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中国/ロシア機はなぜ日本を目指すのか

 2024年8月26日、中国国籍のY-9型情報収集機が、そしてこれを書こうと思った矢先の9月23日にはロシアのIl-38型哨戒機が日本の領空を侵犯した。
 別に一戦交えようとしているわけではないとすれば、いったい彼らは何の目的で日本に近寄ってくるのだろうか。

日本の領空を侵犯した中国軍のY-9JB型情報収集機。機体のあちこちに電波情報を収集するためのアンテナをカバーするフェアリング(空力的な整流覆い)が飛び出している。
引用元:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:PLA_Y-9_(GX-8)_22_2023-10-27.jpg
中国機の跡を追うようにこちらも日本の領空を侵犯したロシア軍のイリューシンIl-38N型哨戒機。特に情報収集型とはカテゴライズされていないが、用途を隠すため形式名を変更しないまま別種の任務に用いられている場合もある。機首上に飛び出したアンテナは空気抵抗よりも情報収集に際しての「視界」を最優先している事を雄弁に物語る。
引用元:https://commons.wikimedia.org/wiki/File:RF-75355_IL38(N)_Russian_Navy_Air_Force_UUMB_(32813341433).jpg

領空侵犯と防空識別圏

 世界各国が領有するものには、領土の他に領海と領空がある。土地ばかりでなく、その土地に接する海や空も、世界的に「その国固有の持ち物である」と認められたものだ。ウクライナや韓国のように他国と陸伝いに直接接している国もあるし、オーストラリアや日本のように海で囲まれていて他国とは陸伝いには接していない国もある。
 ある意味領土は分かりやすい。陸伝いに接していても国境までは自分の国のものだ。そして領土が海と接していれば、その海岸線から12カイリ(約22km)以内が領海となり、その領土・領海の上空がすなわち領空となる。これらは世界各国が集まって取り決められた、超大国アメリカでも、聞いた事もない小国であっても同じ、世界中で一律平等な決まり事だ。領土はもちろん領海も領空も、言ってみればある人間が持つ私有地の中であって、当然許可を得ない他人が勝手に入っていい場所ではない。だからこそ今回自衛隊も日本政府も、日常的に起こる国籍不明機の接近事案(による戦闘機の緊急発進)などよりも大きく取り扱っている。

防空識別圏とは

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