順番が違う
このコロナの中で、着付け教室も稽古は滞っているでしょうが…
以前大手着付け教室の無料教室のご案内を見ていて、なんだこれ。と思ったことがあります。着物の着方を習い、結ぶ帯は袋帯。袋帯とは主に礼装に使う、華やかで美しい、格式の高い帯です。無料で習えるのが袋帯の結び方だけ。どうしてこれなのか、というと。理由は簡単。
礼装用の着物と帯は高価だから。
着物を着るなら、やはり礼装ですよね。無料で教えます、着物も貸してあげます。ほら、着られるようになりましたね。ご自分でも持っていないとね。こちらでいいのがあるんですよ。ローンだったら無理なく買えます。着物の寿命は長いから、お子さんにも渡せますよ。何十年も使えると思うと、本当にお得。
こんなことするから、着付けを習ったのにその後着物から遠ざかる人が続出するのです。
だいたい礼装や式典に着る着物と帯って着付けの最上級編なのです。着付ける立場からしてもそう。その中でもとりわけ、こういった場で勧められそうな、淡い綺麗な色の着物と上品な袋帯って最難関。黒留袖や振袖よりやっかいなところがあります。色の薄い着物って着付けの上手い下手がもろに出ます。シンプルな二重太鼓という結び方は、なにがきれいなのか一発でわかる。そんな着物を初心者が自分できれいに着られるわけがないのです。そもそも扱いにくい。着物は、つるつるしてすべるし、帯は長くて重い。
たとえば、自転車に乗れなくて、乗ってみたいと思ったとします。お得な教室にいってみたら、教えてくれたのは競技用自転車。とってもかっこいいけどバランスをとるのも大変だったりします。でも、無料でとっても親切に教えてくれました。なんとか乗れるようになり、自転車を買うように勧められました。オーダーメイドの競技用自転車。とてもステキです。嬉しくなってローンを組んで手に入れました。しかし・・・。乗りません。乗るの難しいし、手入れも大変だし、高かったので緊張します。もういいや、自転車。ほんとうは、あなたはママチャリでよかったのです。お手頃で使いやすくて、相棒になってくれる。そんな自転車があったのに。競技用で痛い目にあったあなたはもう自転車にのろうとは思いません。
でもそんな自転車教室しかなかったら、気付かない。
きものは、纏うもの。衣食住の、衣。そんなに構えなくてもお金を使わなくても身近にあるはずのもの。きものを着たいと思う人たちに、そんな入口を用意しないで、楽しく気楽に入れる場所を、作りましょう。
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