思考停止のロングボール
正直、安定して勝つならロングボールをビルドアップの中心に据えてチームを組み立てた方が良いです。
でもここに落とし穴が潜んでます。
「思考停止のロングボール」
これが今回の内容です。
では思考停止のロングボールとは何か?
・相手がどんな状態であってもロングボールを蹴り込む
・ロングボールを「どこに蹴るか」「いつ蹴るか」が統一されていない為、味方のサポートや反応が遅れる、もしくはない。
・CBが保持している時にどれだけフリーでも前に運ぶ事なくロングボールを蹴り込む
・ショートパスビルドアップには興味すらない
こんなところです。
ここで本来のロングボール中心のビルドアップのメリットになり得る部分を書きます。
・自陣で繋ぐリスクを回避できるから失点が少なくなる
・相手陣内でのプレーが増えるからチャンスは作りやすい
・連動してプレーできればずっと押し込む事もできる
こうやって書くとどのチームでもやれば良いじゃんってなりますよね。
次にデメリット
・タイミングを共有できないと中盤が間伸びしやすくなるからカウンターを受けやすくなる
・ロングボール後のセカンドボールを奪取できないと、ゲームをコントロールするのが難しくなる
・前線にフィジカルコンタクトに優れた選手が常に必要になる
こういう事です。
ロングボールを蹴る事が自分たちのボールを手放す事と似たような意味を持ってしまう為、不確定要素が増えてしまいます。
それでも2024年現在のJリーグではロングボール主体のチームが覇権を握っています。
2023年優勝のヴィッセル神戸もそうですし、J2から昇格してきた町田ゼルビアがそうです。
高校年代だと青森山田がこのスタイルで圧倒的な強さで選手権を優勝した事がありました。
対日本人という意味ではロングボール戦術はかなり有効だという事です。
ではなぜ「思考停止のロングボール戦術」は良くないのか。
ここからが本題です。
強いチームとのロングボール戦術との違いは大きく以下の通り
・蹴るタイミングと場所の共有
・前線にボールを収められる選手がいるか
・相手の状況に応じて違う選択肢を持つ事ができる
です。
では一つずつ。
①蹴るタイミングと場所の共有
これがチームとしてまず共有しないといけないポイント。
・全てのボールをワンタッチ(ダイレクト)で蹴るか
・SBやCBなど、特定の誰かに蹴らせるか
・ロングボールでどこor誰を狙うか
ここが明確になっています。
まず一つ目。
タッチ数を限定する事で、飛ばすタイミングを共有してチーム全体のゾーンを上げる事が可能です。
このタイミングがバラバラになるとチーム全体が押し上げる事ができず、何の為にロングボールを蹴っているかの目的が曖昧になる事はよくあります。
二つ目。
誰に蹴らせるかも設定しておくとよりタイミングの共有は明確になります。
ロングキックが苦手な選手より、得意で飛ばせる選手に蹴らせた方が目的を果たしやすいです。
チームによってはここがキーパーに設定されているところもあります。
三つ目。
どこor誰を狙うか。
ベンチから蹴れと言われて蹴ったら、どこ狙ってるんだと言われた事のある方はいるかと思います。 特に中堅チームから下の場合。
多分誰を狙うとか言われてないんだと思います。
言えばわかるだろう、みたいな。
相手DFラインの誰の背後を狙うのか、タッチラインを切ってもOKなのか、ポストプレーが得意なFWの胸を狙うのかヘディングでそらさせのか。
ここまで自分たちの選手の特徴を考えて指示が出せているか。
対戦している感じ、この三つは強いチームになればなるほど設定されているなと感じます。
この3つが設定されてはじめてセカンドボールを回収させる中盤の配置が出来るので。
②前線にボールを収められる選手がいるか
これは結構大きな違いです。
先ほど話した『誰を狙うか』で、収められる選手がいるかいないかでは蹴るポイントが変わってきます。
例えば160センチくらいの技術はあるけど小さくてコンタクトには優れてないFWが185センチの屈曲なDFに競り勝って収めろと言ってもそれは無理な話です。
ここまで読んでる方であればベンチからそんな指示やプレーはしないと思いますが・・・。
そしてここで勘違いされがちなのが、大きい選手だからと言ってヘディングが得意ではない選手が比較的多い事です。
一昔前だとハーフナーマイク選手はそういう選手だと認識しています。
大きい選手でも足元や胸トラップなどで収める事が得意な選手は一定数いる為、そういう選手がターゲットになる時は蹴るポイントが微妙に変わります。
その大きな選手の個性に合わせてその次のプレーをどうデザインするかが大事です。
ヘディングが得意な選手に合わせるのであれば、必ず近い選手が背後を取れるポイントとセカンドを拾えるポイントに配置する必要があります。
足元などで収めるタイミングであれば、入った瞬間に前向きで受けられる位置にサポート+前向きで受けた選手が背後に蹴れるタイミングで走れる選手が必要になります。
相手の選手によっても多少は変化はありますが、ターゲットのタイプである程度自分たち主導で立ち位置は変化させる必要があります。
③相手の状況に応じて違う選択肢を持つ事ができる
思考停止で闇雲にロングボールを蹴り飛ばすチームや選手はこれができません。
例えば相手が引いて自陣でブロックを敷いている状態でサイドバックがボールを持っています。
サイドバックには誰もプレスに行こうとしません。
しかしこの状態でもサイドバックはターゲットマンにロングボールを入れるでしょう。
なぜなら他のプレーが頭の中にないから。
なぜないか。
相手の状況を見えていないから。
そう言うプレーを教えられてきてない、落とし込まれていないというのもあるかと思いますが。
しかし、実際に育成年代ではよくある光景です。
自分たちは完全に準備できている状態でも無闇にロングボールを放り込んでくれて、簡単にボールを奪還できる状態。
しょうがないですよね。
蹴らないと怒られますから。
未だにそういうチームはありますし。
相手を見てプレーの判断を変えられるようになって欲しいですよね。
それを指導者も促せるようにするべきだし、トレーニングから認知・判断・実行ができるように落とし込むべきですし。
相手が来ないのであれば、ターゲットではなくバイタルやサイドの足元に入れて相手ディフェンスの収縮を狙ったり、スライドをさせる為に早くサイドチェンジ、引きつける為に運ぶ、などのプレーの判断が今は必須。
もしかしたらこれが出来るところと出来ないところが、育成年代で大量点差が多くなっている原因かもしれないですけど・・・、もう少しそこは見てみます。
まとめ
思考停止しているか認知できているかでプレーの判断は大きく変わります。
ベンチの指示ももちろんそう。
未だに「蹴れ!」「飛ばせ!」しか言わないでFWの能力任せでやっている所は頻繁に見かけます。
チームのやり方についてどうこう言うつもりはありませんし、ロングボールを否定しているわけではありません。
自分が否定しているのは「思考停止のロングボール」です。
指示を受けた選手が何も考えずにロングボールを蹴る続ける大人にはならない事を願います。
それでは日本サッカーはいつまでも発展しないので。