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J2視覚化計画2023〈第31節〉

#J2視覚化計画2023

◎今節のアナリスト◎下輪 毅

夏季移籍扉も閉じ、いよいよ終盤に突入せし日本職業蹴球二部。昇格ノ争乱の面々がおおよそ絞られつつあるのに比べ、残留ノ争乱は未だ見通せぬほどに混乱極まりし。

此度は残留ノ争乱の戦場(いくさば)に身を置きし九の軍団について、現状の調子と夏扉(七月以降)にていかなる戦力補強をしたのかを吟味してみたい。なお、前節終了時の順位を元にて綴ること、許されたし。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆熊本軍
夏移籍扉が開いて閉じるまで勝ち無しの二分け三敗。此の勝ち無しは六月末から続いており、後期未だ勝利なし。今節も山形軍相手に二度自陣を攻略されて敗北を喫す。調子がなかなか上向かぬ。
とはいえ大木武将の軍団作りの軸のぶれはなく、好機も多く作れておる印象はある。課題は決定力なれど、攻撃陣に夏の補強は無し。そもそも平川怜殿のような若き攻撃の才能者たちを失わなかったことこそ好材料と見るべきか。次節のいわき軍との一戦は大きな意味を持つことになる。
なお、二部軍勢としては唯一全日本天皇杯蹴球選手権を勝ち残りし軍団であることも忘れてはなるまい。武軍団の御武運を祈る。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆水戸軍
夏移籍扉期間五戦は負け無し。引き分け基調ながら攻撃陣の手駒は豊富にて、前節上位の長崎軍と打ち合ったことを見ても質は高し。それより以前は三戦連続無得点無失点分けを演じており、守備面に大きな不安はなきかな。今節も秋田軍に引き分け、これにて五連続引き分けとなった。
夏扉動向はぶわにか殿と唐山殿を入れ替えたような格好。元々小原基樹殿や寺沼星文殿など前線の攻撃手は充実しており、才能の爆発を待つばかり。…攻撃は水物と申すが。
次節より栃木軍→山口軍→金沢軍→仙台軍と四連続での残留争い直接対決が待ち受ける。その後は上位との対戦が多めにて、この四戦でいかに勝点を積めるかが肝要となる。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆仙台軍
夏扉期間五戦で僅か勝点壱に留まっただけならず、それより以前から十一戦勝ち無しであった。今節、残留争乱の直接敵手・大宮軍相手に劇的勝利を飾り、ようやく暗く長き隧道を抜けた。大宮軍に手の内を知り尽くす渋谷参謀官が居たことを慮らば、堀将の面目躍如と云うべきか。
夏補強では、齋藤学殿、長澤和輝殿という二部に不相応なる大名跡が加入。もはやなりふり構わぬ。また、松崎快殿は前任指揮官伊藤彰氏の弟子筋だったものの、加入後伊藤氏解任というちぐはぐさ。今季仙台軍の有り様をよく示す。
戦力的にみらばさすがに降格はあり得ぬと思うが、何が起こるかわからぬのが二部魔境。今節の勝利を機に本領を取り戻したいところであろう。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆いわき軍
六月に田村雄三将に交代後、七戦負け無し(四勝三分)と一気に降格圏を脱出。上り調子であったが、好調が長く続くほど二部魔境は甘くはない。ここ暫くは勝利から遠ざかっており、今節も上位の東京緑軍相手に好機を作れども、引き分け。なれど状態は悪くはない。
夏補強にて外国人傭兵を獲得せしも、実質的には動きなしか。むしろ怪我人が復帰し、田村将による軍団の一体感醸成促進が強みとなる。決定機に止めを刺せぬことも多いが、相手を圧倒する走力などは上位すら手こずらせる。佳境に差し掛かった時の勝負強さが残留争乱を抜け出す鍵なり。勝負強さは経験に宿ることが多いが、さて。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆栃木軍
今夏、本腰を入れて補強を敢行した軍なり。積極補強により既存戦力も刺激を受け、軍団全体が活性化いたしておる。新戦力では長身戦闘員いすまいら殿が軍団に順応しており、今節も先制弾を補助し、前線への運びと追い込みが逆転弾に繋がった。ここにれあんどろぺれいら殿も適応すれば下位には似つかわぬ攻撃力を備えし軍団となろう。
今後十一戦は、残留争い勢との直接対決が少ない。しからば次節の“北関東決戦”水戸戦は極めて重要となる。その後は昇格も降格も関係なき軍団との対戦が多くなりそうなので、士気を高く保てば中位浮上も見えてくる。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆金沢軍
移籍夏扉にてかつて柳下正明将の元で主力として戦っていた加藤大樹殿と山本義道殿が加入。彼らが早速主力となり、敵手・仙台軍を下して以降二勝二分一敗と、四月後半から七月まで続いていた不調を脱した。元々攻撃兵は優秀な手駒が多いが、全日本五輪代表にも名を連ねる木村勇大殿が加入。名伯楽柳下将は若き未完の大器を開花させることができるであろうか。
今節は上位に躍進する群馬軍と敵地にての対決なりしも、前半途中に落雷の為中止。好調群馬軍相手に互角に渡り合っていたものの、御天道様のこと、致し方ない。
気を取り直し、全精力を注ぎたいのが、直接の敵手となる徳島と対戦が組まれた次節。大宮軍との直接対決にて苦杯を舐めた二の舞は避けたい。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆山口軍
六月のえすないでる将軍就任二戦目より六戦連続無失点・負け無しの好調ぶりで、残留争乱を脱したかに見えしも、七月後半秋田軍に敗れ、千葉軍には屈辱の四失点と、えす将の魔法にも翳りが見ゆる。そして今節、直接対決の徳島戦にて手痛い敗北。元の木阿弥、降格圏の二十一位に戻ってしまった。
夏補強ではしるびお・じゅにおーる殿が掘り出し物。仕掛けて良し、好機作成能力もあり。清水より加入の若武者・成岡殿は山口軍での実績もあり、活躍が期待されるところ。ただし守備線を担っておった松本大輔殿の返却はかなりの痛手かと。
今後の山口軍における勝負の刻は神無月。十月に金沢軍→大宮軍、仙台軍との直接対決が待ち受けており、ここに調子の頂をもってきたい。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆徳島軍
五月頃は森海渡殿が猛威をふるい、“やはり力のある軍団なり”と思いしが、六月以降十戦勝ち無しの泥沼街道に。今節は山口軍との直接対決だったが、これに勝ってようやく勝ち無しを止めた。降格圏も脱出するも、まだ安穏たる位置ではない。
夏の補強は、最終週に至ってようやく経験豊富な中盤手・永木亮太殿を補強。若きいすぱにあ人指揮官の経験不足を埋め、精神的な安定をもたらしたいという狙いもあろう。
好材料としては、森海渡殿が再び点を奪えるようになったことと、えうしーにょ殿の復活。一方で強き圧力を浴びた時の不安定さや固定式蹴込攻撃からの失点は大きな課題。
次節は残留争乱の直接敵手・金沢軍との決戦が待ち受ける。その後は今最も強い清水軍。さらにその次はいわき軍との直接対決。気を置けぬ戦いは続く。


