J2視覚化計画2023〈第16節〉
◎今節のアナリスト◎丹生賀 育太郎
「伊藤涼太郎はJ2が育てた」
今季J1で大ブレイク中の伊藤涼太郎。先だってセルティックが獲得を検討してるとの一報が入るなど、今Jで最も注目される「上り馬」な選手だ。
改めて伊藤のキャリアを見ると、「伊藤はJ2が育てた」としか言いようがない。元々作陽高校から才能を買われてJ1浦和レッズに入団するも、なかなか出場機会を得られず、高卒2年目で水戸にレンタル。水戸2年目の2018年には34試合出場9ゴールを挙げた。翌年レンタル先は大分(当時J1)になったが数字は残せず。2020年に浦和に復帰するも無得点のままで、2021年夏には再び水戸にレンタル(4ゴール)。プロ入り後6年で挙げた13ゴールは全て水戸。出場機会があったのもほぼJ2、伊藤はそんな選手だった。
昨年、J2新潟に完全移籍してからの活躍はご存知の通り。“新潟の至宝”本間至恩が海外移籍しても、伊藤や三戸舜介がブレイクしてJ1昇格を勝ち取った。
伊藤のように才能はあっても、J1の層の厚さに阻まれて芽が出ない若手の存在は、ある意味永遠の課題。それを解決するひとつの手段が、「J2へのレンタル移籍」だ。
J2には今季も、J1からレンタルされている選手たちが数多くいる。この中には「未来の伊藤涼太郎」がいるかもしれない。いや、いるに違いない。では今、どんな「J1からのレンタル選手」が活躍しているのだろうか?
これらのデータを参考に、独断で選ぶ「今注目すべきJ1からのレンタル選手5選」を挙げてみた。
★荒木駿太(FC町田ゼルビア←鳥栖)/23歳
強力外国人FWが揃うと、どうしてもサブに回ってしまうが、ここまで5ゴールは相当優秀。恐いもの知らずでゴールに向かう思い切りの良さは大きな魅力で、途中からでもフルスロットルで稼働できる能力を持つ。何より限られた時間でもアグレッシブに走ってくれる荒木がいるとチームは助かる。デュークが代表離脱の時はスタメン起用され、首位攻防の11節大分戦では2ゴール。1点目の「デザイナーズCK」は4月の月間ベストゴールにも選ばれた。
【今節】⇒先発(86分出場)
★森海渡(徳島ヴォルティス←柏)/22歳
開幕からのチームの不調ぶりと歩を合わせるように活躍の場がなかったが、10節にようやく初のフル出場。チームが初勝利を挙げた12節で今季初得点を奪うと、14~15節で3得点と固め取り。森の調子とともに徳島の状態も上昇気配だ。元々、昨季J1で4ゴールを挙げてきた強靭さとパンチ力を併せ持つ大型ストライカー。細谷真大というライバル(仲間と書いて好敵手)とは違う「J2武者修行」の道を選んだが、それは決してまわり道ではないはずだ。
【今節】⇒先発(67分出場・2得点!)
★林尚輝(東京ヴェルディ←鹿島)/24歳
大卒から2年過ごした鹿島では怪我もあって出番を得られず。今季は3節からスタメンを掴み、上位に付けるチームにあって出場時間を伸ばしている。本職はCBで登録ポジションもDFだが、城福監督はアンカーで起用。ここ最近はCBで起用されているが、守備からリズムを作っていくチームの要として欠かせぬ存在だ。身長があって、ビルドアップにも関与できる現代型のアンカー←→CBとして大成なるか?
【今節】⇒ベンチ外 ※2試合連続メンバー外
★梶浦勇輝(ツエーゲン金沢←FC東京)/19歳
粒揃いの金沢のボランチのスタメンを実力で勝ち取った19歳。チームのマンマーク多用戦術にあって、相手に寄せる初速がやたらに速く、相手から時間と判断を奪い取る。おそらく、読みと決断が速いのだろう。磐田や新潟でも数多くの若手を導いた名伯楽・柳下監督からの厳しい要求をクリアすれば、世代別代表とかも視野に入るかも。ただ、ポジション的にライバルは多い。FC東京にも、日本国内にも。J2でさらなる武器を磨くべし。
【今節】⇒先発(フル出場)
★小原基樹(水戸ホーリーホック←広島)/23歳
一昨年愛媛(当時J2)でデビュー(特別指定)し、ドリブル突破やゴールに向かって仕掛けるプレーで非凡な才能を見せた。大卒1年目の昨季はJ3愛媛で10番を背負い、30試合出場4ゴール。今季は広島が完全移籍で獲得し、(広島には所属せず)そのまま水戸にレンタル。大卒、広島、水戸…この経歴で思い出すのが、現在J1でブレイク中の浅野雄也(札幌)。小原もまた来季はJ1で活躍するのだろうか(広島で、とは限らない)。前節栃木戦で決めた絶妙なボールタッチからのゴールは見事。
【今節】⇒先発(フル出場)
彼ら5人だけでなくてもいい。いつか「○○はJ2が育てた!」と誇らしく言わせてくれ。