YouTube大学、「安いニッポン」を見て思うこと・5
さて、話を木村さんに戻す。
伊さんの発言で、もしや、と思った通り、やはり彼女も、来日時は、どこかのバーで働いていたらしかった。
つまり、伊さんと木村さんは、福岡の、中国人ネットワーク(というものが、あるかどうかは定かではないけれど)の仲間内であったらしい。
それを確信したのは、ある日曜のこと。
くつろいでいるところに、アパートのインターフォンがなった。
受話器を取ると、そこには、とある政党の、使いだという人が立っている。
「お子さんの、ご入学のお祝い金をお持ちしました。」
びっくりして、受話器を落としそうになった。
こちらは、間借りしている立場なので、「今、彼女は出掛けています」と言って、急いで彼女に連絡を取ると、「今度来たら、受け取っておいて」と言う。
「木村さん、子供がいるの?知らなかった」と言うと、
お客さんとの間に子供が出来て、結婚して、その後別れて、子供は、中国のご両親のところに送って、彼らが育てていると、告白した。
だから、今は日本人に帰化して、この公団も借りて・・・ちょっと待って!
もしかして彼女、日本にまだ子供がいることにして、補助金とか貰ってたりする??そして、お祝い金も!?
開いた口が塞がらなかった。
ある意味、あっぱれだと思った。
彼女が、どんな経緯で来日し、今に至るかはわからない。
けれど、少なくとも彼女は、私や身の回りの女友達より、よっぽどたくましくてしたたかで、賢い人間なのだと思わざるを得なかった。
なぜならその後、地元では、最も難易度の高い大学で勉強し、その後、アパートは知人に任せて、1人、アメリカまで旅立ったのだから。
彼女の生き様が、好ましいかどうか。
それには、賛否両論あるだろう。
祖父母に託された、子供は?
私だったら、確実にグレるだろう。
でも彼女は、貪欲なのだ。どこまでも。
子供が出来たのが、目論見だったのか、私にはわからない。
けれど、その子をきっかけに、彼女は次々と望みを叶え、私が、あれだけ行きたいと願った、アメリカへの切符をさっさと手にして、旅立っていったのだ。
私は彼女にはなれないし、生き方も違う。
けれど、彼女のやっていることを、非難する権利もない。
皆、それぞれの立場で、精一杯生きている。
そして彼女は自分の欲望に対して、ただ正直な、ただそれだけだ。
私もその後、悩みに悩み、夢は一旦諦めて、次なる一歩を歩む為、日本を後にした。
アメリカではなく、その隣国の、途上国、メキシコにきっかけを得て。
(続く)