J2視覚化計画2023〈第27節〉
◎今節のアナリスト◎富嶺 織布音
みなさまごきげんよう。
今節から「夏のウインドー」で新たに登録された新加入選手も出場可能になり、リーグ全体の様相が変わってまいりましたわね。
なにより、下位にいらっしゃるチームは「残留/降格」というシビア現実と本腰を入れて向き合いはじめてますの。いいえ、下位だけではありませんわ。今季は中位でも気を抜けばすぐに残留争いに巻き込まれてしまう情勢。そういった危機感を持ちながら戦う中~下位のチームに、上位陣が苦戦をしいられるという展開がすでにはじまってしまっているようです。
今節は象徴的な節でしたわね。首位町田は中位の千葉に敗れ、2位磐田は群馬と辛うじて引き分け。4位だった大分は下位のいわきに敗れ、6位清水は下位栃木と引き分け。7位長崎は中位の山形に大敗を喫してしまいました。上位陣で勝点3を取れたのは3位東京Vと4位に浮上した甲府のみ。一方の下位側は軒並み勝点1は挙げており、勝点を取れなかった仙台や徳島は本格的に残留争いに巻き込まれてしまった印象です。
今季は残留ラインがずいぶんと高く出ていますわね。現在、21位金沢が27試合で勝点28ですから、試合数×1を上回っているペース。単純に考えれば、最終的に勝点42でも降格がありえる状況ですわ。今季に関しては、勝点45を越えていないと安心できないかもしれませんわね。
こうしてJ2チームが死にものぐるいで「落ちたくない」と踏ん張っている一方で、J3では懸命に「上がりたい」と頑張っています。ちょうど今節、J3は19節を終えて前半戦が終了。対戦が一巡した節目になりますので、管理人さんにお願いして「 #J3視覚化計画2023 」をつくってもらいました。
J3は以前はチーム数が少なく(=試合数が少なく)、アンダーカテゴリーのチームが参入していたり、照明設備が足りないため1ヶ月超のサマーブレイクがあったり、夏にデーゲームが組まれていたりといかにも特殊なリーグでした。
それが今季はチーム数は20となり、そのうち半分以上の11チームが元J2。照明環境も整ったため(ロートフィールド奈良を除き)夏はナイトゲームが行えるようになり、J2同様中断期間はなくなり、いわば「普通のプロリーグ」になりました。
そんなJ3前半戦を終えてトップを走るのは愛媛ですわね。これを富山が追い、少し開いて大きな集団、後方に福島・北九州・相模原の3チームという展開です。
今季のJ3は「首位が週替わり」になるような混戦ぶりで、序盤に首位に立っていたようなチームも伸び悩んだりしていますわ。昨シーズンのいわきのような独走チームは見当たりません。
そんな中、比較的安定して上位に居続けているのが、富山ですわね。得点数はリーグ2位ですが、強い個に頼る訳ではなく複数の得点源がある印象です。下位にとりこぼさないのが強みである一方、あらあら、愛媛や鹿児島、沼津、今治といった上位勢には敗れています。
その富山を17節で抜き去って首位で折り返したのが、愛媛。得点数は3位ですし、失点数は11位とおよそ首位らしくない数字なのですが、「最終的には勝っている」というちょっと不思議なチームですわ。前半戦で11勝を挙げていますが、何とすべてが1点差勝ち。競馬で例えればハナ差、アタマ差で差しきってしまう勝ち方ですわね。
石丸監督は以前京都を指揮していたことがありますが、この時も大勝ちは少なく、ドローや1点差勝ちで最終的にプレーオフまで持っていきましたの。ちなみにプレーオフもC大阪にドローで敗退でしたわ。そういう意味でも今季の愛媛は、とても石丸監督らしいチームだと思います。
現状、愛媛と富山が1歩リードしていますが、両チームとも失点数が試合数(19)を越えています(愛媛…23、富山…22)ので、このあたりが安定しないとまだまだ付け入る隙を生みそうですわね。
その後ろは、3位鹿児島から17位YS横浜まで勝点9差の中に15チームが入るという大きな集団になっています。新規昇格組のFC大阪と奈良がこの集団で好位置に付けているのはサプライズですわね。FC大阪はリーグ最少失点(14失点)の堅守で勝点を拾っています。奈良のフリアン監督はまだ34歳ですが、戦術的な意図が明確なボールの動かし方をするチームに仕上げていますわね。そして“ゴン中山”こと中山雅史監督率いる沼津が4位にいるのも驚きです。
資金力やタレント面でいえば、6位松本や9位岐阜は「強い勝ち方をするチーム」に化ける可能性はありますわね。ただし、J2以上にJ3は資金力が勝点に結び付かないリーグかと。2年前までJ2にいた北九州や相模原が厳しい順位にいるのも含めて…の話ですわ。
次節で全日程の2/3を消化して佳境を迎えるJ2と、次節から後半戦に入るJ3。どちらのリーグからも目を離せませんわね。女子のワールドカップが開かれていようと、中断期間はありませんわ。