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海外案件、ハリウッド案件に応募する場合ー日本の「事務所制」は世界的にみてガラパゴスなことをご存じでしょうか?

さて私が運営しているFacebook Group New Paradigm casting - The future of entertainment では海外や外資系の募集案件を掲載しています。
その中で最近国内の外国人キャステイングデイレクターの事務所2社の情報を両社の許可の元掲載しています。
その中でハリウッドから大手のストリーミングサービスのドラマ案件があり今回は書類審査のみで、大まかな予定では11月に本オーデイション、採用者決定後年明けからクランクインという内容です。
すごくいい案件なんですが、今回非常に残念なのは情報を提供したキャステイング会社との登録契約を行うにあたり一部応募者との間でトラブルがありました。
というのも日本は基本「芸能事務所」制をとっており、芸能事務所に所属できないフリーランスの方も大勢います。
しかし今回はハリウッド海外案件です。
つまり海外ですからエージェント制なのです。

ここで日本の「芸能事務所制」と「エージェント制」の違いを可能な限りわかりやすく解説しましょう。

まず日本の芸能事務所


日本の芸能事務所制度

日本の殆どの芸能事務所がこの形式ですが、具体的にいえば役者、アーチスト、クリエイター等と事務所が契約を結びます、一社でしかも契約が更新時を除けば一回で済むので簡単ではあります。
日本の芸能事務所制の特徴を揚げると以下のようになります。

1.芸能事務所が「営業」やマネージメントを行う
2.その関係でギャランテイのマージンもかなり大きい(半分かそれ以上)
3.契約者の自由がきかない、事務所の指示通り動き事務所の仕事のみをこなす
4.知財をきちんと管理するところもあるが、そうでないところもある。
5.事務所の社長の権限が強い、事務所に「雇われた」状態

次にエージェント制

エージェント制

このプラットホームが日本を除く殆どの国で取られているシステムで、キャステイングデイレクターとエージェントが組んでいるパターンがすべてではないですが多いです。(エージェントのみの事務所もあります)

まず基本線として役者、アーチスト、クリエイターの仕事を取るための活動を行う場合、それぞれのアーチスト等の知財を「営業の素材」「宣材」として使うというのが大前提になります。そのために役者、アーチスト、クリエイターの素材を「営業」に使う、という合意を取る必要があります、

それが「登録契約書」です。
そして実際にプレゼンやオーデイションで採用が決まった時に諸条件や肖像権、著作権等の知財を管理するエンタテインメントローヤー(知財の専門家ー弁護士等の法曹関係者がなる場合が殆ど)がフィルムメーカーや大手制作会社と交渉を行います。(普通こういう人を「エージェント」と呼びます)

つまり
キャステイング事務所と登録契約*

       ↓

 オーデイション通過、仕事受注の見込み

       ↓

  エージェントが諸条件を交渉(ここで初めてギャラその他が決定されます)

       ↓

  個別案件に関して皆さんが会社と契約 

  (基本いつでも単発契約です)

となります。

芸能事務所制度と比べると
1.基本アーチスト等がキャステイングデイレクターと連絡
2.ギャランテイのマージンは法定 (10-20%の範囲)
3.エージェントと専任の契約を結ぶこともあるが、基本自由に活動できる
4.知財の専門家がエージェントとなり、肖像権、著作権、その他の権利を守ってくれる。
5.エージェント、キャステイングデイレクターと役者、アーチスト、クリエイターは1対1で同等の立場となる

以上がエージェント制に関する大まかな説明ですが、今回うちのグループにて登録契約書のサインを拒否された方が数名おられました。どうも日本の事務所制と全く違うエージェント制に関して理解されていない方、また本人は理解しているつもりらしいのですが、結果として全く理解されていない方が複数名いました

また契約書、ということで何か勘違いされた方も多かったようです。この契約書は皆さんに金額の支払いを要求するものでもありませんし、専属契約で皆さんの他の活動を縛るためではありません。では何の為の契約書かというと先ほどもご説明したように「皆さんの役者の肖像権を始めどする皆さんの知財を仕事を取るために使いますよ。」という内容でこれは皆さんの肖像権を守るために必要な契約書です。

日本は長年プロダクションと役者がそういった肖像権を守ることなしに、またギャラや諸条件を文書に残すことなしに半ば「なぁなぁ」な雰囲気で仕事したことが長かったためそうした契約書を個別の案件で交わすことに慣れてない方が多いようですが、最近の日本以外ではそれが当たり前になってきています。

日本は事務所制をとっていますが、このシステム自体古い体制で主な外国は殆ど事務所制など取っていません。そのため日本人も意識改革を行わないとハリウッド進出は難しいといえます。はっきりいえば「事務所制」というのは完全なガラパゴスな体制です。

映画製作、音楽制作で完全に国境がなくなり、誰もが普通に海外で仕事できる時代が来ています。そのため従来の常識では考えられなかったことが起きています。そしてその変化に対応するためには皆さんの意識改革も必要である、ということは声を大にして申し上げておきたいと思います。

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