「境界知能」とは何なのか?
毎日投稿をストップしましたが、
やはり、習慣が染みついていると、
「あれ?今日投稿していないぞ?」
という錯覚を覚えますね。笑
少しずつ、慣れていきます。
共育LIBRARYへようこそおいでくださいました✨
教育、人間、人生など、様々な「知恵」や「情報」が詰まった図書館のような、皆さんがくつろぎ、人生の「気付き」を得たり、知的好奇心を満たしたりできる居場所を目指しています😌
どうぞ、ごゆるりとお過ごしください。
共育LIBRARYりょーやん、元教師です。
「境界知能」
という言葉を
教育関係者ではない人が
使っている場面を耳にすることが多くなりました。
境界知能に関する本が
ベストセラーになったことの影響も大きいでしょう。
それらの言葉が、
世の中の福祉をよくしていくために
使われているのならよいのですが、
どうもマイナスなニュアンスで
使われていることが多い気がします。
以前から、
この辺りの記事を書いてほしいと
複数の方から声を掛けてもらっていたので
境界知能、
軽度知的症のレベル界隈を
記事にしていきます。
筆者は中度重度の知的症の子を
受け持ったことがないので、
ここまでのラインにさせてもらいますね。
何かしらの
学びがある記事にしていきます。
知的発達症と境界知能の差は何か?
知的発達症、
またの名を知的発達障害。
これは、
DSMー5にも記載されている、
診断することが可能な症状です。
定義が少し複雑なので、
具体的にどのような能力に
凹みがあるのかをかみ砕いて列挙します。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・論理的思考
・意志疎通
・言語や認知などの知的機能
・問題解決能力
・抽象的思考
・学校での学習
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
などなどです。
大きくまとめてしまえば、
適応能力と知的水準の凹み、
障害であると言えます。
そして、これらは、
公的に認められている知能検査を用いた上で、
診断をしなければいけません。
注意欠如多動症や、
自閉スペクトラム症は、
この知能検査が必須ではありません。
(行うところがほとんどですが)
ここが決定的な違いであり、
だからこそ、
明確な基準であるとも言えます。
では、知能指数(IQ)が、
具体的にどのような範囲だと、
知的発達症になるのでしょうか。
4つのレベルに分かれています。
▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢▢
■ 軽度(51~69)
■ 中度(36~50)
■ 重度(21~35)
■ 最重度(20以下)
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症状のレベルをざっくり言えば、
軽度~中度は、
身の回りのことはまあでき、
読み書きは簡単なものはできる。
簡単な計算は、ほぼ~部分的に可能といった感じです。
重度になると、
計算はほぼ不可能になり、
その他の適応能力も中度より落ちます。
最重度になると、
ほとんど全てが不可能になります。
(上記の項目において)
そして、ここで境界知能です。
境界知能は、
IQ70~84の範囲に該当する知能のことです。
知能の分布と言うのは、
実は一定の法則があり、
以下のような分布になることが分かっています。
(若干小さいですが・・・)
IQが70以下の場合は、
この正規分布で言えば2.2%ですね。
これが知的発達症のパーセンテージになります。
IQが高い場合も、
パーセンテージは左右対称となっています。
よって、
IQ130以上のパーセンテージは、
同じく2.2%です。
よく世間では、
IQが高いことを「天才」ともてはやしますが、
IQが高いということは、
非常に生きづらいのが一般的です。
精神疾患になる可能性も格段に上がりますし、
ましてや、IQを構成する分野ごとの能力に、
かなりのばらつきがあれば、
頭の中と現実世界が解離しすぎて、
悩み苦しむことになるでしょう。
そして、IQ70~84の範囲は、
実は1950年代などのかつては、
現在で言う知的発達症に含まれていたのです。
しかし、それだと、
全体の14~15%の人が、
