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プレミアムプリン誕生秘話

「誕生秘話」なんて大袈裟に書いてみたけど、実際はなんてことない話し。

2013年9月、渋谷にコーヒーハウスニシヤをオープンした時、スイーツは「プリン」と「ガトーショコラ」の二種類だけでした。
今では全く想像がつかないと思いますが、オープン当初はバックカウンターにお酒のボトルがビッシリと並び、生ビールはもちろん、お酒がしっかり飲めるお店でした。氷も氷屋から仕入れていたくらい。昔から西谷を知っている人は「お酒を注いでいる人」のイメージが強いのではないでしょうか。
それもあってスイーツより、つまみ、軽食に力を入れていて、スイーツは「一応精神」で用意していました。ガトーショコラは冷凍ができて、プリンは日持ちするから、という超絶安易な理由で作っていました。信じられないと思いますが、プリンを作ったのはこの時が初めてでした。
そんな精神で作ったプリンは当然支持されることはなく、一日6個(少ねっ!笑)仕込んだプリンはいつも翌日に繰り越されていました。
ちなみにメニュー表記を「普通のプリン」と書いていたので、よくお客さまから「普通のプリンて何ですか?」と聞かれていました。ウケ狙いではなく、本当に普通だったので正直に書いていたのですが、変に期待をさせてしまっていたのですぐに表記を「プリン」に変更しました。

普通のプリン

今ではお馴染みとなったクネルのクリームが乗ったスタイルはお客さまのリクエストがきっかけで、はじめはクリームも乗せず、粉糖もかけていませんでした。プリンに対してどうしたら美味しくなるか、美しく魅せられるか、なんて微塵も考えていませんでした。
ある日毎回プリンを食べてくださるお客さまから「生クリームを乗せてほしい」と言われ、その時はティースプーンで無造作にすくったものを乗せていました。ある時毎回写真を撮ってくださるのを見て「美しく」と思い、クネルにして粉糖とコーヒーの粉をかけて提供するようになりました。

菓子屋の経験がここに
粉糖大事ね
視覚と味覚にコントラストを

当時から私はSNSにとことん疎く、発信も受信も上手く活用できなかったのですが、プリンを食べてくださったお客さまの投稿で「プリン目当て」のお客さまが次第に増えていくようになりました。6個だったプリンも倍に、倍にと最終的には毎日48個を仕込むようになっていました。

家庭用のオーブンでよく作りました(笑)

そして2017年11月19日、プリンがバズるのです。
プリンは別として、おかげさまでお店が軌道に乗り、売り上げも営業内容も充実した頃、突然その日はやってきました。
いつものようにお店を開けると、お客さま全員が「プリンありますか?」と口にしながら入店するようになり、その日を境に行列ができるようになりました。仕込んだプリンはあっという間に売り切れ、営業の半分は「すみません」とお詫びをすることが仕事になっていました。食べられずに怒るお客さまは想定内なのですが、中には泣き出すお客さまもいて、これはやばいぞと心の中で緊急事態を発令しました。
何が起きたのかと困惑していると、毎日ヤクルトを買っていたヤクルトレディから「Twitterでニシヤのプリンがバズってるよ」と教えていただき、この時はじめて「バズる」という言葉を知りました。
慌ててTwitterで検索してみると、グルメ系のインフルエンサーがニシヤのプリンを「プリンの完成形」とベタ褒めしていて、一日で3万のリツイートと8万を超えるイイネが。翌日投稿を削除してもらおうと思ったら見当たらなく、どうやらバズった投稿はお店に迷惑をかけるという理由で自主削除をしていて、既に削除されていました。
これで安心、とは裏腹にプリン騒動は渋谷店の閉店まで続くことになりました…

メニュー表記を「プレミアムプリン」にしたのは、プリンそのものが「プレミアム」だからではなく、プリン目当てにお客さまがニシヤへ集まることが「プレミアム」だと思ったからです。
安易な理由で、何のこだわりも想いもない普通のプリンは特別なものになりました。しっくりは来ないけど、ニシヤをここまで有名にしてくれてのはプリンだし、たくさんの方にお会いできたのもプリンで、好きな焼肉を毎週のよう食べられるようになったのもプリンのおかげ。

プレミアムプリン

10年前に思い描いていたお店とは全然違う絵かもしれないけど、これまでお客さまの期待や求めているものに、真摯に向き合って一生懸命仕事をしてきました。
私にとって普通こそが上質で、これからも「普通」を極めようと真剣に仕事をしていきます。

本日もお付き合いいただきありがとうございます。また次回に。

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