日本語のどこが美しいのでしょうか?
こちらも某掲示板に回答した内容を少し改訂してお届けします。
私は、ミュージカルを見るのが好きなのですが、当然ミュージカル作品の中には、翻訳された作品があります。ディズニーの「美女と野獣」、世界一長く切れ目なく続いているロングラン作品「オペラ座の怪人」など、ブロードウェイ作品やロンドン ウエストエンド作品などは、けっこう日本に来ます。この場合、英語歌詞または他の外国語から日本語歌詞への翻訳となります。
言語的な話は、言語学者が優れた回答を用意されると思いますので、素人考えて、2つの点について、なにかの教養になるかもしれないので、少し長くなりますが、ご説明したいと思います。
ヒット作「オペラ座の怪人」の中に、「Music of the Night」という曲があります。大変名曲なので、ぜひ、オリジナルキャストのマイケル・クロフォードさんの英語曲を聴いて、英語の歌詞をちょっと注意してみてください。クロフォードさんは、英国が誇る名優、歌手です。国家的芸術家レベルです。勲章ももらっておられます。
(しかもMCもおもろいのですw)
日本語のほうは、劇団四季公式動画をリンクしますので、日本語歌詞に眼を向けてください。
と思ったら非公開になっていたので、作曲家のアンドリュー・ロイド・ウエーバー男爵のサイトをリンクすることにしました。市村正親氏の怪人をご堪能ください。
この日本語歌詞は、もちろん英語をもとにしていますが、日本が誇る名プロデューサー 劇団四季の故浅利慶太氏が、大変に手をいれて、「日本語の美しさ」を最高に発揮するように演出されたものです。
なにしろ、当時劇団四季はまだ小さい演劇団体だったので、失敗は許されませんし、作品はロイド・ウェバーの名作です。ものすごくものすごく、注意されて最高のものにもっていこうと覚悟されていたと思います。
(余談ですが、劇団名を「四季」と名付けたのがまた、すごいかなと思います。日本の4つの季節の美しさを名前に込められているのかなと思います。Shiki と声に出しても美しい日本語単語ですね。)
英語歌詞の冒頭と日本語歌詞の前半一部をそれぞれ引用します(著作権は、それぞれの作詞家またはカンパニーのものになります)。
Slowly, gently night unfurls its splendour
Grasp it, sense it - tremulous and tender
Turn your face away
from the garish light of day,
turn your thoughts away
from cold, unfeeling light -
and listen to the music of the night
静かに広がる闇 心も胸もときめく
やさしい夜 やすらぎの夜
きらめく夜のひかりを
その手にとらえてごらん
耳をすませて 聞いてみたまえ
やさしい音楽を 夜の調べの中で
英語原詩も美しいですが、もとからわざと外してある部分もありますし、単純に翻訳するなら、サビの部分は「夜の曲を聴いておくれ」でもいいわけです。しかし、あえて、浅利氏は、古語的な用語や響きのいい単語、つながりがいい言葉を選んでいます。
「夜の調べ」「聞いてみたまえ」
しかも、日本語は動詞が最後なのに、あえて動詞を先にして、名詞言葉を後ろにもってきています。(英語で、順番を変えると対象が変わってしまいます。)
この日本語の機微を引き出せると、作品はさらに素晴らしいものになります。
あまり日本のミュージカルは世界では有名ではないですが、感度の高い、また多様性文化受け入れ度の高い外国人からは、「美しい」と絶賛されています。
(私はフランス語も勉強しましたが、フランス語も最高に美しい音がありますが、それに並ぶほど、日本語は美しいかなと思います。言語習得が大変かなとは思いますが、1度わかると深くて便利な言語だと思います。たぶん、脳をたくさん使うと思いますので、頭の特訓にもいいかなと思います。)
ミュージカルを作る側の演出家やプロデューサーでさえ、「日本語版演出を見ると、何万回とみているプロの私でさえ、自然と涙がでてしまう」という方々もいます。
要するに、なにか大変抒情的なのです。この部分は、他の方がおっしゃるように、日本民族・日本文化が優しい、調和的で、やや悲しげな部分があるからかもしれません。複雑な「本音と建前」という精神文化を生み出した、忍耐力やあきらめの気持ちもあるかもしれません。頑張っても頑張ってもだめなときはあるかもしれない。でも、日本に帰れば、美しい海や山が待っているという前向きな気持ちになれるのではないでしょうか。
親日家の一流歌手や音楽家の中には、日本語で歌ってくださる方もいます。どれも素晴らしいのですが、世界的有名なIL DIVOから、「故郷」をリンクしたいと思います。外国の方が歌う、美しい日本語歌詞をお楽しみください。
さて、この抒情的なところがどこから来ているかといいますと、おそらく縄文人の言葉からではないかと思います。
ご承知のように、日本語は漢字、ひらがな、カタカナからできています。そのうち漢字は、字面は中国から教えてもらったものですが、漢字が来る前から、大和言葉で話されており、神代文字という文字もあったらしいのです(偽書という話もありますが、神代文字が石に残っているものもあります)。縄文時代は、およそ1万5千年前からあり、そのどこかで、縄文人だけで独自の文字が作られ、大和言葉が話されていたとしても不思議はありません。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E4%BB%A3%E6%96%87%E5%AD%97
真偽はわかりませんが、この個人のブログのように、文字のようなものがあったといわれています。(もちろん古すぎて、間違いがあるかもしれないです。)
実際、万葉仮名という漢字を使っているが、読み方が大和言葉というケースがありました。「古事記」「日本書記」などはこれで書かれているわけですね。
万葉集の歌をいくつか見て、声に出して読むととても美しいです。
ヤマトタケルが詠んだといわれる歌です。韻を踏んでいてとても美しいです。
「大和は 国のまほろば たたなづく 青垣山ごもれる 大和し美し」
「令和」という元号名にもなりましたが、奈良時代以前の日本の四季やさまざまな自然の美しさ、そして日本の国土の恵みと、おおらかでゆったりした歌を堪能いただけると思います。
この万葉言葉、縄文時代の言語が、日本語の美しさの基本になっているのではないでしょうか。
他の外国語に比べると、ぱきぱきと耳障りでなく、なめらかな音域で、澄んだ音も多いです。
連綿と続く、1万5千年(あのエジプト文明より古いかもしれない。もちろんシュメール文明よりも古い、黄河文明よりもまだ古いという・・・)前から、続く日本語の良さをぜひ、守っていければなあと思います。
若い人は、ネットや友達の間で、わざと変な言葉を使います。変なことをして、承認意欲で目立ちたいのかもしれないですが・・・。
それより、もっと美しく、教養のある日本語を勉強してもらえればと思います。読解力もあげていただきたいです。
おまけ!!
まさかの初演時日本公演フルバージョンが、公式チャンネルから公開されました!! ありがたいありがたい。初演時の感動がよみがえります!!
(いや、CD持ってるけどもww)