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地元でプラプラしてて、お金を使う一方なので、何か簡単なバイトをしようと思った。
ちなみに今、色々な健康診断をしていて、遊んで暮らしている訳ではない。
何かないかと街をパトロールしているところに、インドレストランの広告が目に入った。
「土日アルバイト募集中!」
これ、私やん!
嬉しくなった私は早速、店に入っていった。
出てきたのはオーナーのインド人。
「アルバイトを探していますか?」
私の顔をまじまじと見て、彼は一言。「いえ、探していません」
「あれ?外にポスターがありましたよ」
「いえ、あれはもう終わりです」
腑に落ちないまま、別の外国人に会った。
かれこれ25年も、この町に住んでるという彼女。
曰く、実に1500人以上の外国人が、ここに住んでいると言う。
「皆、国籍ごとに行動して、行くところも限られているし、楽しみといえば、レストランでご飯を食べるくらいです。インドネシア人は、近くのインドレストランに行く人が多いですね。」
「インドレストランですって?!」
外国人客が多いなら、初めっから英語で話せば良かったのだ。
翌日、私は声色を変え、ハイピッチトーンで電話した。
「ヘロ〜、あなたのレストラン、アルバイト募集してますね。私、英語とスペイン語とインドネシア語が話せます。」
電話の向こうのオーナーは、一瞬黙った後、こう聞いた。
「How Old are you?」
うっ、外国人なのに、女性の年齢聞くとは失礼な!
しかし、私は誠実な日本人なのだ。なので正直に答えた。
すると、「無理ですね。」と即却下のオーナー。
「私は若い人を探しているんです。」とも。
ムッとした私は、こう聞き返した。「え?若いっていくつ?」
「25歳から35歳。」
お前は、結婚相談所の回し者か?!?!
それでめげずに言った。
「あのね、私は若者の、2倍賢くて働き者です。あとね、英語とスペイン語とインドネシア語できる人、この町で私だけね。NO PROBLEM!」
勝手に自分の都合を言って、最後にNO PROBLEMで締めるのは、メキシコで学んだ技だ。
だが、相手はインド人。彼も全く負けてはいなかった。
「YES, IT'S A PROBLEM! 私は若い女がいいよ。だからダメ!」
くぅぅぅぅ!!!!!
腹が煮えくり返った私は、その足で友人宅に行って打ち上げた。
うんうんと頷きながら、それでも、彼女はこんなことを言い始めた。
「私ね、以前マネキン紹介所に登録してて。それで色んなところに派遣されるんだけど、ケーキやワインは若い人じゃないとダメって聞いたよ。若い人が売る方が、美味しく見えるんだって。」
「え?!」
「それに引き換えね、日本茶とかお漬物は、年取った人の方がいいんだって。そういうのってあるんだな〜って、私もその時思ったのよ。飲食じゃない別の仕事、ないかな?」
敗北だ・・・
確かにデパートの地下に行っても、いるのは若くて色白で、美しい娘ばかりだ。
すっかりしょぼくれた私は、その晩、一時帰国中の、イギリス在住の友達夫妻にその話を告げた。
「そんなに公然と年齢を聞いたり、年で断るなんて、ありえない!」と憤慨する日本人妻。
まさにそう。公然とは海外ではあり得ない。だけど、ここ、日本なのよねー。
すると、黙って話を聞いていた、イギリス人の旦那がこんなことを話し始めた。
「美味しいケーキや美味しいコーヒーは、誰が持ってきたって美味しい。
若い人が持ってきても、歳を取った人が持ってきても、それは変わらない。本物ってそういうことじゃない?」
その場は一瞬、しんと静まり返った。
彼の言うことは、尤もだし、腑に落ちる。
日本はビジネスに熱心な国だから、商品がより売れるようにと、プロモーションに余念がなく、あれこれ工夫することを私達は知っている。
パッケージも然り、売り子も然り、そこから、飲食の多くは、若い人が就く仕事、という固定観念に、変わっていったのかもしれない。
確かにファーストフードもエアラインも日本では若い人が基本だし、逆に、海外では若きもそうでないものも、一緒になって働いていたりする。
事実がどうであれ、私は彼の言葉がとてもしっくり来たし、その感覚は、この先も変わらないだろう。(例えこの国で、マイノリティであろうとも)
ということは、私はやはりこの国にはフィットもしなければ、海外に留まる方が楽だし合ってる、ということになる。
すごく残念に思う。なぜなら、年齢を重ねて、日本のいいところも見えてきたから。
だけど、どこに住もうが、誰といようが、日々の暮らしの中には何かしらの妥協もあれば、我慢するところもあるから、仕方ないのかなぁ。
そしてふと思う。
この国が”成熟”するのは、いつなんだろう、と。
歳を重ねたこと、経験を積んだことが、正当に評価される日が一刻も早く来ればいいなと願ってる。