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もしも私立セントジョーンズ中学が協会だったら
これから協会を作ろうとしている人にぜひ聞いてもらいたい話がある。
まず、たとえ話をしよう。
山の手にある「私立セントジョーンズ中学」は、徹底した「おもてなし」が有名だ。
毎朝、教員たちが校門の前に整列し、生徒が登校すると
「今日もようこそいらっしゃいました」
といって頭を下げる。
下校時にも教員たちが校門の前に整列し、
「本日もありがとうございました」
といって頭を下げる。
授業のときも教員は「ですます調」を超え「ございます調」で話す。
居酒屋の店員さんが注文を受けるときにひざまずいて接客することがあるが、同じように、教員が生徒と話すときはひざまずいて話す。
生徒は逆に、教員にタメ口で話す。
「私立セントジョーンズ中学」は、そういう学校だ。
さて、この中学は架空の学校だが、あなたはこの中学に自分の子どもを入れたいだろうか?
こんな学校、ヤバくないか?
何がどうヤバいのかというと、生徒を過剰に顧客扱いしている点がヤバい。
むろん、学校は生徒を人間として尊重しなければならない。
だが、その尊重は、一方通行であってはいけない。
生徒だって学校をリスペクトする。
学校をリスペクトできるからこそ生徒は学校に行くのだ。
そういう相互の関係が重要だ。
この点を理解すれば、学校が生徒を顧客扱いして一方的に「おもてなし」するのが、いかにおかしいか、わかるだろう。
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冒頭に書いた、
「これから協会を作ろうとしている人にぜひ聞いてもらいたい話」
とは、このことだ。
協会も同じだ。
協会が会員を顧客扱いして「おもてなし」するのはおかしい。
なぜなら、
「協会にとって、会員は顧客ではない」
からだ。
協会と会員が、相互にリスペクトする関係を築くことで協会は発展する。
たしかに「私立セントジョーンズ中学」に子どもを通わせている親は、学費を払う。
「私立セントジョーンズ中学」はその学費によって経営がなりたつ。
けれども、だからといって「私立セントジョーンズ中学」にとって生徒は顧客であってはならない。
会社経営の感覚でいえば、お金を払ってくれたら顧客であり、顧客はおもてなしの対象だ。
だがそれは会社の感覚であって、協会の感覚ではない。
協会は、会員から「受講料」や「会費」を受け取っているが、だからといって会員を顧客と同一視するのは間違っている。
会員は顧客ではない。
パートナーと考えるほうがよい。
会社感覚にどっぶりつかった人が協会を作ると、たいていうまくいかないが、おそらくその原因はこのへんにもある。