
「おっと失礼、拙者としたことがwwwここは日本www
表向きは平和な国を騙っていますが、実際は世界各国を武力でで支配している悪国でござるwww」
「…気にするな、こいつは陰謀論者なんだ…」
「はぁ…それで、何故わしを…?」
「あ、貴方様の力でバレンタインを破壊してほしいんだ!」
「はい?」
「順を追って説明するでござるwwwあなたが死んだ2月14日は、多くの国でバレンタインデーという名前で記憶されているでござるwww」
「え?わしの名前の祝日!?すっごい!世界各地でわしの死を悼んでくれているということか!」
「いやwww逆wwwお祝いされてるでござるwww」
「は?」
「…2000年前に貴様が何をしたか言ってみろ…」
「え、結婚を禁じられた兵士に結婚式開いて結婚を認めてあげただけですけど。」
「そ、その逸話を聞いた現代人達は、貴方を恋のキューピッドみたいな認識で捉えちゃったんですよ。」
「はあ?」
「そうですwww今や、貴方の命日は愛の記念日となってるでござるwww(※カトリック教会はヴァレンティヌスの存在が非常に疑わしいため、2月14日を祝日から消しました。)」
「…日本は特にひどくてな…昭和30年代後半から女が好きな男にチョコを渡し、告白するという反吐の出るようなクソ文化となった…」
「チョコレート会社の陰謀でござるwww」
「し、しかもチョコレート会社は3月14日にホワイトデーとか言って、男が女にチョコを返すとか言うゴミ文化も作りやがったんです!」
「ええ…もうわし関係ないじゃん…」
「そこで!我々、反バレンタイン協会はヴァレンティヌス様を蘇らせ、その圧倒的な力でリア充共を殲滅していただくことにしたのでござるwww」
「…理論が飛躍しすぎておる気がするが、わしの命日に男女がイチャイチャするのは見過ごせんのう。」
「話のわかる方で助かったでござるwww」
「しかし、どうやってバレンタインをぶっ潰すのじゃ?」
「こ、これをヴァレンティヌス様に託します。」
「杖?」
「でゅふwwwこれはただの杖ではございませんぞwww拙者の作った杖型自爆スイッチでござるwww」
「…こいつを持って日本中のリア充共に凸るのだ…」
「………………わし、死ぬよね?」
「そ、そそそそんなことないですよ!ヴァレンティヌス様は人知を超えた力をお持ちです!」
「それに、わしはキリスト教の殉教者じゃぞ!気高い男なんじゃ!人殺しなどやらぬわ!」
「もっ申し訳ございません!で、では、ヴァレンティヌス様はどんな作戦がよいとお考えなのでしょうか?」
「恐怖じゃよ。恐怖でこの国をバレンタインどころではない騒ぎにしてやるのじゃ。」
「なるほどwww具体的には?www」
「わしを蘇らせる。」
「…何…だと…?」
「今、世界中にはわしの遺体を収めていると主張している教会が7つある。」
「え、えっ?」
「少なくとも6つは偽物じゃろうが…まあよい。では計画を話すぞ……」
2月14日 (火) 00:00
速報です。アイルランド・スコットランド・フランス
・オーストリア・ドイツ・マルタ・ポーランドの各教会から、聖ヴァレンティヌスの遺体が消えたとの情報が入ってきました。
目撃者によると、東に飛んでいったとの情報もあり、各国は原因の解明を急いでいます。
2月14日 (火) 03:16
中国で、空飛ぶ人間を見たとの情報が入る。
中国空軍が、未確認飛行物体を観測、追尾に失敗する。
2月14日 (火) 05:58
※Jアラートが鳴り響く
日本海沖に7つの飛行物体を感知。それぞれ、北海道
・東北・関東・中部・近畿・中四国・九州に上陸した模様。事実確認が取れるまで国民は外出を控えてください。
2月14日 (火) 07:00
緊急速報です。約一時間前に確認された飛行物体は、
ヨーロッパから飛んできた聖ヴァレンティヌス’sの遺体であることが確認されました。危険な可能性があるため、
見かけても、不用意に近づかないようにしてください。
登校・出社の判断は各自治体に一任するとのことです。
2月14日 (火) 07:21
都内 某高校
男子生徒が下駄箱に入っている手紙に気づいた、その瞬間。
天井を突き破り、ヴァレンティヌスの遺体(フランス産)が落ちてきた。
ヴァレンティヌスは呆気にとられる男子生徒から手紙を奪い取り、再び空へと舞い上がった。
ほぼ同時刻、青森県 某中学校(の通学路)
「ふぁ〜あ」
「あんたまた遅くまでゲームしてたんでしょ。
来年は受験なんだから、しっかりしなよ!」
「うるせぇな。お前は俺の母ちゃんかっての。」
「何よそれ。あ〜あ、バレンタインだからあんたにチョコ
あげようかと思ってたんだけどな〜」
「まじ!?それって…」
「か、勘違いしないでよね!義理よ、ぎr」
どぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
「な、なんだ!?」
「あ、あたしのチョコが!」
狙撃により、チョコが粉々に砕け散る事案が発生。
ほぼ同時刻、長崎県 某小学校
「あれっ、机の中に何か入ってる。」
「まじ!?絶対チョコじゃん!ヒューヒュー!」
「や、やめろよ〜」
キュイン
「!?」
「何だよ、何も入ってないじゃねえか。やーいうそつき!」
「ち、違うよ!入ってたんだよ!ホントだもん!」
チョコが突如消える事案が発生。
ほぼ同時刻、反バレンタイン協会
「…小学生の分際で生意気な…」
「激しく同意www」
「で、でも作戦は成功だ!いきなり死者がやってきてバレンタインを破壊するなんてトラウマ以外の何物でもないよ!」
「まだまだこれからじゃよ、頑張るんじゃ…わしの遺体たち…!」
