僕の音楽的ルーツ12 the band apart前編 『Find a Way』

大学のサークルに参加した僕は、とあるバンドの名前を耳にし、ひどく混乱した。

1. 大学のバンドサークル

2018年の春、僕は晴れて大学生となった。
それまで高校で軽音楽部に所属していた僕は、大学でも当然、バンドサークルに入ろうと思った。

ただ、そのためにはサークル選びが重要だった。僕の入学した大学にはバンドサークルだけでも十数個ほど存在しており、いわゆる軽音楽的なものから、ジャンルを限定したニッチなものまで、かなり幅広かった。そこでまず僕は、新歓期間で色々なサークルを見て回ろうと思った。

僕はベタな軽音サークルに入りたかったので、それに当てはまるサークルをいくつか回る予定だった。しかし結果的には、3つほど回った辺りで、最初に行ったサークルに決めてしまった。そこがあまりに自分と合っていたからだ。

最初に参加したのは飲み会のイベントだった。と言っても新歓なので、上級生はお酒、我々1年生はソフトドリンクをもらい、サークルの話やバンドの話、履修相談などを賑やかに行う感じだった。

僕はそこで、そのサークルにミッシェルガンエレファントが大好きな先輩や、Hi-STANDARDが大好きな先輩がいることを知った。それが僕には驚きだった。高校の軽音部では誰も知らなかったアーティストの話を、自分一人で探して聴いていたようなアーティストの話を、まさかできる人間がいるとは思っていなかった。しかもこれらのバンドを、新歓ライブでも演奏するというのだ。僕にとって、このサークルは天国みたいな場所だと思った。そして結局、僕は他のサークルそっちのけで、それらの新歓ライブを連日見に行き、なんて最高なサークルなんだ、と思いすぐに入サーを決めた。

と言いつつ、他のサークルのイベントにも多少は参加した。ただ、新歓ライブでミッシェルやハイスタをやっているサークルはどこにも無かったし、人の雰囲気や制度が合わなそうところが多かった。最終的に僕は最初に行ったサークルと、2番目に行ったサークルにも一応入ったが、後者からは徐々にフェードアウトし、最初のサークルだけに行くようになった。

2. 「バンドアパート」

最初に参加した飲み会イベントまで話を戻そう。
僕が参加した飲み会では、確かミッシェルやハイスタが好きな先輩本人はその場にはいなかった。だが、何人かの先輩と音楽の話をすることができた。その中で特に印象的だったのが、4年の先輩Rさんとの会話だった。

Rさんは僕にパートや好きなバンドを尋ねてくれ、僕は「ベースです」「ミッシェルやハイスタです」などと返した。そしてRさん自身はドラマーであること、一番好きなバンドが「バンドアパート」であることを教えてくれた。僕はそれを聞いて思考停止した。

バンドアパート…?

聴いたことのない名前だった。僕は当時、これでも多少は音楽を知っているという自負があった。それに、人が一番好きと太鼓判を押すくらいのバンドなら、大抵知っているはずだと思っていた。しかし僕は突如として知らない名前に遭遇し、面食らった。というか、バンド名にバンドが入るって何だ。〜バンドとか末尾に付くのならわかるが、バンド〜と頭に付くのは何なのか。やけに頭に引っかかった。

ただ、初めて聞いた名前でもあったし、僕はその飲み会が楽しすぎてテンションが高まっていた。そのため、帰る頃には「バンドアパート」という名前はすっかり忘れてしまった。

そんな春の新歓から月日は流れ、夏。
その間僕は、5月の新入生ライブや6月の定例ライブを経験し、少しずつサークルのバンド練習やライブに馴染んでいった。そして8月、サークルのグループLINEに共有された8月ライブの出演バンド一覧を見た時、「the band apart」の文字列を見つけた。

あ、と思い出した。「バンドアパート」というのはどうやら、「the band apart」のことらしい。そしてやはり、ドラム担当はR先輩だった。

3. 「溜まり場」

R先輩は学年が3つも上だったので、話す機会は新歓以来ほとんど無かった。ただ、代わりにギタボ担当のS先輩は1個上の先輩だったので、「溜まり場」で話す機会が割と多かった。

「溜まり場」とは、学内にあるサークル員の暇つぶし場所で、僕らの場合は学食の一角にあった。僕らのサークルは大学内に練習スペースや機材を持っておらず、普段の活動は外部のスタジオやライブハウスで行っていたので、学内では暇を持て余して「溜まり場」に集まるのが常だった。そこではサークル員同士他愛のない話や、音楽の話もするし、授業の課題を教えあったり、楽器を持ち込んで個人練したりと様々だった。

僕は「溜まり場」の雰囲気が好きで、空きコマがあればずっと「溜まり場」に居座っていた。集まるのは主に就活もなく暇な1,2年生なので、当時2年のS先輩とはそこで仲良くなった。

ある日の溜まり場で、僕はS先輩からバンアパのおすすめ曲などを教えてもらった。あの出演バンド一覧を見て、the band apartを認知した後のことだ。そして、とりあえずサブスクにあった『Memories to Go』を追加した。

その頃、僕はサブスクを利用し始めたばかりだった。それまではTSUTAYAとiPodに頼りきりで音楽を聴いていたので、そういうサービスのことはさっぱり知らなかった。そしてサブスクの存在もやはり、「溜まり場」で別の先輩から教えてもらっていた。

『Memories to Go』を追加し聴いた当時は、正直少し難しい音楽だな、と思った。しかし、格好いいな、と思う瞬間もあった。具体的には、時々垣間見える「フュージョンっぽさ」が良いなと感じた。

4. ジャズフュージョンと僕

フュージョンとはジャズと関連したジャンルであり、電気楽器、特にエレキギターが活躍することが多い。例えばこういうの。

また、YMOの回で話した渡辺香津美もフュージョンギタリストである。

過去にも話したかもしれないが、僕の父親は生粋のジャズオタクで、彼の運転する車では常にジャズがかかっていた。そして中でも特にリピートされていたのが、日本のフュージョンバンド・DIMENSIONの『Beat #5』だったりした。

そういった経緯もあり、僕は幼少期からジャズフュージョンが頭に刷り込まれ、高校3年生あたりからは自主的にも聴くようになった。今思えば、YMOで聴いた渡辺香津美のギターソロもきっかけの一つだと思う。そしてそれから程なく、the band apartにも出会った、というわけだ。ここまで紹介した楽曲を踏まえて下記のようなギターを聴いてもらうと、the band apartとフュージョンとの関連性を感じてもらえるはずだ。

また、僕がこのアルバムで一番好きな曲は3曲目『Find a Way』だ。これもとにかくサビのリードギターが素晴らしい。

サビ頭の下降していくフレーズは、なんとなくJeff Beckの大名曲『Led Boots』のリフに似ている気がする。『Led Boots』も父親がよく車でリピートしていたし、その影響でハマったのかもしれない。

そうやって僕は、サブスクで『Memories to Go』の楽曲を聴き込むうち、フュージョンとの類似性を発見し、どんどんその深みにハマっていった。そして結果的に、僕のApple Musicは『Memories to Go』の楽曲が再生数上位を埋め尽くすようになっていた。こんな具合に。

僕の2018年のApple Music Replay。
1位の『革命』はコピバンのためにベースを聴きまくっていただけなので、実質『Find a Way』がほぼ1位。

おそらくthe band apartは、僕がサブスクを駆使してハマった最初のバンドだと思う。一方で、バンアパの楽曲には当時サブスクに無いものも多かった。S先輩に教えてもらったあの大名曲も。その話はまた次回に。

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