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随筆|離れているからこそ見えるもの

旅には三つの楽しみがあると言われている。一つは旅の計画と準備、一つは他のそのもの、もう一つは旅の記憶である。

私が言ったのではない。ううむ、しかし言い得て妙である。

作家の吉行淳之介氏は「街角の煙草屋までの旅」と書いている。大人の男には近所の煙草屋まで煙草を買いに出かける行動がすでに旅なのだと言っている。確かに、「旅心」さえあれば、人は近所の煙草屋までの道に於いてさえ、何か目を新しくさせるものに巡り合うものであろう。

「人生は旅」とは言い古された言葉だが、一杯のコーヒーも一冊の本も旅の縁である。

ここから離れていてこそ見えてくるものがある。それゆえ、旅をすることで、初めて見え来るものがある。



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