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【ポーカーチェイス】クラブマッチ優勝を目的としたチーム作りについて
はじめまして、Kyoka+Tickと申します。
普段はポーカーチェイスなどのアプリをプレイしながら、ポーカーについて考え、Xで発信しています。(よければ、Xも覗いてみてくださいね!)
今回は、ポーカーチェイスの試合形式のひとつであるクラブマッチについて記事を作成してみました。20人でチームを組み、全体のスコアで勝者を決定するという特殊なレギュレーションにおいて、どうすれば優勝を目的とするクラブを作成できるのか。また、どのようなアプローチで優勝を目指すべきなのか、私なりの考えをまとめています。
初めてのnote投稿でお見苦しいところがあるかもしれませんが、お付き合い頂ければ幸いです。それでは、目次に続いて本文に参りましょう。
記事本文
優勝に要するポイント
はじめに、過去シーズンにおいて優勝クラブが獲得したポイントを確認してみましょう。下図はPS(プレシーズン)からシーズン5までの期間におけるシーズンごとの試合数、優勝チームの獲得ポイント、そして優勝チームが13試合あたりに獲得したポイントをまとめたものです。
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13試合ごとの獲得ポイントは541~590ポイントの範囲で推移しており、平均値は566ポイントとなっています。どうやらクラブ全体で13試合あたり570~580ポイント獲得できれば、かなり現実的に優勝を狙えるようです。
この記事においては(資料作成の都合により)575ポイントを優勝のためのボーダーラインとして設定し、この得点を目指すためのアプローチを考えていきます。
優勝に要するポイント期待値(pEV)
クラブマッチ優勝を目指すにあたって、メンバーの選考は非常に重要です。より多くポイントを稼ぎ得るプレイヤーが所属するクラブは、より高確率で優勝を掴むことができます。では、具体的にどれくらいのポイントを集められる、ポイント期待値(pEV)の高いメンバーを集めるべきでしょうか。
試しに「1~6位まで均等に獲得するプレイヤー」が20名所属したクラブについて考えてみましょう。このクラブはポーカーを純然たる運ゲーとしてプレイします。1位になる確率も6位になる確率も等しく1/6。クラブマッチでの配点に照らして計算すれば、プレイヤーひとりあたりのpEVは1.67です。
このクラブが1シーズン13戦のクラブマッチを1,000回戦った場合、獲得ポイントの分布は以下のようになります。
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最大限に上振れたいくつかのケースで500ポイントを突破したものの、いずれも優勝ラインである575ポイントには至っていません。1,000シーズン=83年4ヶ月も頑張ったのに、悲しいですね。
優勝を目指すのであれば、より多くのポイントをより短期間に集める必要があります。pEVが低いメンバーでひたすら上振れを待ち続ける戦略(?)は成功率が低いうえ、活動期間が長引くことはクラブのモチベーション低下に繋がりかねません。熱意が失われ、クラブマッチへの参加をサボるメンバーが出現すれば、pEVを積み上げる(=優勝を目指す)ことは不可能です。
仮に、クラブ全体の士気を保ち、クラブマッチへの「皆勤賞」を継続できる期間は6シーズンが限界だとしましょう。その期間内に優勝できる可能性を得るためにはどの程度のpEVが必要となるか、3パターンに分類して算出してみました。(いずれも試行回数は1,000回です)
パターンのひとつめは6シーズンのうちに50%程度の確率で優勝できるもの。3つの中では最もハードルが低く、pEV 2.07で達成できます。
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パターンのふたつめは3シーズンのうちに50%程度の確率で優勝できるもの。さきほどよりも難易度が高く、pEV 2.12が必要です。
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パターンのみっつめは1シーズンのうちに50%程度の確率で優勝できるもの。3つの中では最も試行回数が少なく、それゆえ達成にはpEV 2.22という高い水準が求められます。
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以上により、半年以内のクラブマッチ優勝を目指すのであれば、少なくともpEV 2.07以上のメンバーを集めることが必要だと分かりました。
この値をどのように捉えるかは人それぞれだと思いますが……個人的には「全ての試合で3位を取ってもpEVが足りない」「20人集めないといけない」という点において(少なくともクラブリーダーの視点では)とても困難なハードルだと感じます。