2月14日 (火) 10:03
北海道 一人の女性がアパートのチャイムを押す。
「きちゃった♡」
「ま、まみか!ダメじゃないか、会社から外出禁止令がでてるんだ。それにヴァレンティヌスは人を無差別に襲うらしいよ、危険だ。」
「でも、今日はバレンタインよ。チョコ、欲しいでしょ。それに、一人で家にいるより貴方といたほうが、わたし…」
ぎゅおぉぉぉぉん ビィィィィム
「!?アパートが崩れる!まみか、掴まれ!」
「ダメ!貴方に上げるチョコが!」
「君の命よりも大事なものなんてない!チョコ、また今度くれよ!」
「…ええ!」
…おいおいヴァレンティヌスさんよぉ、逆にいい雰囲気になってるじゃねぇかってお思いのそこのあなた、安心してください。アフターケアも万全です。
「私の名はヴァレンティヌス(アイルランド産)。あなた方のような不貞な輩を成敗するのが使命…」
「俺はどうなってもいい…!しかし、まみかは渡さないぞ!」
「安心しなさい、殺しはしません。しかし、その態度…
気に入らんな。 破ぁ!」
「貴様、まみかに何を…!」
「おぉん?お前誰やねん!」
「まみか…?どうしたんだよ!?」
「貴様に関する記憶だけを奪った。(あと性格も変えた。)
二度と戻ることはないだろう。では、さらばだ。」
「嘘だそんな事っーーーーーーー!!!」
チョコを消され、アパートを壊され、女性の記憶と性格が改ざんされる事案が発生。
2月14日 (火) 10:27
東京都 首相官邸
総理大臣は先ほど記者会見を開き、ヴァレンティヌスの破壊は出来る限り行わないと宣言した。
「総理!どういうことですか、奴は実害を出しているんですよ!」
「ヴァチカンからの要請なんだ、しょうがないだろう。あれはキリスト教の遺産だぞ?死者が出ているわけでもない。
一種の自然災害のようなものだ。」
「奴がいつ去るかすらわからないというのに…
せめて目標の確保だけでも。」
「それについては防衛大臣である君に一任する。
くれぐれも破壊はするなよ?」
「承知しました。」
2月14日 (火) 11:02
東京都 ヴァレンティヌス対策本部
「…ということで、各地方の自衛隊にはそれぞれの地域のヴァレンティヌスを捕獲してもらう。今からヴァレンティヌスに対してわかっていることを簡潔に伝えるので、それを元に作戦会議を行う。」
・ヴァレンティヌスの数は7体であり、それぞれ自分のいる地域からは出てこない。
・全てのヴァレンティヌスに共通している特徴として、基本は上空700mから1000mの位置で下界を監視しており、目標を定めると降下し、攻撃を開始する。
・ヴァレンティヌスにはそれぞれ下記のような特徴がある。
アイルランド産:目が怖いヴァレンティヌス。対象の記憶や性格を改ざんする力を持ち、現代科学で解明不能な光線を放つ。 地域 北海道
スコットランド産:スナイパーライフルのようなものを持っているヴァレンティヌス。チョコレートや手紙を狙撃しているとみられる。 地域 東北
フランス産:腕がゴリラのように太いヴァレンティヌス。超人的な腕力で目標までの障害物を全て破壊する。
地域 関東
オーストリア産:神父の格好をしたヴァレンティヌス。教会の鐘や聖書・十字架を投げて 対象を攻撃する。
地域 中部
ドイツ産:特筆すべきところのない、一般的なヴァレンティヌス。しかし性格が悪く、自分が処刑された時の様子を対象に見せつけるなど、雰囲気を壊すことに重きをおいている。 地域 近畿
マルタ産:何故か機械化しているヴァレンティヌス。無駄のない動きで対象の人間を昏睡状態に陥れる。
地域 中四国
ポーランド産:情報が最も少ないヴァレンティヌス。しかし、今日だけで2398個のチョコレート・手紙が消えたとの報告があり、存在は確実とされる。
地域 九州
「では各自、どう確保するか意見を出すように。」
「無理ですよ。こんなの捕まえられるわけがないでしょ!」
「しかしねぇ…何もしないというのでは国家の威信に関わる事だし…」
「下手に刺激して暴れ出したらそれこそ止められませんよ!」
「ふん、東北は弱気なやっちゃなぁ!ええで、うちらが取り敢えず一匹捕まえて来たるわ!ほな、こっちで作戦立ててやらせてもらいますんで、失礼します。」
「はぁ、しょうがない。近畿を抜いて作戦会議を続行する。」
2月14日 (火) 12:41
岡山県 某自称進学校
「ねえ竹井君、ちょっと付いてきてくれない?」
「ん、どしたの?」
「いいから!」
同時刻、上空982m
「フラグを感知…対象の監視レベルを20倍に増幅…」
「どうしたんだよ、こんなとこに呼び出して。」
「あ、あのね…」
「対象を確認、降下開始…」
「こ、これ!受け取ってくだs」
「ちょっと待ったー!」
「明美!抜け駆けは許さないわよ!」
「竹井くんに私達の中で誰が一番魅力的か選んでもらうのよ!」
「おいおいどうしたんだよ、そんな大勢で。」
「対象の増加を確認、掃討モードへ移行…」
「「「「竹井君、受け取ってくd」」」」
バババババババババババババババババババババ
「こ、殺したのか…?お前…」
「目標の排除を確認、帰投スル。」
ヒューン
「いや、息はある…麻酔弾か?許せねえ…この学校は、俺が守る!」
2月14日 (火) 12:56
大阪府 自衛隊八尾駐屯地
「ええか!うちの見立てでは、ヴァレンティヌスの目的はリア充の殲滅や!そこで、ここの自衛隊員の中から、特にイチャイチャしてる男女20組を集めてもらった!今からチョコレート交換パーティを行う!ヴァレンティヌスが来たら、CH47-J輸送機からパラシュートでA班が降下!空中で確保を試みる!失敗した場合、B班地上部隊の一斉鎮圧射撃や!