知的発達症になってしまい、
あまりに多くなり過ぎます。
よって、
現在は70未満とされていますが、
診断されないだけで、
境界知能の人たちは、
12~13%存在し、
かつての知的発達症に含まれた知能で
生活しているのです。
これが学校現場の現実
境界知能の子が、
12~13%存在するということは、
クラスに3~4人存在するぐらいの割合でしょうか。
そして、
それに加えて、
神経発達症(発達障害)、
その他様々な特性の子が存在します。
そして、中には、
IQ70未満の知的発達症の子どもも、
通常学級に在籍することがあります。
筆者は、
明らかに知的発達症である子を
2人受け持ったことがあります。
一人は、Aさん。
明るくて、元気で、
筆者は大好きな子でした。
Aさんは、足し算と引き算を
あまり理解できていません。
漢字もほぼ書けません。
ひらがなはギリ書けます。
運動もほとんど
学年相応のことはできません。
同年齢の友達との意思疎通も
なかなかに厳しいです。
それでも通常学級在籍です。
Aさんは、小学1年と3年の2年間受け持ちました。
筆者が使える全ての知恵を使い、
あらゆる支援を最大限行ったつもりです。
縄跳びで前跳びすら全くできなかったのが、
長縄跳びで連続跳びができるようになったり、
運動会のバトンパスを見事に本番決めて、
クラスのみんなで涙することもありました。
しかし、日常生活のあらゆる面で、
同年齢の基準についてこれないのは明らかです。
日本の教育は、
保護者がどこの学級に在籍させるのかの決定権をもっています。
Aさんは特別支援学級に在籍した方がよいと、
度々お母さんとも話し合ったのですが、
その場では快く返事をしてもらう一方で、
お母さんが動くことはありませんでした。
なぜならば、
Aさんのお母さんも知的発達症なのです。
よって、話の内容を
どこまで理解できていたかは分からない。
お母さんを飛び越えて、
旦那さん祖父母に行くと、
お母さんにDVを行うかもという過去記録があり、
なかなか踏み込むことができませんでした。
もう一人のBくんも、
受け持ったのは3年生。
この時は
筆者が中堅の教員になっていたので、
受け持って早々、
「この子は特別支援学級の方がよい」
と思いました。
そもそも発話が、単語であり、
ほとんどしゃべることができません。
年齢で言えば、
3~4歳レベルでしょうか。
様々話しても返ってくる言葉は、
「うん」
「分かった」
「できない」
「分からない」
といった一言がほとんど。
それでも8~9歳の集団で
学習も生活も共にしているのです。
当然授業はほぼ何もせず
だらんとしている状態。
すぐにマスクを
よだれでビチョビチョにしてしまうので、
これまで受け持った担任の先生や
周囲の女の子たちはいやがっていました。
筆者はその辺りは全く気になりません。
ビチョビチョになったら、
用意しておいた替えのマスクに
速攻でチェンジです。
ただ、
授業中全くの無気力であるようでは
「教育」が出来ているとは言えない。
よって、
あらゆる支援を用意し、
本人が授業に参加できるようにし、
活躍場面をつくり
授業中に10回でも20回でも
支援し続けるようにしました。
すると、学習にやる気を出すようになり、
算数も計算問題を自分で解くようになり、
漢字も覚えるようになり、
英語の授業などはかなり活躍するようになった。
そして、
最初の個人懇談で、
ここまでの成長を資料や事実を交えて提示し、
相当本人はがんばっていることを伝えた。
その上で、
「ただ、この先通常学級でやっていくことは厳しいと考えています」
と伝えました。
1~2年生の時は、
いくら担任が言っても
お母さんは耳を貸してくれなかったそうですが、
筆者の時は、
「まずは通級からどうか?」という提案に、
すぐに応じてくれました。
本気で彼の人生を思っていることが
伝わったのかもしれません。
しかし、
このように、
境界知能に加え、
知的発達症の子すらも、
通常学級にいることが学校現場の現状なのです。
世間の「発達障害」や「その他の障害」の扱い、
「障害児」といった呼び方などが
特別支援のエリアに一歩踏み出すハードルを
高くしている気がしてなりません。
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