チーム結成、運用のアプローチ
さらに困難なのは、その重要なファクターであるプレイヤーのpEVが非常に測りにくいということです。
pEVはあくまで期待値に過ぎず、実際に獲得するポイントには大きな分散が生じます。過去シーズンに27ポイントを稼いだから、27÷13≒2.1でこの人はpEV2.10付近、と簡単に判断することはできません。
下図は、pEV 2.10のプレイヤーが1シーズン13戦のクラブマッチを1,000回戦った場合の獲得ポイントの分布です。
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最終成績が8~50ポイントの範囲に分布しています。ひとつのpEVの中でこれほど分散がある以上、獲得ポイントからその人のpEVを推察するには相当数の試行回数が必要です。同じ理由で、ある人がpEV 2.07なのか2.12なのか2.22なのか判別することも殆ど不可能でしょう。
これはつまり、結局のところ、開始から半年程度しか経過していないクラブマッチにおいてプレイヤーの実力を正確に計ることはできない、ということです。複数シーズンで好成績を収め続けたとしても、それらが全て上振れである可能性は排除できません。逆にクラブのお荷物となっているプレイヤーが、その実、下振れているだけということもあるでしょう。
そのため、優勝を目指してクラブを結成する際は、「目標期間に応じて必要なpEVを満たす人材を集め、優勝確率を最大化する」より「最低限のpEV が期待できる人材を集め、クラブの維持に全力を尽くしながら可能な限りチャレンジを繰り返し上振れを狙う」というアプローチを取った方が、成功率が高いのではないか……と、個人的には思います。
pEVの測定に信頼性がおけない以上、強いプレイヤーを探すことに注力するのではなく、多くの試行回数を確保できる環境づくりにこそコストをかけるべき、ということですね。
SNSやDiscordを活用してコミュニケーションを促す、クラブ内でイベントを開催して親睦を深める、ポーカーの知識やTipsを共有してゲームへの意欲を高める……などなど。居心地の良いチームを作るための様々な努力は、勝利を追求するうえにおいても効果的です。
pEV 2.10の判断基準
とはいえ、最低限のpEVを確保できなければ、上振れたところで優勝に手が届かないこともまた事実です。勝利を目指すのであれば、クラブリーダーはpEV 2.00(できれば2.10)以上のプレイヤーをメンバーに選び、そうでないプレイヤーの加入を防がなくてはいけません。
pEVを計る難しさは先述のとおりですが、不確実さに目をつぶれば、一応の基準くらいは設定することができます。例えば「pEV 2.10のプレイヤーの50%は〇〇という条件を満たしている」とか「〇〇ポイントを獲得できるのはpEV 2.10のプレイヤーの上位10%」といった具合です。
基準と比較してより長い期間、より良い結果を残しているプレイヤーがいるなら、それはpEV 2.10以上である確率が高い、と言えるでしょう。
以下に、pEV 2.10の判断基準となりえる要素をいくつかご紹介します。下に行くほど条件が厳しくなり、該当するプレイヤーがpEV 2.10以上である確率が高くなっていきます。
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繰り返しになりますが、これらの基準はあくまで目安に過ぎないことに注意してください。例えば、一番上の「pEV 2.10のプレイヤーのうち、上位50%に該当する」基準をpEV 2.10未満のプレイヤーが満たす可能性は(確率50%未満であるにせよ)当然に存在します。
メンバー候補者と面談を行ったり、プレイをチェックしたりするなど、よりアナログな手法を交えれば選定の確実性を向上できるかもしれません。とはいえ、運の要素を完全に排除することは難しいでしょう。
言うなれば、優勝を目指すクラブリーダーは2つのギャンブルに勝利しなければならないわけです。ひとつめは過去の成績を参考にしながらpEVの高いメンバーを引き当てるという「くじ引き」のギャンブル。ふたつめは選んだメンバーが実際に勝利できるかという「競馬」のギャンブルです。
あ、もちろんクラブリーダー自身も「馬」ですから、ポーカーをプレイしてより多くのポイントを獲得しなければいけません。その意味では必要となるギャンブルは3つだと言えますね。
優勝確率を向上する戦略
pEVの高い(と思われる)メンバーを選定し、彼らのモチベーションを保ち続けることができたなら、クラブ内でのリーダーの職務はほぼ完了します。あとはクラブを維持できている期間に上振れが訪れることを祈るのみです。では、これらを十分にやり遂げたうえで、さらに優勝確率を1%でも上げるためにクラブリーダーが出来ることはないでしょうか?