銃には催涙弾が込められてる!ガスマスクの装着を忘れるなよ!ヴァレンティヌスが怯んだところで、U680-A多用途支援機が網を投下する!作戦確認いいか!?」
サーイエッサー!!!
「チョコレート交換パーティ、はじめ!!」
イチャイチャ…イチャイチャイチャ…イ…チャイ…チャ…
「うわっ、胸焼けしそうや。おえぇ」
「ヴァレンティヌスが来ました!」
ゔがぁぁぁぁ!!!
「うわっグロすぎやろ。こんなんトラウマなるわ!」
「A班、いいな。訓練の成果を見せるときだ。」
「任してくださいよ、隊長!」
「よし、降下開始!」
次々飛び降りるA班隊員たち。そのうち一人がヴァレンティヌスの肩に組み付くことに成功した。しかし、ヴァレンティヌスの首がありえない方向に曲がり、隊員に噛み付いた。
「なんやアイツ、ゾンビ映画やんけ…」
そして再び捕獲するチャンスは訪れず、A班はパラシュートの展開を余儀なくされる。
ヴァレンティヌスはそのまま回転しつつ着地。粉塵を巻き上げてパーティに乱入する。
恐怖で足がすくんでいる女性に対して、ヴァレンティヌスは己の右腕を引きちぎり殴りかかる。
「B班、はよ撃たんかい!」
「着地の衝撃で巻き上がった砂で、狙いを定められません!」
「数撃ちゃ当たる!撃て!」
B班の制圧射撃が開始された。巻き上げられた砂に加え、
催涙ガスが巻き起こり何も見えない。
「C班、網の投下や。」
「了解!な、何だ!?」
「司令!あれをご覧ください!」
ヴァレンティヌスは既にそこにいなかった。高く飛び上がり、U680-A多用途支援機に組み付いていたのだ。U680-Aの乗員を蹴落とすヴァレンティヌス。落とされた者たちはパラシュートを開くことには成功したが、捕獲は絶望的であった。しかしその直後、U680-Aが爆散した。
「何や、何があったんや!?」
「え、A班の隊長が…」
「まさか、あの馬鹿!」
煙が晴れ、気絶したヴァレンティヌスが落ちてくる。CH47-J輸送機に乗ったA班の隊長が、U680-A多用途支援機に特攻したのだ。ヴァレンティヌスはそのまま捕獲されたが、
隊長は重症を負った。
反バレンタイン協会
「ぐふぅ!や、やりおるのう…」
「どどどっどどどどうしよう!近畿のリア充を破滅できなくなっちゃったよ!」
「これだから自衛隊はwwwデュフ」
「じゃがわしはまだ6人おる。大丈夫じゃ…」
「……ちっ」
2月14日 (火) 13:22
東京都 ヴァレンティヌス対策本部
「本当に捕らえるとはな…」
「確保したヴァレンティヌスですが、普通の遺体と何ら変わりなかったとのことです。」
「どこかから未知のエネルギーを供給することで動いていたものと思われます。」
「結局裏に何が潜んでいるのかも謎のまま。」
「催涙ガスも効かなかったようですな。」
「物理的な確保だけが奴を止める手段か…」
「しかし、CH47-Jで突っ込んでも遺体に破損が見られないなら、もっと大規模な攻勢に出てもいいのでは?」
「それで破壊してしまったらどうする、国際問題になるぞ。」
「一つ提案なのですが…」
2月14日 (火) 13:56
岡山県 某自称進学校
「体育館裏で4人の女子生徒を眠らせたのは、本当に君じゃない、と?」
「だから何度もそう言ってるでしょ!ヤツがやったんですよ!いまニュースでやってるヴァレンティヌスを見たんです!」
「何のためにうちの高校へ来たというんだ?」
「怒ってるんですよ、きっと。バレンタインにね。
僕が女子に囲まれてたのが原因だと思います。」
「はあ、話にならんな、教室に帰りたまえ。」
「竹井くん、怒られたの?」
「ああ、酷い目にあったよ。」
「かわいそうに…あ、そうだ!これ、あげるわ。」
「チョコ?」
「あ、余ったから。捨てるのも勿体ないし…」
「あぁ…(これ来るよな、絶対来るよな。)」
「でも、もし竹井くんがいいって言うなら…」
「うん…(これだめだろ、逆になんでまだ来ないんだ?)」
「わ、私と付き合っ」
ガシャン!
