自分のいるところが世界の中心
今日は、地元の観光協会から紹介された、元ブラジル在住の男性に会いに出掛けた。
正直期待ゼロ。
田舎に住む、元ブラジル在住の男の人って??
そもそも「おじさん」が苦手な私が、それでも会いに行ったのは、単に好奇心があったから。
アメリカ帰りやヨーロッパ帰りはたくさんいるけれど、ブラジル?
私は元メキシコ在住だが、同じ中南米の括りで、しかもブラジルは、メキシコよりディープ、かつ面白いと言われている国。
で、指定された場所に行ってみると、そこに待ち受けていたのは、予想通りの「元海外にいたっぽい、気の良さそうなおじさま」だった。
「戻ってきて、今6年目かな?」と年の功、70くらいの彼。
「やっと慣れてきたけど、日本にいるというのに、奥さんがどこに行ってもバックを離そうとしないんだよ」と言うので、私も自分のバッグを指差して笑った。(自分のすぐ傍に置き、盗られないようにするのは、後進国在住者のお約束)
ちなみに、最初に彼が渡ったのはアメリカだそうで、70年代(!)のカリフォルニアに10年。オープンしたハンバーガー屋が当たって、その後、日本に戻るつもりが、友人に唆されて、ちょっと立ち寄ったはずのブラジルに40数年もいたというから驚きだ。
「よく、国に騙されて移民してきて、死ぬ程苦労した、なんて話を聞くでしょう?あれは、一部本当だけど、中にはもちろんうまく行った人も、たくさんいるんですよ」と彼。
どの時代にも、世間を煽るメディアがあったのだろう。
それを聞いて、ちょっとほっとする。
その後は、日本の経済に話題が移る。
彼曰く、これだけインフラが整った国は日本だけだろう、と。
これには私も深く同意した。二人とも、インフラの整わない後進国で生活してきたので、この大切さは身に染みてわかっている。
ー治安の問題。(強盗、ひったくり、マフィアの抗争、街中での打ち合い)ー雨が降るたび氾濫する下水
ー電圧不安定が原因で頻繁に起きる火災(そしてそれに対する保険などがない)
ーマナーの低さが原因で頻繁に起きる交通事故
ー悪水質ですぐに劣化する衣服に肌
ー災害による停電
ー熱帯気候に蔓延る寄生虫や病原菌 等々。
後進国の問題をあげればキリがない。彼は更にこう続ける。
「アメリカでは月々の健康保険代に、巨額のお金を払い続けなければならない。その点日本は、こんなにも安く病院に通え、しかも安心して受診できるクオリティだ。道は、どんな山奥でもきれいに舗装され、街には、図書館や体育館がある。日本は給料が全く上がらないと揶揄する人もいるけれど、これを全て、自分の財産の一部だと想定してみて下さい。日本は、決して貧しくなんかない。豊かな国なのです。」
なるほど〜!眼から鱗が落ちそうになる。
外から見ていた時の日本は、国力も、円の価値もガタ落ちで、周辺諸国には押され気味、人に覇気はなく、なんとも残念な感じに映っていた。
が、帰国後、辺りを見回してみて、どうだろう?
街には人が闊歩し、食べ歩きを楽しみ、週末には飲み屋の予約は一杯で、女性は、世界一、綺麗に着飾り(メイクに洋服にネイルにバッグに靴。その全ての美しさとコーディネーションに卒倒しそうになる)男性はゴルフに車にテニスにサウナにと、皆楽しそう!
近所に犬用サロンなるものができていたので、見学に行ってみれば、驚くなかれ、そこにいたワン公たちは、人間もびっくりのおめかしぶりで、ラテン国の野獣味を帯びた獰猛さなど、これっぽちもない。(女性ホルモンでも打たれてる??)
海外情勢には疎く、興味さえあまりない、というのが私の、日本人に対する印象なのだが、正直、それでも、真面目に日々働き、節約して余ったお金は貯金に回す人生を送っている人が大半な国、とすれば、メディアで言われているほど、危うくはないような気もする。(もちろん興味があるに越したことはないと思うけど)
「御伽(おとぎ)の国ハポン 」
「奇跡の島」
これは、私が勝手に自国に付けたニックネームだけど、そもそも日本人って手先がダントツに器用だし(折り紙を一緒に折るとすぐわかる)、働き者で従順で、忍耐力も強く、何しろ優れた民族なのだ。
逆の問題点は、自己肯定感が低めなのと、言語能力がアジア1低いこと。
でもこれも、トレーニングでなんとでもなるので、私は是非、周りの子供たちには、どんどん海外に出て経験を積んでほしいと願ってる。
ちなみに、今の私の心境はというと、「もう、ここでいっか!」で、あれほど放浪が止まらなかったのに、そう思えてしまう、自らの内面変化に、自分が一番驚いている。
なぜなら、昔は、東京やアメリカ、NYにLAにヨーロッパにと、キラキラして見える名前(ブランドとも呼ぶ)だけに目がいって、そんなものを追いかけては、外見を飾ることしか考えていなかったから。
別にどこに行こうと自分は自分だし、今、自分がいるところが、世界の中心だよ、と開き直って思えるようになったのが、成長の証か、単に体力が落ちて、面倒臭くなっただけなのかはわからない。
いずれにしても、面白いおじさんに出逢えて、非常に楽しかったのと同時に、自分も、そんな風に歳の重ね方をしたいと思う、晩夏の夜。
取り敢えず、もう少し涼しくなったら、庭の雑草でも、刈るとするか!