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【日記】10月19日〜10月25日

10月19日
朝、Twitterを見ながら伊丹十三の言葉を思い出す。
"アマチュアの中にプロが一人だけいる。(プロの)彼は心ならずも、ワンマンになって全員を引っぱらざるをえぬ。この場合はうまく行っても仕事の質はワンマンの力量を上回ることがないのである"。

帰りの電車でこれから座る座席をウェットティッシュで念入りに拭く人を見かける。背中があたるで部分で一枚、座面で一枚を使い切った。勿論両手にはゴム手袋を装着していた。

10月20日
夜、スマホに撮り溜めたライヴ動画をあれこれ見返してみる。撮影技術は酷いけれど一つ一つの動画に思い入れがあって、しみじみと見入ってしまう。

10月21日
カタカナのギタリスト、ノムラタイシンくんとLINEで久しぶりにやりとり。何故なら今日は彼の誕生日だ。下北沢GARDENというライヴハウスで偶然出会ってから今年で丁度5年になる。出会った時、彼はまだ二十歳だった。
それから毎年ライヴハウスやスタジオで直接誕生日のお祝いをしてきたけれど、今年はLINEでのメッセージのみ。少々寂しいものがあるけれど、タイシンくんだけでなく、今年は友人知人が誕生日を無事に迎えられたことを知って、いつも以上に幸せを感じるようになった。当たり前が当たり前じゃなくなった今だからこそ、みんなが生きているだけでとても嬉しい。

Shi-Shonen「ラヴリー・シンギング・サーキット」を聴きながら1980年代に想いを馳せる。MVの少し怖い、不可思議な世界観がとても好きだ。

10月22日
キース・ジャレットの病気についてのニュースを読む。近年はライヴ活動もストップしていたことは知っていた。まさかピアノが弾けなくなるほどの大病を患っていたとは。

今週のカタカナ配信はメーコさんの放送事故に始まりセイヤさん鬼滅の刃でボロ泣き話、からのタイシンくん生誕記念企画。某水族館でのロケ動画がとにかくおかしかった。タイシンくんはたまに吐く毒が毎度強烈なのが最高に良い。

10月23日
冬物フェア最初の土日に向けて大忙しの日。が、最も大量に入荷した商品はケース付きのマスクだった。

夜遅く帰宅してテレビを付けると気になっていたCMが流れたので思わず心の中で感嘆の声を上げるも、次に映ったのは大嫌いな女優さんだった。即座にテレビを消した。人の好みは十人十色。というよりただ好き嫌いが激しいだけか。

10月24日
片岡知子さんが亡くなった。51歳だった。

自分は20歳くらいの頃にyes, mama ok?を知り、そこから金剛地武志さんが主宰していたレーベルに所属していたこともあって、インスタント・シトロンを聴くようになった。当時は今より怖いもの知らずだったのでmixiで片岡さんのアカウントを見つけるとファンレターのような長い文章を書いて、ダイレクトメッセージを送った。今となってはかなり危ないファンの行動だなと思う。でも片岡さんは丁寧なお返事をくれて、そのすぐ後に青山のカフェイベントでお会いする機会に恵まれると、不思議と波長が合って仲良くさせていただくようになった。
それから15年間。沢山のレコードを教わったり、偶然渋谷で再会した時は周りの人がビックリするくらいの大きな声で笑いあったり、自分が主催するdis-coveredを見に来てくださったり、ちょこちょこメールでやり取りしたり。
いつも「きょうへいくんの頑張りを見てると私も負けないように頑張って良い音楽を作らなくちゃって気合いが入るんだよ」と優しい言葉をかけてくれて、それが何よりの支えになっていた。

ある時、片岡さんがyes, mama ok?と出演したテレビCMで着ていたインスタント・シトロンTシャツが素敵ですねって何となく話したら、少し困ったような笑顔に浮かべつつ「あれはね、"私はシトロンのメンバーなんだぞー!!"ってことを主張したくて、あえて着たんだよね…」って話してくれたことが忘れられない。Tシャツは自らの考えを主張するためのアイテムにもなる、そう教わった瞬間だった。

訃報を知ってから不思議と涙が出ることはなかった。でも、夜になってインスタント・シトロンを聴いていたら突然に涙が溢れ始めて止まらなくなった。
世界でいちばん尊敬する人。ありがとうございました。

10月25日
気がつくといつの間にか片岡さんのことを考えている週末。
ビル・エヴァンス「コンセクレイション」を聴く。1980年8月31日から9月7日まで出演した「キーストン・コーナー」でのライヴ録音、つまりビル・エヴァンス生涯最期の録音。ラスト・トリオと呼ばれるバンドの演奏はとんでもなく高水準のグルーヴを奏でる。何よりどこか吹っ切れたように縦横無尽にピアノを弾きまくるビル・エヴァンスが凄い。このトリオがもう少し長く続いていたらどんな風になっていただろう、そう思わせる素晴らしいライヴ作品だった。芸は長く、いのちは短い。

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