ヴァレンティヌスが地に降り立ち、銃口の狙いを正確に女子生徒に定めた。
女子生徒の顔が恐怖に引きつり、ヴァレンティヌスが引き金を引こうとしたその刹那、
「撃たせねえよ、これ以上。」
竹井の足蹴りをくらい、麻酔銃が宙を舞う。
「目標に対する障害を確認…排除スル」
「やれるもんならやってみろよ。来い!」
ヴァレンティヌスの胸が開き、大量の小型ミサイルが飛び出す。竹井はかろうじてこれを躱し、後ろの校舎にぽっかりと大穴が空いた。
「殺しはしないんじゃねえのかよ…!」
「今のは避けられることを確信しての攻撃ダ…
死への恐怖を与えることで、障害を排除する為のナ…」
「残念、ヒーローは恐怖など抱かない!お前だって、
心はあるはずだ!話し合えばきっとわかりあえる!」
「気に食わン…コロス!」
反バレンタイン協会
「まずいのう…わしが暴走しておる。」
「あ、あんな奴に時間をかけてる暇ないだろう!
とっとと殺せよ!」
「ありゃ死にそうにないでござるwww
主人公補正かかってるでござるよwww」
「…嫌な予感がする…」
東京都 ヴァレンティヌス対策本部
「大臣、岡山県にヴァレンティヌスが出現した模様です。」
「よし、中四国の担当者は先程立案した作戦を試みろ。」
「了解しました。」
2月14日 (火) 14:12
岡山県 某自称進学校
「貴様は既に満身創痍…諦めたらドウダ…?」
「俺は諦めない!俺を信じてくれる仲間がいるから!」
「ずっと思ってたんじゃけどさ、お前さんヤバイよ。」
「な、何だ!?話し方が変わった!?」
「わしじゃよわし。オリジナルヴァレンティヌスじゃ。
直接会いにいくのは面倒じゃからの、
こういう形を取らせてもらった。」
「お前が親玉ってわけか…!目的は何だ!」
「それじゃよ。その態度。
自分のことを救世主か何かと勘違いしてるんじゃないか?」
「勘違い?違うな!俺はこの学校を救うものだ!」
「うわ、マジじゃんこいつ。わし、ドン引き。」
「何だと…!(所詮は老いぼれ、今攻撃したら倒せるんじゃないか…?)」
「もう付き合ってられんわい。この体はマルタ産のわしに返すとしよう。」
「隙あり!」
竹井がヴァレンティヌスの顔に右ストレートを放った。
兵庫県 反バレンタイン協会
「ぐぶはっ!何じゃこいつ、いきなり!?」
「本当にしゅ、主人公みたいなやつだ!
僕らが最も忌むべき存在!」
「…こいつは俺が直々に始末する…杖を寄越せ…」
「デュフwww佐藤氏www漢でござるなwww」
2月14日 (火) 14:34
岡山県 某自称進学校
「エネルギーの発信元は特定できたか?」
「データとしては取れました。あとは解析するだけです。」
「十分だ。一人で戦っている彼に助太刀しに向かうぞ。」
「彼は何者なんだ、全く。」
「ヴァレンティヌスの全ての武装を使い切らせ、今なお肉弾戦を繰り広げています。」
「最近の若者は怖いな。」
「グギギ…マダ、タタカエル…」
「こっちだって…まだまだぁ…!」
「君!我々は自衛隊だ、助太刀に来たぞ!」
「下がってて、下さい…!自分の限界に、挑戦したいんです!」
「馬鹿なことはよせ!死んでしまう!」
杖を持った中年の男が車から降りる。
「…俺の人生は何だったんだろうか…
俺は小さい頃から自分は特別だと言われて育ってきた…
だから、学校で虐められても、馬鹿にされても、
その考えは変わらなかった…」
男は学校に向かって歩く。
「…だが、もうわかっている…
俺は平凡で、取り柄のない厨二病だ…」
壊れた校舎の裏から、男は校内に足を踏み入れる。
「…特別じゃないなら、特別になればいい…」
男は、殴り合っているヴァレンティヌスと竹井を見つける。
「…お前は、昔の俺と何が違うんだ…?」
男は杖に仕掛けられたスイッチに手をかける。
「…なんで俺は、ああいう風に…」
男は走り出す。
「なれなかったんだぁぁぁぁぁ!!!」
「ナンダ!?」
最も早く男に気づいたのはヴァレンティヌスだった。
彼は7人いるヴァレンティヌスの中でも、
心を持たないマシーンとして蘇った異端者だ。
しかし彼は竹井との戦闘の中で「心」を理解し始めていた。
………故に、彼が竹井を庇ったとしても、それは不思議なことではない。
「ヴァレンティヌス!何故俺を庇った!」
「ワカラナイ…デモ、イマハイイキモチダ…
オマエニアエテ、ヨカッタ…」
「ヴァレンティヌス!ヴァレンティヌスぅぅぅぅぅぅ!!!」
2月14日 (火) 15:32
東京都 ヴァレンティヌス対策本部
「これで近畿・中四国の二人のヴァレンティヌスの無力化に成功したことになる。」
「しかし、エネルギー発信源の特定には少し時間がかかるとの事です。」
「例の少年の話では、ヴァレンティヌスの親玉のオリジナルヴァレンティヌスがいるとか…」
「おそらくそいつが各ヴァレンティヌスにエネルギーを供給しているんだろうな。」
「自爆特攻してきた男もいたんだろ?」
「はい。協力者がまだ居る可能性も高いと思われます。」
「では、我々警視庁はその線から探ってみましょう。」
2月14日 (火) 16:02
愛知県 某小学校
「はい、皆さんさようなら。」
さようなら〜
「あれ、雪乃さんは帰らないのかな?」
「先生、これ…受け取ってくだs」
パリィィィィン
「教師と生徒の間の恋愛は色々ダメだ!」
「な、何だ君は!」
「悪は絶対許さない!ヴァレンティヌス、参上!」
「喋りながら聖書を投げるな!キリスト教徒じゃないのか!?」
「先生…私、怖い!」
「安心しろ、僕が守るから!って十字架!?投げるものじゃないぞ!」
「うるさい!主は多分許してくださる!」
「待てよ!そもそも僕はチョコを受け取るつもりはないんだ!」
「へ?」
「当たり前だろ!?そんなリスクのあることできるかよ!
