新樹の言葉と音楽。〜ヒガシノメーコさんのソロ作品のこと〜
今"シンガーソングライター"として音楽活動をしている人は一体何人いるのだろうか。
自らの声と楽器だけで弾き語りライヴを行っているシンガーソングライターの多くは伴奏楽器としてピアノ、若しくはギターを用いている。が、それ以外の楽器を用いてライヴを行うアーティストさんも少なくはない。例えばたった一度だけ目の当たりにしたヒガシノメーコさんの弾き語りライヴはピアノでもギターでもなく、いつものエレキベースを弾きながら歌を紡いでいた。それは本当に素晴らしいライヴだった。そして演奏を聴きながらこう思った。「ベース弾き語りこそが一番自分らしい表現が出来るやり方なのだろう」と。2019年の初秋のことだった。
それからメーコさんソロでのライヴ活動は一旦お休み状態となり"ひと耳惚れ"していた自分はまたあの歌達と再会する時を心待ちにしていた。ところが突如現れたコロナウィルスによってそれは叶わぬ夢のようなものになってしまった…はずだった。忘れ難い素敵な歌達との再会の時は突然やって来た。しかも何倍も何倍も魅力的な音楽となって。
今年2月27日にかねてから製作中としていたソロ作品の試聴生配信が行われた。そこで聴いた音楽を自分は「夢のような音楽」と日記に書いた。今でもそう思う。早くじっくり聴きたい!そんなわがままな思いとは裏腹にその時点ではサブスクやCDリリースは未定となっていて、リリースに関する続報をずっと待っていた。あれから3ヶ月。遂にヒガシノメーコさんのソロ作「ヒガシノメーコの考え」がサブスクにてリリースされた。
この作品には欠点というものが見当たらない。完璧な作品といっても良い。
メーコさんが弾くアコースティックベース、声、そこに盟友・相棒"つっぺ"さんの弾くキーボード。少なくとも今作に収められた楽曲にはドラムもギターも流麗なストリングスもいらない。シンプルながら楽曲の持ち味を最大限に引き立てる"音"が必要なところで必要な音色で鳴っている。メロディメーカーとしてのメーコさんの非凡な才能をつっぺさんの鍵盤が何倍も増進して聴き手に届ける。まさに完璧なコラボレーション。
「ジジィ」「オバちゃん」「吉田さんの歌」などタイトルを眺めるだけでもかなり個性的な楽曲が並ぶ。一聴するとユーモアに溢れていたり内省的だったり慈愛に満ちていたりする歌詞は二度三度聴き返すたびに違う表情を見せる。歌詞というより短編小説を読み返すことに近しい。思わず手を止めて聴き入らせる言葉の強さをこの作品は持っている。いつか歌詞を読みながらじっくりと聴いてみたい。
この作品は"シンガーソングライター"としてのヒガシノメーコさんの堂々たる出発点であり、大きな大きなランドマークでもあると確信している。特に最後に収められた名曲「ねむる」という歌を何度も聴きながらメーコさんが紡ぐ次の歌を早くも心待ちにしている自分がいた。
この作品を聴いて同じように思う人はきっと自分だけではないはずだ。
※ヒガシノメーコさんのソロ「ヒガシノメーコの考え」は各種サブスクにて配信中。詳しくはこちら。
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