究極のトリオ〜ベートーヴェン
今年のお正月はいきなりコロナで幕開けとなり、隔離された部屋の中で1日20時間以上寝続けた。隔離期間が明けて恐る恐る行動開始をしたものの、2時間も動くと疲れて眠くなってしまう。昨日はようやく毎年参拝している神社に初詣に行き、太陽の光を浴びながら出店が並んで賑やかな参道を歩き、お馴染みの神様にお参りすることができて、ようやく調子が戻ってきた。
連休の最終日は2023年最初のコンサートへ。ミューザ川崎でオール・ベートーヴェンプログラムで「究極トリオ」を聴きに行った。前橋汀子さんと藤田真央さんのスプリングソナタに始まり、続いて堤さんとのチェロ・ソナタ第3番。後半はピアノトリオ「大公」というプログラムだった。大ベテランのお二人と共演する真央くんはどんな感じになるのかと、興味津々で音が鳴るのを待っていると、まるでギリシャ神話のアポロンが舞い降りたかのように音楽や楽器を自由に操り、心地の良い「調和」の世界を奏で始めた。ベートーヴェンのヴァイオリンやチェロとピアノのためのソナタはピアノパートが多くを担うため、ピアノソナタ並みにピアニストの存在感が示され、ソリスト同士が丁々発止のやり取りをして盛り上げる場面もある。けれど、今日聞いたアンサンブルはそれにとどまらず、ピアノパートが弦楽トリオやオーケストラのようにも聴こえてきて、私にはとても新しい、デュオの音楽作りだった。
フランスの音楽誌に掲載された真央くんのインタビューを読んだところによれば、今年のヴェルビエではヴァイオリンのマルク・ブシュコフとベートーヴェンのヴァイオリンソナタ全曲演奏が予定されているとのこと。マルクは、ロシアものやバルトーク、それに無伴奏ソナタなんかをヴァイオリンの名手らしくパワフルに弾くイメージだけれど、彼がどのようなベートーヴェンのソナタを目指してくるのか、そして真央くんと創り上げるデュオも興味深い。