もし他の教師や教育委員会にでも知られて、変に思われたら困る!俺はロリコンじゃないんだ!」
「先生…酷い!」
「あ、そう。じゃあ帰るわ。」
パリィィィィン
「何で入ってくるときに破った窓と別の窓を割って出ていくんだ…!」
2月14日 (火) 16:31
群馬県 某中学校
「好きです!付き合って下さい!」
「ぼ、僕なんかで良ければ…」
ヒャハハハハハ!
笑い声を響かせ、柱の裏からいじめっ子が二人出てきた。
「ば〜か、お前みたいな陰キャがこいつと付き合えるわけ無いだろ!」
「だ、騙したな!」
「罰ゲームよ罰ゲーム。そうじゃなきゃ、あんたに話しかけるわけ無いでしょ。」
「でさ、今の録画してたんだよね。
バラされたくなかったら、金。寄越せよ!」
いじめっ子は二人がかりで男の子に暴力をふるい始めた。
「や、やめてよ…」
バキィ!
直後、いじめっ子は宙を舞い、三回転して落下した。
やったぜ、ヴァレンティヌスだ。
ヴァレンティヌスは別のいじめっ子の頭を掴むと、
建物に向かって放り投げた。
苦悶に叫ぶいじめっ子。ちょっとやりすぎじゃね。
更にヴァレンティヌスは実行犯の女子の足を掴んで、
地面に叩きつけた。
声にならない悲鳴を上げる女子生徒。
やりすぎだよ、やっぱ。
「大丈夫かい、boy?」
「あ、あああ…」
「ああ、彼らのことか。大丈夫さ、つい力みすぎたけど生きてる。」
「ぎゃああああああ!!!」
逃げていくいじめられっ子。
「怖がらせちまったかな、失敗失敗。」
2月14日 (火) 17:03
東京 ヴァレンティヌス対策本部
「大変です!重症者が複数人出ました!」
「なんだと!?どのヴァレンティヌスだ!」
「それが…ここの、関東のヴァレンティヌスです。」
「まずいんじゃないのか?」
「関東圏にいる全ての人間にヴァレンティヌス警報を発令する。」
「正気か!?経済活動が停滞してしまうぞ!」
「しねえだろ。」
「四の五の言ってられん。関東圏の自衛隊は捕獲作戦Cを敢行しろ。」
「了解!」
2月14日 (火) 17:57
千葉県 峯岡山分屯基地
「いいか?お前たちは関東の意地を見せなければならない。自衛隊不要などとアホらしいことを喚く連中に分からせてやれ!」
「ヴァレンティヌスは誘いに乗りますかね?」
「乗るとも。所詮は脳筋のゴリr」
グシャッ
直前まで得意満面で喋っていた司令官は一瞬のうちに気を失った。
このヴァレンティヌス、非常に好戦的だったのだ。
「ば、化け物め!!総員、撃てぇ!!」
弾丸が直撃するが、ヴァレンティヌスはピクリともせず不敵に笑っている。
ミイラ化した彼の体は、穴だらけになろうが変わらずそこにたち続けていた。
そして射撃が終わったのを確認すると、彼は腕を振るいながら突っ込んできた。
薙ぎ払われる自衛隊員、戦車、装甲車たち。もはや人類に彼を止められるものなど存在しなかった。…かと思われた。
パシッ
「俺の攻撃を、片手で受け止めた!?何者だ…?」
そこに立っていたのは霊長類最強の女、吉田沙保里。ありとあらゆる生命体をタックルのみで破壊した、5km離れた狙撃に気づいて止めた、韓国での通称が「絶望」など、
彼女についての逸話は枚挙にいとまがない。
「面白い、俺とさしでやり合おうってのか!」
「その必要はないわ。あなたはもう既に死んでいる。」
「はっ!そうだろうな。もう死んでるんだから。
俺はヴァレンティヌス、だか…ら……な」
ドサリと地面に倒れ込むヴァレンティヌス。その背中に吉田沙保里が声をかける。
「あなたの攻撃を止める前に、既に私はタックルを仕掛けていた…そしてあなたが動きを止めた時、私のタックルから
放たれたエネルギーは、あなたの体内で暴発する…」
沈みゆく夕日が、地に倒れたヴァレンティヌスを赤黒く照らしていた…
2月14日 (火) 18:23
兵庫県 反バレンタイン協会
「はあ、はあ…何なんじゃ、あの女は!」
「か、彼女の存在を忘れてた!みんなあいつに倒されちゃうよ!!」
「多分大丈夫でござるwww彼女が出てきたのは死者が出たからwww普段は面倒ごとに首を突っ込まないでござるwww
