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12年前のチケットが出て来た。
突然、懐かしいチケットが出て来た。12年前のとある夜のチケット。
ぼくが高校の頃にサポート加入したバンドの再結成+解散ライヴのチケットだ。
話は高校2年生だったある日に遡る。
中学〜高校と同じ学校に通っていた友人にふと「放課後会えない?」と誘われた。
突然何だろう?と訝しながらも、彼と今は無き都内某所にあるマクドナルドへ行った。
「文化祭でライヴやるんだけど、ドラム叩いてくんない?サポートでいいから」
言われるがままに奢ってもらったチキンナゲットを2人で頬張りながら、ぼくは彼の話を聞いていた記憶がある。手伝ってほしいのはどうやら有名ハードロックバンドのコピーバンドだという。
正直、自分が好きなタイプの音楽ではなかった。けれど、初めてのバンド。不安よりも言い知れぬ興奮を感じてOKしたのだと思う。その時点でライヴまで2ヶ月。
そこから同じ普通科ながらもコースの違うクラスに身を置く初対面のメンバーとのたどたどしいリハーサルが始まった。
音を外すヤツ、リズムが狂うヤツ、歌い出しを間違えるヤツ。夏休みをはさんだリハーサル期間はあっと言う間に過ぎて行った。
そして緊張感のなか、気持ち良いくらいに晴れ渡る秋の文化祭ステージにぼく達は立った。
なんともミスばかりのお粗末な演奏だったけれど、今でも生涯で1番楽しかったライヴだと思っている。
それから4年後。
話は冒頭のライヴへとなる。確かこの日のライヴは解散ということもあってか、なぜかワンマンライヴだった。
もちろん演奏曲はハードロックバンドのコピーが中心だったけれど、それに加えてぼくがワガママを言ってやることになったナンバーガールというバンドの「Eight Beater」、あとオリジナル曲を数曲。
感極まってマイクスタンドを派手に倒したヴォーカリストがライヴ中にも関わらずライヴハウスの店長さんに説教されたり、終わってみんなで飲みに行ったりした。お客さんもいっぱい来てくれた。
が、自分の知り合いは1人くらいしかいなかったはずだ。
このライヴの直後、マイクスタンドを倒したヴォーカリストとスリーピースバンドを組んで、下北沢屋根裏やシェルター、吉祥寺シルバーエレファントなどに何度も出演させてもらう機会を得た。
そしてそのバンド活動中に出会った女性ヴォーカリストと新しくアコースティックユニットを結成し、数年後には高校生の頃にぼくをバンドに誘った例の友人がギタリストとして加入することになる。
そのすぐ後に数百人のお客さんの前でパフォーマンスをする機会にも恵まれた。
同じ制服姿でチキンナゲットを頬張っていた当時17歳の2人には全く予想もしない未来が待っていたのだなと、今改めて思う。
バンドも解散した今、その友人とこれから会うことはきっとないだろうけれど。
12年前のチケットはそんな忘れかけていた日々の記憶を引き連れて突然現れたのだった。