※直近5戦成績は26節~30節(7/16~8/12)

◆大宮軍
夏扉期間にて積極補強を敢行。新戦力加わりし以降、五戦で勝点九という好成績で一気に浮上せし。圧倒的実績を持つしゅびるつぉく殿は無論大きいが、注目すべきは五戦でわずか二失点という守備の安定ぶり。不調時は消極的だった守備意識が前向き守備に変わったのは、仙台軍を出奔した渋谷参謀官の加入以降のこと。長崎軍より加入したかいけ殿もでかい。物理的にもでかい。
今節はその因縁の仙台軍との対決があり、終了間際の土壇場で固定式角蹴込攻撃から失点。負け無し記録は止まった。
戦力補強及び補佐官の加入にて打つべき手は打った。今後上位陣や難敵との対戦が続くが、最終盤の十一月に自動昇格争い勢との対戦を残す。そこまでに粘り強く勝点を積めるかどうか。



残留をめぐる争いは、昇格をめぐる争いよりも激しく精神を削られるものである。今季はとりわけ、ここに関わる軍勢の数が多い。今回列挙せし九軍団に加え、秋田軍や藤枝軍も今節差を詰められた。つまるところ二部の半数の軍勢が残留を争っているのである。
下への危機感を抱きて戦うべきか、開き直って己の信念を貫くべきか。正解はない。ただひとつ言えるのは、この争乱には終わりがあるということ。ここから先は一戦一戦の重みが変わる。残留争いがエキサイティングだからこそ、J2に関わる者すべてのスピリットが磨かれていくのだ。時に悲劇すらエンターテインメントになる。

下輪 毅(したわ・こわし)
1970年高知県生まれ。ブルックスやフューチャーズを知る世代だが特に需要がないし話も合わない。座右の銘は「旅は道連れ、二部は情け」

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