それよりも…!」
そう言いながら、神永は部屋のモニターを指さした。そこには、複数のパトカーが彼らの居る建物に向かっている様子が映っていた。
「わ、わわわわ!どうしよう!」
「なんじゃ、警察か!?わしのエネルギーを逆探知されたか!」
「松崎氏、これを託すでござる。拙者は今日一日だけでもなんとかヴァレンティヌス様をお守りするでござる!」
そういうと神永は、建物の起爆スイッチを松崎に手渡した。
「さよならは、言わないでござるよ。」
「僕は言うよ。もう覚悟を決めた。
佐藤君だってやったんだ。さよなら。」
「松崎氏…すまないでござる!」
そう言うと、ヴァレンティヌスと神永は隠し通路で外へと逃げ出した。
2月14日 (火) 18:41
兵庫県 反バレンタイン協会 付近
「解析の結果で出たのはこの建物ですね。」
「ボロいビルか?いや、なにか書いてあるな。反バレ…?半グレみたいなものか?」
「も、もしかして反バレンタインの略なんじゃ…」
「そんな馬鹿なことないだろ。」
「ですよねー」
「まあいい、こちら警視庁特殊部隊、突入します!」
「A部隊、B部隊は正面、C部隊は裏から、D部隊はヘリで
屋上から行け!」
一斉に中へと入っていく特殊部隊。最も早く異変に気づいたのはC部隊だった。
「た、隊長、死体です!それも大量の!」
「なに!?」
「いや、違う…?みんな同じ顔です。クローンみたいなものかもしれません。」
「そんなものが、こんな場所で作れるものなのか?」
「!?動き出しました!こいつ、やめろ!うわーーー!」
「ヴァレンティヌス様を生み出した時にできた失敗作たちが、こんなところで役立つなんて。神永君はすごいな。」
「その話、署で詳しく聞かせてもらおうか。」
「随分早かったね、まさかヘリまで持ち出してくるとは思わなかったよ。でもいいの?君の仲間たちは下で随分酷い目にあってるみたいだけど。」
「俺たちの役目は、お前を捕らえることだ。来い!」
「ちょっと待った。ここにこの建物の起爆スイッチがある。今すぐ押してもいいんだよ。」
「…何が目的だ。」
「爆弾だと!?A,B,C部隊はすぐに戻れ!…頼むぞ、説得してくれよ。(無線)」
「別に、ちょっと昔話に付き合ってもらいたいだけだよ。」
「仲間を逃がすための時間稼ぎか?
お前の仲間なら既に捕まえた。無駄なことはよせ。」
「ふふふ、嘘が下手だね。…僕はさ、昔から吃音だったんだ。今みたいにしっかり喋れることなんか、滅多に無い。
父さんも母さんも僕より弟の方を可愛がってた。人に認めてもらえるっていうことは、あたり前のことじゃないんだ。」
「…そうか。しかし、それがこの騒ぎとどう関係しているんだ?」
「そう急かさないでよ。彼らと出会ったのは大学生の時だった。友達なんて出来たことない僕に、あの二人は同じものを見出したみたいだった。」
「それが、神永と佐藤か。」
「もう調べられてたか。
そうだよ。佐藤君はもうこの世にいないけどね。」
「岡山の自爆の件だな。」
「佐藤君の気持ちはよく分かる。僕らみたいな弱者は死に場所を探して今まで生きてきたんだ。彼らと過ごした日々だけが、僕が人間であったことの証明になる。」
「…なぜ、こんなことを。」
「内容なんてどうでも良かった。3人で一緒に何かをしているだけで楽しかった。
…動機? 弱者たちに夢を見せたかった。かな。」
「そうか…スイッチを渡してくれ、君はまだやり直せる。
安心しろ、そう重い罪にはなるまいよ。」
「嘘が下手だ。でも、スイッチは渡すよ。」
「協力に感謝する。では、ご同行願おう。」
「よし、よくやった。すぐに署へ戻れ。(無線)」
「そうだ、一つ謝らないといけない事があるんだ。」
「何だ?」
「そのスイッチ、時限式なんだよ。押してから5分丁度で爆発する。」
「まさか…!」
「ごめんね、もう遅いんだ。」
2月14日 (火) 19:00
7時のニュースです。今世間を騒がせているバレンタイン事件に大きな動きがありました。兵庫県の田中さんと中継が繋がっています。田中さん、何があったんでしょうか?