よくある手法として、メンバーに対してクラブマッチに適したプレイをレクチャーしたり、ハンドレビューを行ったりして、各人のpEV向上を図ることが挙げられます。これ自体はクラブ内のコミュニケーションを促進する効果も期待できる良い取組だと思いますが、一方で「具体的にどのくらいのpEVの向上が見込めるのか」が推定しにくく、効果を定量化しにくい問題もあります。そこで今回は少し異なったアプローチを考えることにしました。
ここに2種類のプレイヤーを用意しました。どちらもpEV 2.10ですが、クラブリーダーからそれぞれに異なるアドバイスを受けており、そのために順位の配分に変化が生じているものです。
ひとりめのプレイヤーは「下位を避ける」ことを重視します。5~6位になる確率が低いですが、一方で1位になる確率も低いです。
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ふたりめのプレイヤーは「1位を取る」ことを重視します。1位になる確率が高いですが、一方で5~6位になる確率も高いです。
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これら2タイプのプレイヤーで構成されるクラブが、1シーズン13戦のクラブマッチを1,000回戦った場合、獲得ポイントの分布は以下のようになります。
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見た目からは判別できませんが、「1位を取る」ことを重視するクラブの方が575ポイントを達成する比率が2~3%多くなっています。2~4位が多い「下位を避ける」クラブはグラフの中央に集まり、1位と6位が多い「1位を取る」クラブはグラフの上下に分散する傾向があるようです。
このことから、クラブマッチにおいて優勝だけを目指すのであれば積極的に1位を狙い、分散を激しくした方が良いことが分かります。クラブリーダーとしてメンバーに(pEVを損なわない範囲で)激しく戦うことを呼びかけることは、僅かながら優勝確率を向上させるかもしれません。
その分、下振れした場合の結果は悪くなりますが、優勝以外に執着しないのであればさしたる問題ではないはずです。
ちなみに、優勝確率15%のチームと優勝確率17.5%のチームが各6回シーズンマッチに挑戦した場合、1回以上優勝する確率はそれぞれ62.29%と68.66%になります。その差は約6%……リバーでのアウツが2.5枚増えると思えば、わりと大きい違いではないでしょうか?
まとめ
以上を踏まえて、クラブマッチ優勝だけを目指してチームを作成する場合、私が推奨するアプローチは以下のとおりです。
過去の実績からpEV 2.10以上と思われるプレイヤーをクラブに勧誘する
SNS, Discordでの交流、イベントなどによってメンバーのモチベーション向上に努める。併せて、ミスを犯さない範囲で積極的に1位を狙うことを呼びかけ、結果の分散を激しくする
全メンバーの「皆勤賞」の維持に注力しながらクラブマッチに挑み続け、いつか訪れるであろう上振れを狙う
これらが達成できれば、半年以内に2/3程度の確率で優勝できるのではないか、と思われます。一方で、
1~2シーズンの短期間で優勝を目指す
本当に強いメンバーだけを厳選してクラブを作成する
メンバーに下位を回避することを強く呼びかける
これらの行為は達成困難、あるいは非効率なので避けるべきです。
クラブマッチの優勝を目指すことは長期戦で、多分に運の要素を含みます。クラブリーダー、メンバーともに大きな負担となるでしょうし、辛い経験や理不尽な思いをすることがあるかもしれません。だからこそ、様々な手法で優勝確率を上げるように努力を続けることは、クラブリーダーのメンバーに対する重要な責務だと言えます。この記事が僅かでもそれらのお役に立つのであれば、本当に光栄です。
また、この記事は優勝を目指すクラブに向けたものであって、優勝を目指さないチームのあり方を否定するものではありません。気の置けない仲間たちとポーカーを楽しむ時間はいつだって最高ですからね!
最後に。この記事は私が8月にクラブマッチに初参加したことを切欠として作成しました。私をクラブ「Tips&Discussion」に勧誘してくださったクラブリーダーのTixさん(@matchan_tix)そしてメンバーの皆さんに心から感謝を申し上げます。