「こちら田中です。これを見て下さい、ひどい状況です。
爆弾のようなもので建物を破壊したと見られており、少なくとも二人の死者が出ていることが分かっています。
警視庁は、ヴァレンティヌス関連の事件だとしており、
詳細は不明です。」
田中さん、ありがとうございました。続いて、全国で起こっているヴァレンティヌス事件についてです…
2月14日 (火) 19:22
北海道 某高級レストラン
「君の瞳に乾杯。」
「もう、ダーリンったら…♡」
「い、いい雰囲気の店だろ?君にぴったりだ。」
「うれしいわ、あたしなんかのために…」
「どう?私が予約したこの店は。」
「お前といればどこでもそこが世界一さ。」
日本人は危機管理能力がなってない。ヴァレンティヌスがカップルばかり狙っていることぐらい、少し調べれば分かることだ。それなのにこんなにイチャイチャしやがって。
店も店だよ。閉めろよ。建物ごと消されるぞ。
ぎゅおぉぉぉぉん ビィィィィム
ほら、言わんこっちゃない。
2月14日 (火) 19:31
兵庫県 山奥の隠れ家
「こ、ここまで逃げれば当分は大丈夫でござろうwww」
「いや、わしがエネルギーを遺体たちに送り続けている以上、探知は避けられまい…」
「デュフwwwまだ秘密兵器があるでござるwww」
神永はそう言い放つと、モニターを付けた。そこには、日本各地の軍事施設の位置と、ミサイルの画像が写っていた。
「な、なんじゃこれは!?」
「今日の12時に打ち上げるミサイルでござるwww
全国の軍用施設や議事堂を照準に捉えているでござるwww」
「お主、まさか最初から皆殺しにするつもりだったと言うのか!?」
「デュフwwwそのとおりwww
あなたは所詮カモフラージュに過ぎないのでござるwww
…とはいえ、思った以上に役に立った。てめえには変わらず遺体どもにエネルギーを送り続けてもらうぜ。」
「その口調が素か。わしらを騙したな…!」
「わしら…?ああ、佐藤と松永か。あいつらみたいなコンプレックスの塊は操りやすいんでなあ!」
「ゲス野郎め…!」
「おっと動くなよ。あんたは今、俺の部下である戦闘ロボットたちに監視されてる。ミサイルをぶち込んだらこいつらを使って日本を支配し、理想的な国家にしてやる!」
「ああ…陰謀論者じゃったな、お主。」
「陰謀?違うな、これは既に現実だ!」
2月14日 (火) 19:36
東京 ヴァレンティヌス対策本部
「捕獲していたヴァレンティヌスが、動き出しました!」
「何!?鎮静剤を打ってみろ!」
「いえ、それが…何か伝えたいようです。」
2月14日 (火) 19:38
東京 タワマン
ドンドンドン!
「あら、注文したダンベルが届いたのかしら。」
バコン!
「吉田沙保里!いるか!?話があってきた!」
「…私の攻撃を食らって生きていたとはね。
やるじゃない、ヴァレンティヌス。」
2月14日 (火) 19:42
岡山県 民家
コンコン
「なんだ?」
「タケイ…アケテクレ、タノミガアル!」
「ヴァレンティヌス!?生きてたのか!」
2月14日 (火) 22:19
兵庫県 緊急国防本部
ヴァレンティヌス(オリジナル)は力を振り絞り、
死したヴァレンティヌス達を再起させ、防衛省にミサイルのことを伝えた。
そして今、かつて(というより一時間くらい前まで)は敵同士だった者たちが一同に介し、神永を止めようとしている。
「皆さん、よく集まってくださいました。
防衛大臣の相澤です。」
「御託はいいわ、作戦を伝えて。」
「まず、ヴァレンティヌス達に攻撃をしてもらいます。
しかし、ミサイルを爆発させてはいけません。
彼らに破壊してもらうのは戦闘ロボットたちです。戦闘ロボットを殲滅したあとは、自衛隊+吉田さんで突入、
神永を確保します。」
「あの、俺は何をしたら…」
「ああ、竹井くんはヴァレンティヌスの強い推薦があったから来てもらっただけさ。事が済むまでここで待機してくれればいい。」
「いや、俺も行きます。ヴァレンティヌスが信じてくれた俺を、信じたい!」
「えぇ…」
「いい目ね。大丈夫よ、私が守ってあげるわ。」
2月14日 (火) 22:50
兵庫県 山奥の隠れ家
「はぁ、はぁ、流石にキツイのう。」
「頑張れよ、12時までは耐えてもらわないと困る。」
「悪党め…(ポーランド産のわしよ、聞こえるか?
いつでもいい、早く始めるのじゃ。)」
暗闇の中で、ロボットが一体ずつ音もなく破壊されていく。
俊足のヴァレンティヌスだ。異変に感づいたロボットたちは警報を発令。応戦を開始した。
しかし、そこに残りのヴァレンティヌス達が攻撃を始めた。響き渡る轟音。炎に包まれる山々。
「何だ!?戦闘ロボット、状況を報告しろ!」
「無駄じゃよ…7人のわしに勝てるものか!」
「俺に作られた紛い物の癖に…やりやがったな!
ぶっ殺してやる!」
「殺すがいい。お前さんのようなやつに手を貸してしまったわしは、キリスト教徒失格じゃ。
地獄で罪を償ってくるとしよう。」
「ああ殺すさ。お前も馬鹿だな!オリジナルが死ねば
エネルギー供給も止まり、ヴァレンティヌス共は停止する!
俺の勝ちだ!」
神永は拳銃を取り出し、ヴァレンティヌスの額に二発の弾をぶち込んだ。倒れ込むヴァレンティヌス。
血溜まりを尻目に、神永はロボットの指揮を執りはじめた。
2月14日 (火) 23:01
「エネルギーが止まったな…?」
「オリジナルガヤラレタンダロウ」
「んじゃ、とっとと片付けねえとなあ!」
「伝令です!オリジナルヴァレンティヌスが死亡、
エネルギーが尽きる前に突撃してほしいとのことです!」
「出番ね。行くわよ、竹井くん。」
「はい!」
「自衛隊も全部隊投入しろ。ミサイルを発射させるな!」
2月14日 (火) 23:25
自衛隊とヴァレンティヌスの攻撃で、半分近い戦闘ロボットが破壊された。しかし、ヴァレンティヌスのエネルギーが減るにつれ、攻勢を保つことが厳しくなっていった。
「ちっ、国家の犬どもめ。発射時間を早めるとしよう。」
神永がPCをいじりはじめたその時、吉田沙保里がドアを
蹴破って入ってきた。後ろには竹井も控えている。
「お縄につきなさい。あの程度で私を止められるとでも?」
「…早かったな。だが!」
神永が吉田沙保里に向けて銃弾を撃つ。
しかし、彼女は首を振るだけで弾を回避した。
「う、噂に違わぬ強さだな!
しかし、そのガキを連れてきたのが命取りになる!」
吉田沙保里が振り返る。そこには戦闘ロボットに捕縛された竹井が銃を突きつけられていた。
「くそっ、俺のせいで!
俺のことは無視して、そいつを捕まえて下さい!」
吉田沙保里は無言で両手を上げ、膝をついた。
「ははははは!やはり主人公気取りだな、竹井!
こいつがそんな事出来るわけ無いだろうが!」
「神永…!」
2月14日 (火) 23:37
ヴァレンティヌス達はもう起き上がる力すら残っていなかった。無理もない、ただでさえエネルギーが少ないのに、
自衛隊を庇ってロボットの攻撃を受け続けてきたのだ。
自衛隊も、人質として二人が捕らえられているため、手出しができない。
「お前たち、しっかりするんじゃ!」
戦場に、死んだはずのオリジナルヴァレンティヌスの声が響く。
「わし、死んだみたいじゃ。じゃがの、こうして声を届けられる所をみると、何かミスったようじゃのう?神永。」
「想定内だ。大量の人間の魂を取り込んで作ったのがお前だ。超人的な力を遺体共に分け与え、俺に撃たれても、ある程度は残っているだろうと思っていた。」
「なんじゃ、つまらんのう。」
「声だけじゃなにも出来ないだろう?発射は15分早めた。
何も出来ない無力を呪うがいい!」
「お主は勘違いしておる。」
「なんだと?」
「声とて、エネルギーじゃ。マルタ産のヴァレンティヌスが心に目覚めたのは、竹井の声が届いたからじゃろう?」
「…詭弁だ。」
「詭弁かどうか試してみるか?」
眩い光がオリジナルヴァレンティヌスから飛び出し、あたりを照らした。光は7つに別れ、それぞれの遺体に飛び込む。
「これがわしの遺体たちに贈る最後の言葉じゃ。わしはお主たちの中で永遠に生き続ける、正しいと思ったことをやれ。わしのようには…なるな、よ」
目に力強い光を蓄え、ヴァレンティヌス達は立ち上がる。
2月14日 (火) 23:42
ヴァレンティヌスたちの活躍は凄まじかった。これが自分たちの最後の仕事だというように、ロボットを蹴散らしていく。
「吉田沙保里ぃ!助けに来たぞ!!」
「タケイ!ダイジョウブカ!」
マルタ産とフランス産のヴァレンティヌスは、人質となっていた二人の救出に成功。自衛隊も再び動けるようになった。発射までのタイムリミットは3分。
7ヴァレンティヌスもいれば十分すぎる時間…
ごごごごごごごごごごごごごごごごご
「地面が揺れている!」
「まさか、神永!」
「おっとっと〜間違えて少し早めに発射するようになっていたようだな!全員まとめて、地獄へ道連れだぁ!」
巨大なミサイルが山肌からいくつも顔を出す。
「ブースター点火!この国を…焼き尽くせ!」
ミサイルが空へと舞い上がっていく。ヴァレンティヌス達は、互いに頷き合って後を追うように飛び上がった。
「待ってくれよヴァレンティヌス!こんなのあんまりだ!」
竹井が叫ぶ。
「…ゴメン」
その声は小さかったが、確かに竹井の心に届いた。
泣き崩れる竹井の肩にそっと吉田沙保里が手を置く。
「あいつらの思う、正しいことをしに行ったのよ。
私達にできるのは、彼らを信じることだけ。
信じよう、ヴァレンティヌスを。」
2月14日 (火) 23:45
日本各地に飛んでいくミサイルに、ヴァレンティヌス達は組み付いた。それぞれ、自分の今日を思い起こしながら。
彼らのしたことは紛れもなく悪行だろう。
しかしその夜、日本各地で目撃された美しい光を生み出したのも、また彼らなのだ。
真実を知るものは少ないし、
そもそも存在したかも不明なヴァレンティヌスだが、
確かに世界中の人の心の中で彼は生き続けている。
2月14日。全ての人々へ、ハッピーバレンタイン。